2020年7月18日、「輝き続ける中島みゆき」(BSフジ)で、中島みゆき特集が放送された。
工藤静香、中村中、柳葉敏郎、船山基紀、岩垂かれん、藤村さおりが集い、各々の中島みゆきへの思いを語った。
この記事は、
- ゲストが語る中島みゆきの魅力
- ゲストが厳選する中島みゆきの曲5選
について書いてます!
- 中島みゆきの活躍
- 受験勉強に中島みゆきのラジオ(柳葉敏郎)
- 競技中に聴く中島みゆき(岩垂かれん)
- 『アザミ嬢のララバイ』の音はこうして作られた
- 中島みゆきの歌う表情
- 「中島みゆきのオールナイトニッポン」の最終回
- 『悪女』の音はこうして作られた
- ゲスト厳選5曲プレイリスト
- 掃除をサボって中島みゆきを聴いていた(工藤静香)
- 中島みゆきと初めて会った日(工藤静香)
- 夜会で共演して感じたこと(中村中)
- 岩垂かれんの思う「夜会」
- 瀬尾一三の目に映る中島みゆき
- 「夜会」の作り方
- 岩垂かれんと『地上の星』の出会い
- ドラマ主題歌
- 中島みゆきと共演した柳葉敏郎
- 桜田淳子と中島みゆき
- 船山基紀が初めて中島みゆきに会った日
- 中島みゆきが歌う『NIGHT WING』
- 中島みゆきの曲を歌うのは難しい
- 中島みゆきの歌が持つ力
- 中島みゆきの魅力と今後(瀬尾一三)
- 『Nobody Is Right』のイメージ(瀬尾一三)
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中島みゆきの活躍
1975年11月16日、日本武道館で開催された世界歌謡祭の記録映像が映し出される。
壇上から、坂本九がグランプリを発表する。
「エントリーナンバー30、日本、中島みゆき『時代』!」
大勢の拍手に迎えられ中島みゆきがステージへ登場。
中島みゆきが、世の中に広く知れ渡る瞬間だ。
『アザミ嬢のララバイ』でデビューした中島みゆきは、その後、数々のヒットを長きに渡り発表してきた。
- 『わかれうた』(1977年)
- 『悪女』(1981年)
- 『空と君のあいだに』(1994年)
- 『地上の星』(2003年)
女性アーティストで唯一、4つの年代でシングルチャート1位を獲得している。
歌手以外の側面も持つ。
ドラマ出演、楽曲提供、舞台etc.
その活躍の場は多岐に渡っている。
中島みゆきを愛してやまない面々がスタジオに集まってくれた。
- 工藤静香(歌手)
- 中村中(歌手)
- 柳葉敏郎(俳優)
- 船山基紀(編曲家)
- 岩垂かれん(スノーボードクロス元日本代表)
- 藤村さおり(フジテレビアナウンサー)
受験勉強に中島みゆきのラジオ(柳葉敏郎)
藤村「柳葉さんは中島みゆきさんのラジオが好きだったとお伺いしているんですけど」
柳葉「試験勉強の合間に真夜中に流れてくる中島さんの声ですよね。あっけらかんとしたものの言い方といいますかね。高校生だった自分たちのひとつひとつ心を掴むようなね、言葉を発してもらいましたからね」
中島みゆきが1979~1987年までの間DJを務めていた「中島みゆきのオールナイトニッポン」。
その後も、局を変え、DJを続けた。
2013年には、再び古巣に戻り、「中島みゆきのオールナイトニッポン月イチ」を放送し、2018年まで続いた。
北海道生まれの中島みゆきと、秋田県生まれの柳葉敏郎。
共に雪国の出身とあって、柳葉は中島みゆきに親近感を覚えながらラジオの声を聴いていたという。
競技中に聴く中島みゆき(岩垂かれん)
藤村「岩垂さんは、この音楽畑とはちょっと違う毛色ですよねぇ」
スノーボードクロス選手の岩垂かれんは、根っからの中島みゆきファンなのだ。
岩垂「ずっとみゆきさんを聴いて滑ってました」
工藤「本番のときも実際にかけてらっしゃるんですか?」
岩垂「そうですね。ずっとみゆきさんのプレイリストを作っていて、必ず聴くのは『ファイト!』だったんですが、『ファイト!』だとちょっとサビに行くまでが長すぎちゃって(笑)」
競技としては1分半くらいの短いレース。
『ファイト!』のように尺が長いと収まりがどうしても悪くなってしまう。
そこで岩垂が代わり選んだ曲が、『パラダイス・カフェ』だ。
テンポの良い曲調が、気持ちを盛り上げてくれるという。
岩垂「『パラダイス・カフェ』を流しておけば、どこにぶつけても、テンションが同じでいられるんです」
ここはパラダイス・カフェ 夜明けまで色とりどりの客が
みんなパラダイス・カフェ テーブルの向こうに見る甘い夢
(『パラダイス・カフェ』より)
『アザミ嬢のララバイ』の音はこうして作られた
船山基紀は、中島みゆきの1970~1980年代の代表曲をアレンジしてきた編曲家だ。
1975年のシングル『時代』や1981年のシングル『悪女』などの代表曲を手掛けている。
そんな船山が初めてアレンジを手掛けた中島みゆきの曲が、『アザミ嬢のララバイ』だ。
プロデューサーから、北海道出身の新人歌手の曲に音をつけてくれと依頼された。
船山「アザミ嬢って痛そうと思った訳ですよ。歌の中身はだいたい察したんですね。確かにそういう曲だったから。僕はこれをインパクトにしたかったから、それを活かすには楽器編成を普段は使わないあるとフルートを使ったんですね」
中村「アルトフルートって、夜の霧ってみたいなイメージがありますよね」
春は菜の花 秋には桔梗
そしてあたしは いつも夜咲く アザミ
(『アザミ嬢のララバイ』より)
中島みゆきの歌う表情
工藤静香は、最近の中島みゆきの歌い方にある法則を発見した。
工藤「みゆきさんって顔の表情を変えずに歌ってるじゃないですか。最近のみゆきさんは、確実に笑って歌うんですよ」
藤村「口角がキュッと上がってる感じしますよね」
工藤「どんな淋しい歌でも笑って歌うんですよ」
工藤にとってそれは、中島みゆきの曲に対する色んな解釈の1つなのだと捉えている。
「中島みゆきのオールナイトニッポン」の最終回
藤村「リスナーのみなさんにとって忘れがたいある回がありまして、最終回の音源が実はあります」
柳葉「え~!!」
1987年3月30日の「中島みゆきのオールナイトニッポン」最終回の音源が流されると、柳葉敏郎は食い入るように耳を傾ける。
じゃホントにいっぱい、ありがとう。
これからもずっとあなたの望んでる通りになってと祈れないけれども、あなたにとって一番しあわせな方へいくようにと祈ってます。
幸せという字は辛いという字の上についてるちょっぴりの点を十という字に変えると幸せになるんです。
十分辛くて初めて人は幸せになるんです。
くじけないで頑張ってください。
じゃ、今から数えて10秒後に、私は音楽に走ります。
10,9,8,7,6,5,4,3,2,1
こんばんは中島みゆきです。
藤村「柳葉さん、この回は聴いてらしましたか?」
柳葉「聴いてたと思うんですけど、ごめんなさい、僕、最終回記憶してんのは松山千春さんのヤツです(苦笑)」
続いて、1977年放送の「夜のヒットスタジオ」(フジテレビ系)でのライブ映像で、『わかれうた』。
途に倒れて だれかの名を
呼び続けたことがありますか
人ごとに言うほど たそがれは
優しい人好しじゃありません
(『わかれうた』より)
『悪女』の音はこうして作られた
藤村「私が中島みゆきさんを知った一番最初の曲は『悪女』でして。「マリコの部屋へ」っていうフレーズが小学生ながらすごく鮮明に入ってきて印象に残ってますねぇ」
この『悪女』のアレンジを手掛けたのは船山基紀。
船山「『悪女』なんかはねぇ、ちょうど職業作家がだんだん廃れてきていって、アマチュアのパワーがすごく上がってきた頃に作った作品なんで、とっても1個1個の音を凝って作ってんですよ」
『悪女』については、ジョン・レノンやシカゴのピアノにあやかって音をつけていったという。
だが、中島みゆきにはそれを軽々と自分のものにしてしまうパワーがあったと船山は振り返る。
マリコの部屋へ 電話をかけて
男と遊んでる芝居 続けてきたけれど
あのこもわりと 忙しいようで
そうそうつきあわせてもいられない
(『悪女』より)
ゲスト厳選5曲プレイリスト
ゲストが厳選した中島みゆきの曲5選を紹介。
工藤静香の5選
『やまねこ』
「女に生まれて喜んでくれた」という歌詞に、工藤静香は頬をぶたれたような衝撃を受けたという。
女に生まれて 喜んでくれたのは
菓子屋とドレス屋と女衒と女たらし
(『やまねこ』より)
『世情』
工藤「切ない感じが残ってます。ドラマの影響とかもあるけれど」
シュプレヒコールの波 通り過ぎてゆく
変わらない夢を 流れに求めて
時の流れを止めて 変わらない夢を
見たがる者たちと 戦うため
(『世情』より)
『身体の中を流れる涙』
工藤静香は以下の歌詞に強い衝撃を受けたという。
身体の中を流れる涙は どこを切っても涙が落ちる
涙が私を動かしている 私は涙でできている
(『身体の中を流れる涙』より)
『見返り美人』
中島みゆきの歌はストーリーの絵が浮かぶと、工藤静香は語る。
とりわけこの曲は、その傾向が強いようだ。
アヴェ・マリアでも 呟きながら
私 別人 変わってあげる
見まごうばかり 変わってあげる
(『見返り美人』より)
『アザミ嬢のララバイ』
工藤静香にとってカッコイイ女性像がこの曲にはあるという。
ララバイ ひとりで泣いてちゃみじめよ
ララバイ 今夜はどこからかけてるの
ララバイ なんにも考えちゃいけない
ララバイ 心におおいをかけて
(『アザミ嬢のララバイ』より)
中村中の5選
『「元気ですか」』
中村中が初めて買った中島みゆきのアルバムの中にこの曲が入っていた。
アルバム『愛していると云ってくれ』の1曲目。
音楽が流れると思いきや、のっけから語りで度肝を抜かれたのだ。
中村「けっこう大きな音量でかけてたから、怖かったですよね(笑)」
「元気ですか」と
電話をかけました
あの女のところへ 電話をかけました
いやな私です
(『「元気ですか」』より)
『キツネ狩りの歌』
中村中がこの曲に出会ったのは、中学生の頃。
中村「当時は、キツネ狩りしている人が、実はキツネに化かされてるかもしれないよっていう内容が、漠然と怖い歌だなあって思ってたんですけど」
だが、最近の聴き方は違う。
SNSで炎上記事を探してばかりいる自分に気づいて、このことが曲と重なって感じられるという。
キツネ狩りにゆくなら 気をつけておゆきよ
ねえ グラスあげているのがキツネだったりするから ねえ
(『キツネ狩りの歌』より)
『やさしい女』
この歌詞に多くの人が共感するはずだと、中村中は熱を込めて言う。
人にいい顔をしなければならないのは苦痛だが、それ以上に孤独になる方がもっと怖い。
この曲の主人公の気持ちが中村には痛いほど分かってしまうのだ。
あたしにだって嫌いな奴はいっぱいいる
だけどだれにも嫌いだと言えない
ひとりぼっちが恐くって
こんなに笑って 生きてる
(『やさしい女』より)
『蕎麦屋』
どん詰まりの時に連絡をくれる存在がないときっと辛いだろう。
中村中は、最近そんなことを考えながらこの曲を聴いているという。
あいつの失敗話に けらけら笑って丼につかまりながら、おまえ
あのね、わかんない奴もいるさって
あのね、わかんない奴もいるさって
あんまり突然云うから 泣きたくなるんだ
(『蕎麦屋』より)
『あした』
何もない状態になっても愛してもらえるのかという不安。
着飾ってないと自信が持てないということを、少し肯定されているような曲だと中村中は語る。
もしも明日 私たちが何もかも失くして
ただの心しか持たない やせた猫になっても
もしも明日 あなたのため何の得もなくても
言えるならその時 愛を聞かせて
(『あした』より)
岩垂かれんの5選
『重き荷を負いて』
海外戦へ行って初めて世界の壁を感じた岩垂かれんは心が折れてしまい、競技から引退しようと考えていた。
そんな時に出会ったのがこの曲。
岩垂「どん底から引き上げてくれるような曲で、共に選手時代を送っていたと言っても過言ではないくらい助けられた曲ですね」
足元の石くれをよけるのが精一杯
道を選ぶ余裕もなく
自分を選ぶ余裕もなく
(『重き荷を負いて』より)
『倒木の敗者復活戦』
勝負する身として自分と重なるところが多いと、岩垂かれんは語る。
岩垂「何回もこの曲に背中を押されました」
望みの糸は切れても
救いの糸は切れない
泣き慣れた者は強かろう
敗者復活戦
(『倒木の敗者復活戦』より)
『India Goose』
岩垂かれんは、この「India Goose」が何なのか気になって調べていた。
別名「インドガン」。
世界で一番高いところを飛び、追い風にのらず羽ばたき続ける鳥らしい。
岩垂「鳥のことまでみゆきさん、よく知ってるなあと思って(笑)」
飛びたて 飛びたて 戻る場所はもうない
飛びたて 飛びたて 夜の中へ
(『India Goose』より)
『永久欠番』
歌詞が、中学校の国語の教科書に掲載されたこともあった。
岩垂かれん曰く、この曲はもはや文学。
スケールの大きさに、理解を追いつかせるのに必死だという。
100億の人々が
忘れても 見捨てても
宇宙(そら)の掌の中
人は永久欠番
(『永久欠番』より)
『スクランブル交差点の渡り方』
岩垂かれん曰く、「みゆき節」という力強さが感じられない1曲。
だが、スクランブル交差点をなかなか上手く渡れない主人公が最後に漏らす「ハァ」というため息は、すごく魅力的に耳に残ってしまうという。
それでも時折 意外な所へ着いてしまったりもするので
人の行く先を予測するのが大事です
スクランブル交差点では 渡り方にコツが要る
(『スクランブル交差点の渡り方』より)
柳葉敏郎の5選
『慕情』
2017年に放送されたドラマ「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)の主題歌。
柳葉「ドラマという作品に重なった時にものすごいマッチングしてるんですよね」
柳葉敏郎はこの曲が持つ中島みゆきの感性に圧倒されたという。
海から生まれて来た それは知ってるのに
どこへ流れ着くのかを知らなくて怯えた
生き残る歳月 ひとりで歩けるかな
生き残らない歳月 ひとりで歩けるかな
(『慕情』より)
『世情』
20代より前に、エキストラをやっていた下積み時代の柳葉敏郎は、この曲と出会っていた。
1981年放送のドラマ「3年B組金八先生」第2シリーズ(TBS系)の名シーンで流された伝説の1曲だ。
シュプレヒコールの波 通り過ぎてゆく
変わらない夢を 流れに求めて
時の流れを止めて 変わらない夢を
見たがる者たちと 戦うため
(『世情』より)
『糸』
20歳を越えた娘がカラオケでよく歌って聴かせてくれるというこの曲。
中島みゆきが大好きな柳葉敏郎のために、娘がセレクトした1曲だという。
縦の糸はあなた 横の糸は私
織りなす布は いつか誰かを
暖めうるかもしれない
(『糸』より)
『浅い眠り』
柳葉敏郎主演のドラマ「親愛なる者へ」(フジテレビ系)の主題歌となった曲。
インパクトのあるイントロ部分は、柳葉の心を掴んだようだ。
柳葉「ドラマの流れの中で、ピークに向かって「これ一体どうなるの?」って時にボンッと出てくるんですよ」
ああ 二人で灯した
あの部屋のキャンドルは
光あふれる時代の中で
どこへ 儚く消えていったのか
(『浅い眠り』より)
『ファイト!』
小学校6年生の息子が歌ってくれるというこの曲。
歌詞が、野球少年の息子には響くようで、世代を越えて影響力があるのだと思い知った1曲。
ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ
(『ファイト!』より)
掃除をサボって中島みゆきを聴いていた(工藤静香)
工藤「自分のリストの中に『あたいの夏休み』と『やまねこ』と『土用波』とか、だいたいその辺りの時代の曲を高校生の時には聴いていました」
藤村「でも、「あばずれ」とか「女たらし」とか高校生が聴くにはちょっと早いかスレてる感じの曲ですよね?」
工藤「でも、ものすごいナチュラルに入ってきましたけどね(笑)」
だが、周囲に中島みゆきを聴いている人はあまりおらず、シェアできる人が少なかったと、当時を振り返る。
高校時代の工藤静香は、音楽室のと掃除当番を任せられていた時、自宅から持ってきた中島みゆきの曲を爆音でかけていたという。
工藤「いちばん気持ちよかったです。床に寝て地響きみたいな音くらい大きくして」
中島みゆきと初めて会った日(工藤静香)
工藤静香は、雑誌の対談の時に初めて中島みゆきと出会っている。
工藤「みゆきさんが「よろしくお願いしま~す」って、パ~と入ってきて。今でも覚えているのが、襟の開いた白いシャツで、ちょっと薄い生地なんですよ。わりとペッタンコのバレエシューズみたいなヤツ履いてス~ッと歩いてきて、なんか浮いてる感じなんです。なんか歩いてる感じじゃなかった(笑)」
夜会で共演して感じたこと(中村中)
1989年から、中島みゆきが言葉の実験劇場として上演している「夜会」。
2014年上演の「夜会VOL.18 橋の下のアルカディア」で、中村中は、中島みゆきと共演している。
中村「子どもの頃から聴いている人とまさか縁があって歌うこういう経験って、驚きますよね」
舞台で、中村は、中島みゆきの反応を楽しんでいた。
例えば、猫役の中村がいつもとは違うじゃれ方をして、その時中島みゆきはどうリアクションするのかといった遊びだ。
この「夜会」を鑑賞した岩垂かれんは、劇中で中島みゆきが中村と手紙越しに見つめ合って歌う『呑んだくれのラヴレター』が印象的だったと語る。
二度と生け贄にならぬよう
緑の手紙を開けなさい
(『呑んだくれのラヴレター』より)
中村は、この「緑の手紙」が一体何を意味しているのか歌いながらずっと考えていたという。
岩垂「実際、手紙には何か書いてあるんですか?」
中村「そうなんですよ~」
劇中、たくさんの手紙の中から1通を取って、それを読みながら歌うシーンがある。
ある日の本番、中村は、誤って別の手紙を選び取ってしまう。
実は、歌う曲ごとに手紙には歌詞が書いてあった。
だが、中村が間違って引き抜いた手紙には、そのシーンでは歌わない別の歌詞が載っていたのである。
中村「2人で「あっ」って目が合って、その後、目を瞑って歌われてたんです、正しい歌詞で歌うために」
中村は、自ら中島みゆきをリードするために、この時ばかりは食い気味に歌ったんだとか。
岩垂かれんの思う「夜会」
岩垂かれんは、初めて「夜会」を観た時の感想をブログで「言葉にならない衝撃」と書いている。
岩垂「コンサートと思っていたんで、演劇なのか何なのか。「夜会」は「夜会」って感じなんですよ。「夜会どうだった?」って訊かれても、答えられないっていうか、言葉をくださいって感じでしたね」
役者という観点からも、中島みゆきは尊敬に値する人物。
そう語るのは柳葉敏郎。
柳葉「みゆきさんは表現者のプロといいますかねぇ。歌を歌ってらっしゃる時の、1つの曲の中の抑揚のスゴさとか、トーンの変え方とかね」
瀬尾一三の目に映る中島みゆき
中島みゆきを長年支えてきたプロデューサー兼アレンジャーが、瀬尾一三だ。
番組のインタビューに答えている。
瀬尾「作品に対してはすごく「すげっ」って思いますけども、日常の中島さんに対してはあんまり「すげっ」とは思ったことないです(笑)」
瀬尾は、1988年のシングル『涙 -Made in tears-』以来、中島みゆきのシングル&アルバムのほとんどのアレンジを手掛けている。
瀬尾「いちばん最初に感じたのが、1つの事柄とか物事の捉え方が結構同じ角度から見てるなって」
斜に構え、世の中に同調しない感じが中島みゆきにはあるらしい。
それが瀬尾の哲学と共鳴し、「同志」という気持ちが芽生えたという。
瀬尾「これは助けなきゃっていう風に思いましたね」
瀬尾は、曲のレコーディング以外にも、ライブツアーや「夜会」など、中島みゆきの音楽活動を幅広くサポートしている。
これは、中島みゆきの望みでもあった。
「私の仕事は全部を区別している訳じゃないので、全部が100なので100のことをやりたい」
中島みゆきは、そう言って、瀬尾に音楽活動を全面的に委ねたのである。
「夜会」の作り方
夜会はどのようにして作られているのだろうか?
打ち合わせの段階では、瀬尾一三には、あらすじしか渡されないという。
瀬尾「台本が歌ですので、このシーンでこの人が歌うというのがあって、それを僕がどう繋げていくか」
そのためには、役者の芝居や舞台空間もある程度予測していかないといけない。
また、芝居は別に練習するため、その擦り合わせによって、音楽の方向性も変わってくる。
もう少し長くしてくれた方が動きができる、といった声があれば、それを音楽に反映させていくのである。
岩垂かれんと『地上の星』の出会い
岩垂かれんが最初に聴いた中島みゆきの曲は『地上の星』だ。
まだ9才だった岩垂に、母親が突然買ってきてくれたのが『地上の星』のシングルだった。
それは、岩垂にとって初めて買ってもらったCDだ。
ちなみに、岩垂の母親の名前も「みゆき」という。
藤村「お母様は、なぜ、それを買ってらっしゃったんでしょうね?」
岩垂「お母さんもファンだったんですよ」
つばめよ 高い空から教えてよ
地上の星を
つばめよ地上の星は
今 何処にあるのだろう
(『地上の星』より)
ドラマ主題歌
中島みゆきの曲がドラマ主題歌で用いられるようになったのは1990年代に入ってからのことである。
『空と君のあいだに』
1994年放送のドラマ「家なき子」(日本テレビ系)の主題歌。
空と君とのあいだには
今日も冷たい雨が降る
君が笑ってくれるなら
僕は悪にでもなる
(『空と君のあいだに』より)
『銀の龍の背に乗って』
2003年放送のドラマ「Dr.コトー診療所」(フジテレビ系)の主題歌。
銀の龍の背に乗って 届けに行こう 命の砂漠へ
銀の龍の背に乗って 運んで行こう 雨雲の渦を
(『銀の龍の背に乗って』より)
『恩知らず』
2012年放送のドラマ「東京全力少女」(日本テレビ系)の主題歌。
だからだからだからこれきりです
これでこれでこれで楽(らく)になってね
恩を仇(あだ)で返します 恩知らずになりました
(『恩知らず』より)
『麦の唄』
2014年放送のドラマ「マッサン」(NHK)の主題歌。
麦に翼はなくても 歌に翼があるのなら
伝えておくれ故郷へ ここで生きてゆくと
(『麦の唄』より)
中島みゆきと共演した柳葉敏郎
柳葉敏郎は、ドラマで中島みゆきと共演したことがある。
1992年放送のドラマ「親愛なる者へ」(フジテレビ系)で、柳葉敏郎は浅野ゆう子の夫役を演じた。
そして、中島みゆきは産婦人科役として出演している。
柳葉「僕としては、深夜のラジオで初めて声を耳にして、「夜のヒットスタジオ」で歌ってる姿を目にして、共演させてもらうってお話を聞いた時はただのミーハーです。「うわ、中島みゆきかよ!」みたいな(笑)」
中島みゆきはこのドラマの第2話で登場している。
セリフも割と長い重要な役だった。
柳葉「一言一言が丁寧でね、なかなか今まで経験したことのない間合いだったので」
柳葉は、後にドラマ作品として改めてこのシーンを見て、圧倒されたという。
セリフの調子からその解釈まで、ものの見事に画面に表れていたのだ。
工藤「言葉を使う方なので、セリフもやっぱり独特ですよね。みゆきさん節というか、間合いとか、みゆきさんの捉え方で出しているんだなってすごく伝わるシーンでした」
柳葉「ラジオパーソナリティー中島みゆきというところから入ってますので、おそらく普段の姿であろう中島みゆきさんをずっとイメージしてた中でのドラマ共演だったので、若い時に色んな言葉で助けてもらったお姉ちゃん。そんな感じでその時を過ごさせてもらいました。とっても優しかったです!」
桜田淳子と中島みゆき
藤村「柳葉さんは、桜田淳子さんのファンクラブに入ってらっしゃったそうですね」
柳葉「アハハハ!」
桜田淳子は、中島みゆきから楽曲提供を受けている。
柳葉敏郎曰く、桜田が少女から大人の女性へ変わろうとしていた時期に、中島みゆきの曲が一役買っていたという。
その1つが、柳葉もお気に入りだという『しあわせ芝居』。
恋人がいます 恋人がいます 心の頁につづりたい
恋人がいます 恋人がいます けれどつづれないわけがある
(『しあわせ芝居』より)
作詞・作曲を中島みゆきが手掛け、船山基紀も編曲を手掛けている。
船山は、桜田の印象についてこう振り返る。
船山「桜田さんには会ってましてね、まだ10代で、確か学校帰りにスタジオに駆けつけてくれて制服のまんまお歌いになったのを覚えてます」
船山基紀が初めて中島みゆきに会った日
船山基紀が、中島みゆきと初めて出会ったのは、TOKIOの『宙船(そらふね)』(作詞・作曲 中島みゆき)のアレンジについての打ち合わせの時だった。
中島みゆきの曲を初めてアレンジしてから、実に30年経って、ようやく対面が叶ったのである。
この打ち合わせの後、船山は、中島みゆきと帰りが同じ方向とあり、「乗ってく?」と車へ誘った。
助手席に中島みゆきという大物を乗せているというプレッシャーから、いつも以上に注意深く運転したという。
その船を漕いでゆけ おまえの手で漕いでゆけ
おまえが消えて喜ぶ者に おまえのオールをまかせるな
(『宙船(そらふね)』より)
中島みゆきが歌う『NIGHT WING』
工藤静香は、中島みゆきから23曲もの楽曲提供を受けている。
誰かと競い合うような性格ではないが、この23曲については誰にも抜かれたくないという思いが強い。
そのうちの1曲『NIGHT WING』(2008年)を、中島みゆきはコンサートの中でセルフカバーしている。
NIGHT WING 心型の翼は 風に煽られて飛び立つ
NIGHT WING 心逸れた翼は ぽつり 掌で眠る
(『NIGHT WING』より)
工藤静香は、この曲をライブ会場で聴いていたという。
「心型の翼」という歌詞のところで、中島みゆきがハートの形をつくっていた一幕が印象に残ったようだ。
中島みゆきの曲を歌うのは難しい
藤村「中島みゆきさんの曲は、ブレスするのが難しいと聞いたんですけど、実際歌われてみていかがですか?」
工藤「大丈夫です(笑)」
船山「とめどなく言葉が溢れてくる感じで、それにメロディがのっかってるもんですから、みゆきさんは歌いたいからウワ~といくんですけど、それをマネして歌うのはとっても大変だと思いますね」
ブレスが大変な一例として中村中が挙げた曲は『追いかけてヨコハマ』だ。
桜田淳子へ提供されたこの曲は、ブレスする箇所がほとんどない。
レコーディングに中島みゆきも立ち会っているが、桜田のこめかみあたりの血管が切れそうだったと、後に振り返っている。
1998年、中島みゆきは工藤静香に『雪・月・花』という曲を提供している。
言葉がつっかかるかもしれないという計らいで、中島みゆきが工藤のために仮歌を入れたテープを送っている。
難しい曲だからといって、アフターケアを怠らないのが中島みゆきなのだ。
雪・月・花 移ろわないのが恋心
雪・月・花 ひたすらつのるばかり Ah…
(『雪・月・花』より)
中島みゆきの歌が持つ力
藤村「みゆきさんのあのパワーっていうのは何でしょうかね?」
工藤「「お腹の中に力を入れて歌いなさい」っていうルールとかなしで、そのままバンって発してる感じ」
船山「サウンドがどんなに変わってもみゆきさんはぜんぜん変わんないです」
ロックであろうとフォークであろうと、根底には中島みゆきがあるからちゃんと伝わってくる。
そう、船山基紀は見ている。
工藤「言霊ってありますけど、言霊を使えるのは彼女だなって」
藤村「誰にでもみゆきさんの詞っていうのは、「これ私のこと書いてるかも」って思わせるフィットする部分が必ずある感じしますよね」
工藤「でもその逆もありますね。自分にフィットする部分と、自分には全然ない女性像を描いていて驚くとか」
中村「母から優しくしてもらってるかのような、あるいは母から叱られてるように聴く人って多いと思いますね」
ビブラートが常にかかっている声質が、日本版のエディット・ピアフのようでもあると、工藤静香は語る。
藤村「心地いいですよね」
船山「言葉1つ1つの説得力があのビブラートに込められるんですよ」
藤村「詞の解釈って難しそうだなあと思うんですけど」
工藤「でも、人それぞれでいいんじゃないんですか」
中島みゆきの魅力と今後(瀬尾一三)
世代を越えて愛される中島みゆきの魅力はどこにあるのだろうか?
再び、瀬尾一三に訊いてみた。
瀬尾「彼女が作り上げてくるものがすごくマクロ的なものからミクロ的なもの、平面的なものから俯瞰的なもの、オールマイティのように色々と出てくるんですよ」
日常では気付こうとしない心のひだにあるささくれのようなものを中島みゆきの歌は提示している。
時に、傷に塩を塗るような痛みが伴うかもしれない。
だが、それを含めて、中島みゆきの歌は愛にあふれ、やがて傷をも癒していく。
瀬尾「個人っていうところの対峙の仕方をしているので、そこが1番響くところだと思うんですよね」
瀬尾一三と中島みゆきの付き合いは33年目に突入した。
まだ出し切れていない切り口がどこかに隠れているのかもしれない。
そのまだ見ぬ切り口から生まれてくる新しい何かに、瀬尾は期待を膨らましている。
瀬尾「続くっていうことがエネルギーになれば、まだまだいい作品が出てくると思います」
『Nobody Is Right』のイメージ(瀬尾一三)
瀬尾一三は、曲のアレンジを手掛ける時に、頭の中に絵コンテみたいなものを描き込んでいく。
瀬尾がアレンジした中島みゆきの曲に『Nobody Is Right』がある。
この曲の場合、瀬尾の頭にはどんな絵コンテが出来あがっていたのだろうか?
瀬尾「デモテープを聞いた瞬間に思ったのは、ニューオリンズのお葬式行進だったんですよ。ニューオリンズのお葬式が賑やかなんです。楽団がいて街をうねって踊りながら歩いていく。鎮魂歌的なものとゴスペルみたいなものが一緒になると面白いかなと思って作りました」
正しさと正しさとが 相容れないのはいったい何故なんだ
Nobody Is Right,
Nobody Is Right,
Nobody Is Right,
正しさは
Nobody Is Right,
Nobody Is Right,
Nobody Is Right,
道具じゃない
(『Nobody Is Right』より)
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