2009年12月5日に放送された「中島みゆきのラジオ昼間便」(NHK FM)に中島みゆきが出演。
紫綬褒章を受章したことへの感想や、CMで松田聖子と共演したこと、シングル『愛だけを残せ』の裏話、ニューアルバム『DRAMA!』についてなどが語られた。
この記事は、
- 紫綬褒章を受章した中島みゆきの感想
- 『愛だけを残せ』が完成するまで
- アルバム『DRAMA!』について
- 中島みゆきと松田聖子のCM共演
- 中島みゆきのファッション攻略法
について書いてます!
中島みゆきは「ラジオ深夜便」のリスナーだった
葛西「こんにちは」
みゆき「中島みゆきの」
葛西「ラジオ昼間便です」
司会進行役は、「ラジオ深夜便」のアンカーである葛西聖司。
午後11時から日付をまたいで午前5時まで放送されている名物番組「ラジオ深夜便」を、中島みゆきは普段からよく聴いているという。
みゆき「好きなんですねぇ。ていうか私の活動時間帯なんですねこの「深夜便」の放送される時間帯がね。なので、何か拠り所に思うところは「深夜便」なんですねぇ」
中島みゆきは、穏やかに流れる時間がホッとするとこの番組の魅力を語る。
紫綬褒章を受章した感想
葛西「まずは何より紫綬褒章おめでとうございます!」
2009年11月2日、中島みゆきは紫綬褒章を受章している。
もう少し年配の人たちが受章するものらしいが、57歳という若さで受章したことは意外だったようだ。
みゆき「ビックリしましたね。いいんでしょうか。立派な仕事してらっしゃる人もたくさんいらっしゃるのに、なんか差しおいて私のような青二才がしゃしゃり出まして、申し訳ありません(笑)」
中島みゆきは、受章の報せを聴いた時の心境をメディアにこう述べている。
「棚から本マグロ」
この言葉には、どういう意図があったのだろうか。
みゆき「この驚きは「棚からぼたもち」なんてものでは表現しきれない。何が降ってきたらもっと驚く? 本マグロだったらそりゃ驚きますよねぇ(笑)」
これまでは、「紅白で歌詞を間違えた中島みゆき」という不名誉な枕詞がついていたが、「紫綬褒章の中島みゆき」と変わり、上機嫌である。
『愛だけを残せ』が完成するまで
ここで1曲、2009年11月4日にリリースしたばかりのニューシングル『愛だけを残せ』。
映画「ゼロの焦点」の主題歌として中島みゆきが書き下ろした曲である。
中島みゆきは、この曲を書くにあたって、原作である松本清張の小説をもう一度読み返したという。
だが、かつて読んだ時の印象とはだいぶ違っていた。
みゆき「「ゼロの焦点」という作品は、謎を残したままの部分がたくさんあるんですね。何から何まで書き込んではいないっていう作品なので、今読むと、「あれ? 私なんで前ここ読まなかったかな?」みたいなのがポロポロポロポロあったりして、ビックリしながらも読み返しましたね」
映画では、原作では書かれていないことが想像によって盛り込まれている。
このことを犬童一心監督から聞いた中島みゆきは、どう取り掛かっていけばよいのか迷った結果、とりあえずは松本清張の原作と向かうことを決めたのだ。
「自分にとっての松本清張」
そこへ軸足を置いてみたのである。
みゆき「もちろんサスペンスではあるんですけど、それは形というもので、人間を掘り下げるというのが第一目標だなあと思って読みましたので」
ストーリー展開よりも、そこに至らざるを得なかった人のなりゆきを追いかけて原作を読み上げた。
しかし、それでも取っ掛かりを掴めず、ドロ沼へハマってしまう。
そこで今度は、映画の方に突破口を見出そうとしたのである。
みゆき「松本清張さんの原作を読んだ時は、女の人は主人公だと私思わなかったんです。ところが台本では、女の人が主人公になってるんですね」
「昭和」「戦後」「女」
これが、この映画のキーワードだった。
中島みゆきは、この「女」を、拠り所に考えたのである。
犬童監督からの「時代を超えて前へ向かっていく力が必要なんです」という説明、また、台本から感じられる女の視線、それが曲の土台になった。
アルバム『DRAMA!』について
つづいて、2009年11月18日にリリースされた中島みゆきの36作目のオリジナルアルバム『DRAMA!』について。
このアルバムは、2つの劇で歌われた曲が前半と後半に分けて構成されている。
前半は、2008年に上演された吉川晃司主演ミュージカル「SEMPO 〜日本のシンドラー 杉原千畝物語〜」で歌われた楽曲のセルフカバー。
後半は、2008~2009年に上演された「夜会VOL.15 〜夜物語〜元祖・今晩屋」、2009年に上演された「夜会VOL.16 〜夜物語〜本家・今晩屋」で歌われた楽曲。
ここで1曲、「SEMPO 〜日本のシンドラー 杉原千畝物語〜」のテーマ曲である『翼をあげて』。
中島みゆきが思う杉原千畝
「SEMPO 〜日本のシンドラー 杉原千畝物語〜」のモデルとなった杉原千畝は、第二次世界大戦中、リトアニアの日本国総領事館に赴任していた。
「千畝」を音読みすると「センポ(SEMPO)」になることから、ミュージカルにはこのタイトルがつけられた。
杉原千畝は、ナチス・ドイツの迫害により逃れてきた難民を救うべく、国からの許可を得ないまま大量のビザを発給した勇敢な日本人であった。
みゆき「これ、「職業上それやったら私クビになるし」って止めれば、あの人たちは命なかったワケですしね。そこでどっちを取るんだって判断がああいう世界情勢の中で出来たっていうことは大変なことだと思いますね」
中島みゆきは、このミュージカルの曲を手掛けるにあたってどういうことを意識したのだろうか。
みゆき「私は、千畝さんを直接存じ上げてるわけでもないので、もしもこの歌を私がね、いずれは自分が引き受けてステージで歌う時に、責任もって歌える範囲で書こうと思って書いた曲なんです」
ここで1曲、『掌』
「掌」と書いて「てのひら」と読む。
子供の頃、てのひらに夢を思うまま掴めると思っていたのに、現実は指の間からいろんなものがこぼれ落ちていくという曲だ。
このミュージカルでは、重い意味となって捉えられる。
葛西「ちょっとてのひら見せていただけますか?」
みゆき「え、私ですか? (見せ)ふつうのてのひらでございますが」
葛西「指長い! どうです私のこの短い指(比べ合う)」
みゆき「ま~カワイイ手だ~、ウチのカメラマンと同じだ~」
カメラマンの田村仁と葛西聖司は同じ手をしているらしい。
「夜会」とミュージカルの違い
葛西「「夜会」もミュージカルではないけれど、ミュージカルと同じ雰囲気を持ってますよね」
みゆき「そうですね」
「夜会」とミュージカルの違いは何なのだろう?
みゆき「一般に言うと、ミュージカルというと出演者が多いですがね、「夜会」の方は舞台に上がっている人は少ないですけど、そのぶん一緒に演奏してるミュージシャンたちを「共演」として考えてやっておりますね」
ここで1曲、『愛が私に命ずること』。
みゆき「これは「「SEMPO」の中では男の人が歌う場面と、女の人が歌う場面があるので、どちらに使うか分かりません」という注文だったので、デモテープを作ってお渡しするときにはですね、男のシンガーに歌ってもらったんですけどね、男の人が歌うのもそれなりになかなか味がありましたね」
このデモテープに歌声を吹き込んだ男のシンガーというのが、中島みゆきのコンサートでコーラスを担当している宮下文一だ。
松田聖子とのCM共演
2008年、FUJIFILMスキンケア化粧品「アスタリフト」のテレビCMで、中島みゆきは松田聖子と共演している。
葛西「聖子さんと接点があったんですか?」
みゆき「ご挨拶したことくらいはありますけど、仕事ってことはなかったんで、現場で「どうも~、いつでしたっけね? ご挨拶したのは?」ってそんな感じでした」
この2人のCM共演は、意外な組み合わせだけに話題を呼んだ。
中島みゆき本人ですら、最初の絵コンテを見て驚いたという。
中島みゆきにとって、松田聖子は違う業界の人であって、自分は半素人のようなもの、という認識だった。
葛西「彼女の歌って聴いてらしたでしょ?」
みゆき「ええ、もう、そりゃ世の中に聴かない人はいないってくらいですからね」
このCMシリーズでは、松田聖子が中島みゆきの曲『時代』を、中島みゆきが松田聖子の曲『渚のバルコニー』を歌うシーンがある。
中島みゆきにとって、他人の曲を歌うことには大きなプレッシャーがあったようだ。
みゆき「私、人様の曲なんて正確に覚えてないんです。冷や汗を流しながら覚えましたね。人様の歌を歌うってのは、「間違えたら失礼だわ」ってのがありますね。自分のだったら間違ったって、「いいじゃない私が書いたんだから」って言いますけどね(笑)」
「中島みゆきCONCERT TOUR 2007」では、中島みゆきは吉田拓郎の『唇をかみしめて』を歌っている。
この時もかなりのプレッシャーだったと、振り返る。
みゆき「コンサートの中の全曲の中で一番緊張しましたもん! 「これだけは間違っちゃいけない」って」
葛西「さすが紫綬褒章。音楽家の良心の塊」
みゆき「キャハハハ!」
「夜会VOL.15 〜夜物語〜元祖・今晩屋」「夜会VOL.16 〜夜物語〜本家・今晩屋」について
話題は、アルバム『DRAMA!』へと戻る。
後半部分は、2008~2009年に上演された「夜会VOL.15 〜夜物語〜元祖・今晩屋」「夜会VOL.16 〜夜物語〜本家・今晩屋」のために書き下ろされた楽曲で構成されている。
「元祖」と「本家」の違い
タイトルにある「元祖」と「本家」の違いとは何なのだろう?
みゆき「饅頭屋だのせんべい屋だの、観光地に行きますとよく並んで向かい合ってございます。同じ饅頭売ってるのに、「こちらが元祖だ」「こちらが本家だ」、似てもよく違いが分からないけれども、それぞれなりにちょっと違う」
この2つの「夜会」もまた違うのである。
物語のモチーフとなったのは、日本の童話「安寿と厨子王」だ。
みゆき「日本人はだいたい子供の頃からどっかで読んだことがあるようなお話。そういう衣を着せております。「そういえばこんな話あったね」と思い出していただけますと、手掛かりになりやすいかなあと」
漢字にフリガナをつけた理由
「夜会VOL.15 〜夜物語〜元祖・今晩屋」「夜会VOL.16 〜夜物語〜本家・今晩屋」は、日本の古代の物語や、東洋思想がベースになっているため、曲中に出てくる言葉が難解だったりする。
葛西「今回のアルバム気づいたんですけど、ぜんぶ漢字にひらがなばっかり」
みゆき「そうなんです~よくお気づきになりました、当たりで~す!」
アルバム後半の「今晩屋」の曲には、あまり日常的に使われない漢字が多い。
みゆき「これはフリガナ振らないと何のことやら分かりづらいだわねぇと思いまして、フリガナをとことんつけました」
ここで1曲、『十二天』。
「安寿と厨子王」はどのように織り交ぜたか
「夜会VOL.15 〜夜物語〜元祖・今晩屋」「夜会VOL.16 〜夜物語〜本家・今晩屋」は、「安寿と厨子王」を基にして作られた。
だが、解説がなければ、なかなかそれを読み取るのは難解だ。
みゆき「安寿さんが安寿の恰好で出てくる訳じゃないし、厨子王さんが厨子王さんのセリフを言う訳ではないので、「どこが?」とお思いになるかもしれませんが、それを「今」に移していただくと、けっこう掛詞みたいに「あ、この人が安寿に生まれ変わって……ここか!」っていう風なね」
すぐには分かりづらいかもしれないが、衣装など細かなところにも読み解くヒントが隠れているという。
みゆき「こういう日本語があるとして、今、受け取ったときに、いろんな受け取り方ってあると思うんですね。それをまた味わっていただいて、それが私にもまた返ってくるんだなあと、「あ、そういう意味もあったわねえ」という感じですね」
『らいしょらいしょ』について
生まれ変わるという意味の「らいしょ」。
「夜会」では女の子が手毬唄として歌っているが、これは、中島みゆきの幼少期の体験が関わった曲である。
みゆき「私ね、子供の頃に毬をついて歌ってた歌が「らいしょらいしょ」だったんです。で、意味分かんなかったんです。「イッチョウメノ イスケサン イノジガ」って毬ついてたんですけど、何のことか分かんなくて」
だが、ある時、「らいしょ」という言葉が疑問に思えた。
「らいしょ」とは一体何なのだろう?
もしかして、前世、今生、来生の「来生」のこと?
そして、深い意味があることに気づき始めていくのだった。
みゆき「そういう手毬歌とかわらべ唄とかっていうのって、意外と意味込めてるのがあるみたいですね。
表立っては言えないことを込めた歌っていっぱいあったんじゃないのかなあって思いますね」
ここで1曲、『暦売りの歌』。
年末とあって、時期的にとても似つかわしいこの曲だが、今回の「夜会」の中でも歌われる『百九番目の除夜の鐘』もまた年末にはうってつけだ。
百九番目の除夜の鐘 鳴り始めたならどうなろうか
百九番目の除夜の鐘 鳴り止まなければどうなろうか
(『百九番目の除夜の鐘』より)
問いかけてくるこの歌詞に、葛西は辟易する。
葛西「中島みゆきさんは必ず「どうするの?」「どうなるの?」というメッセージで問いかけてくるから答えるのに困っちゃうんですけど」
みゆき「あらいいですよ答えなくても。私だって分かってないですから(笑)」
中島みゆきのファッション攻略法
話題は、中島みゆきのファッションへ。
葛西「今日のお召し物はサンタクロースカラーで真っ赤です。コートも真っ赤で、首周りの毛皮も真っ赤で、バッグも赤」
中島みゆきの好きなカラーとはいえ、徹底している。
中島みゆきのその日のファッションは、どのようにして決められるのだろうか?
みゆき「私ね、寝起きが悪いの。寝起きの血圧がどん底なのね。そうすると2時間くらいは正気でモノ考えてないの」
そんなぼんやりした頭では、まともに服すら選ぶこともできない。
そこで、中島みゆきは、コーディネートにルールを敷いたのである。
みゆき「自分の持つ服というのは、無彩色、もしくはトリコロール」
白や黒、その中間のグレーなどの無彩色の組み合わせ。
あるいは、赤、紺系、白というトリコロールの組み合わせ。
このような取り合わせにすれば、特に何も考えなくても様になってくれるという。
ここで1曲、『天鏡』。
この曲に、中島みゆきはどういう思いを込めたのだろうか。
みゆき「寺モノみたいな話に踏み込んじゃうとね、結局物語を自分で書き出そうとしても、自分が何とかできるものじゃない。もっと大きい力がある。そこへ委ねたってことですね」
「夜会VOL.15 〜夜物語〜元祖・今晩屋」「夜会VOL.16 〜夜物語〜本家・今晩屋」の違い
中島みゆきの近況について葛西が訊く。
もう次の年のアルバム制作に取り掛かっており、コンサートツアーでもすでに準備段階に入っている。
今回の「夜会」においても、稽古は、ずいぶん早く夏から始まっていた。
中島みゆきによると、「夜会VOL.16 〜夜物語〜本家・今晩屋」は、前作の「夜会VOL.15 〜夜物語〜元祖・今晩屋」の再演という位置づけ。
しかし再演と言っても、変更点がいくつかある。
稽古時は、ミュージシャンが変更点を忘れ、前作と同じ演奏をしてしまうハプニングがあったようだ。
しかし、それは中島みゆきも然り。
みゆき「ちょこっと歌詞を変えた私がいちばん危ないんですよね(笑)」
最後の曲は、『NOW』。
収録アルバム&DVD/Blu-ray
この番組で紹介された、
- 『翼をあげて』
- 『掌』
- 『愛が私に命ずること』
- 『十二天』
- 『らいしょらいしょ』
- 『暦売りの歌』
- 『天鏡』
- 『NOW』
は、アルバム『DRAMA!』に収録されている。
また、「夜会VOL.16 〜夜物語〜本家・今晩屋」の映像を収録したDVD/Blu-rayも販売されている。
『DRAMA!』
2009年リリースのオリジナルアルバム。
2008年の吉川晃司主演のミュージカル「SEMPO 〜日本のシンドラー 杉原千畝物語〜」、2008年~2009年に上演された「夜会VOL.15 〜夜物語〜元祖・今晩屋」「夜会VOL.16 〜夜物語〜本家・今晩屋」のために書き下ろされた曲を収録。
【収録曲】
『翼をあげて』『こどもの宝』『夜の色』『掌』『愛が私に命ずること』『NOW』『十二天』『らいしょらいしょ』『暦売りの歌』『百九番目の除夜の鐘』『幽霊交差点』『海に絵を描く』『天鏡』
『夜会VOL.16 〜夜物語〜本家・今晩屋』
2009年上演。「安寿と厨子王」がモチーフの作品。
今生に残した悔いを、輪廻を繰り返す中で解き放っていく和テイストスペクタクル。
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