1989年、中島みゆきは、「夜会」という新たな試みを始めた。
今や、中島みゆきのライフワークともいえるこのステージは一体どういうものだろうか?
雑誌のインタビューを交えながら、みていこう。
また、「夜会」を映像に収めたDVD/Blu-ray作品を全て紹介しよう。
- 「夜会」ってどういうものか知りたい
- 「夜会」のDVD/Blu-ray一覧が知りたい
こんな人は、この記事を読んでください!
「夜会」とは何か?
「夜会」とは言葉の実験劇場
「夜会」とは、コンサートでもミュージカルでもない、言葉の可能性を模索する「言葉の実験劇場」である。
歌に、様々なシチュエーションを加え、新たな解釈を生み出すという試みだ。
スタートから回を重ねるごとに、ストーリー性が加わっていった。
そのため、「夜会」を演劇と捉える人も多いが、それは少し違う。
1992年「月刊カドカワ」11月号のインタビューで中島みゆきは、「演劇が最終目標なわけじゃない」と答えている。
「言葉を表現するためだったら、邪道と言われようが何だろうが、やれることはみんなやったっていいんじゃないかと」
飽くまで優先させるのは言葉であり、それを活かすための手段として演じるのである。
「夜会」を始めるきっかけ
なぜ、中島みゆきは「夜会」を始めなければならなかったのか?
そこには、CDでもコンサートでもない、「夜会」という形態でなければならない必然性があった。
言葉の可能性
中島みゆきは、ミュージシャンというよりも谷川俊太郎や倉本聰などの「言葉屋」として自身を捉えている。
そのスタンスで歌と向き合っていくには、すでに発表した曲の型を壊す必要があった。
CDで世に出した曲は、演奏や歌い方、アレンジなどで、1つのパターンとしての受け取られ方をされてしまう。
「もう一度自分に引き戻して、「こういう言い方もありますけど」っていうことがどうしてできないんだろうとずっと思ってたんですよね」
「夜会」は、言葉を束縛から解放するための手段だったのだ。
コンサートの限界
CDは、演奏や歌い方がレコーディングした時点で固定されてしまう。
一方、コンサートならその点が自由なので、「言葉の実験」をやるには好都合の場ではないだろうか。
だが、中島みゆきは、すでにコンサートでその試みを行っている。
結果、不評だった。
1992年「月刊カドカワ」11月号のインタビューでは以下のように答えている。
「アルバムに入っているのと違う歌い方、意味合いが違うような歌い方、熱があったのを冷めた歌い方にしたら、やる気がないと取られたり、何をしようとしているのかわからない、ついて行けないっていうブーイングがものすごく多かったんです」
どうやら、コンサートではコンサートの流儀というものがあるらしい。
この曲のこのイントロになったら総立ちになって拍手する、といった暗黙のルールがあり、一体感を求める客は少なくない。
そして、中島みゆき自身も、その期待を裏切るわけにはいかなかったのだ。
客の期待と言葉の解放。
中島みゆきの中で、そのジレンマが次第に大きくなっていき、やがてこう思うようになる。
「いつか切り離さなきゃならない時期が来るだろうと思ってたの」
掛け算的なアプローチ
曲に対する人の捉え方は様々だ。
場合によっては、作った本人の意図しない形で捉えられてしまうこともある。
その最たるものが『うらみ・ます』だった。
世間には全く真逆の意味で捉えられてしまった曲だが、中島みゆきは、くどくど説明するのは潔くないと考え、ずっと口を閉ざしていたのだ。
1992年「月刊カドカワ」11月号のインタビューで、中島みゆきは以下のように語っている。
「自分がこう思うんだ、というのが伝わらなかったら、伝わるような他の方法にトライすればいいじゃないかと、ずっと思ってたの。アレンジも歌い方も設定も、目で見えるものを含めて、いろいろ合わせればわかる手はあるんじゃないか、とふっと思ってたのね」
コンサートとの違い
「夜会」は、コンサートとは具体的に何が違うのだろうか?
手拍子もプレゼントもNG
ノリのいい曲があったとしても、コンサートのように立ち上がって手拍子をしてはいけない。
また、客席からプレゼントの差し入れもNGだ。
中島みゆきによると、「夜会」が始まったばかりの頃は、カップ麺を手渡そうと準備していた客がいたようだ。
だが、いくら麺好きの中島みゆきといえ、これもNG。
開演時間が遅め
開演時間が20時~と、通常のコンサートより遅め。
仕事が終わって余裕もって来られるようにという中島みゆきの配慮だそうな。
会場は1つ
各地のホールを巡る全国ツアーとは違い、「夜会」が行われる場所は限定されている。
「夜会」は、舞台セットを組む上で、床を剥がしたり釘を打ったりという工程が必要になってくる。
その上、雨や雪を降らしたり、水を流したり、いろんな装置を導入するために、それらを許容してくれるホールがなかなかない。
スタートした1989年から2004年までは、渋谷のBunkamura シアターコクーンで上演。
その後は、TBS赤坂ACTシアターへ場所を移している。
基本的に「夜会」は東京のみの公演だが、一時期、大阪のシアターBRAVA!で上演されたこともあった。
【大阪公演一覧】
- 2006年「夜会VOL.14 24時着 00時発」(4月27日~5月14日)
- 2009年「夜会VOL.15 〜夜物語〜元祖・今晩屋」(1月30日~2月15日)
- 2012年「夜会VOL.17 2/2」(2月5日~2月21日)
「夜会」DVD/Blu-ray一覧
『夜会1990』
1990年上演。初めて映像化された「夜会」作品。
様々なシチュエーションの中の様々な女の孤独にスポットライトが当てられている。
【曲目】
『二隻の舟』『彼女によろしく』『ミルク32』『流浪の詩』『窓ガラス』『うそつきが好きよ』『元気ですか』『クレンジング クリーム』『月の赤ん坊』『断崖 -親愛なる者へ-』『孤独の肖像』『強がりはよせヨ』『北の国の習い』『ショウ・タイム』『Maybe』『ふたりは』
『夜会VOL.3 KAN(邯鄲)TAN』
1991年上演。中国の故事「邯鄲の夢」をモチーフに、クリスマスの夜に見た夢の中で、真実の愛に気づいていく女の姿が描かれている。
幼い子から老婆までを中島みゆき1人が演じている。
【曲目】
『涙 -Made in tears-』『トーキョー迷子』『タクシードライバー』『キツネ狩りの歌』『僕は青い鳥』『ロンリー カナリア』『ひとり遊び』『萩野原』『わかれうた』『ひとり上手』『さよならの鐘』『La-La-La』『サーチライト』『B.G.M.』『シュガー』『黄色い犬』『ふたつの炎』『傾斜』『殺してしまおう』『雪』『I love him』
『夜会VOL.4 金環蝕』
1992年上演。天文学と古典がクロスした斬新なストーリー。
天岩戸へと隠れてしまった天照大神と、それを舞いと歌で励まそうとするアメノウズメ。
加え、天体を観測する天文学者の3役を中島みゆきが演じている。
【曲目】
『C.Q.』『ほうせんか』『歌をあなたに』『エレーン』『遠雷』『冬を待つ季節』『世迷い言』『熱病』『真直(まっすぐ)な線』『やまねこ』『新曽根崎心中』『EAST ASIA』『二隻の舟』『DIAMOND CAGE』『泣かないでアマテラス』
『夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』
1993年上演。雨月物語「浅茅が宿」がモチーフの作品。
季節ごとに、それぞれ4人の「待つ女」を中島みゆき1人が演じている。
【曲目】
『どこにいても』『雨が空を捨てる日は』『家出』『バス通り』『笑わせるじゃないか』『人待ち歌』『信じ難いもの』『サッポロSNOWY』『ノスタルジア』『船を出すのなら九月』『遍路』『まつりばやし』『3分後に捨ててもいい』『りばいばる』『二隻の舟』『雨月の使者』『孤独の肖像1st.』『彼女の生き方』『テキーラを飲みほして』『たとえ世界が空から落ちても』『くらやみ乙女』『愛よりも』『人待ち歌』『夜曲』
⇒『夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』の解説&みんなの感想
『夜会VOL.6 シャングリラ』
1994年上演。母親を騙し大富豪のもとへ嫁いでいった女の居所を突き止めたメイ。
メイドを装い女が暮らすシャングリラへと乗り込んでいく。
「夜会」初の完全オリジナルストーリー。
【曲目】
『怜子』『煙草』『噂』『波の上』『南三条』『縁』『あの娘』『朝焼け』『五才(いつつ)の頃』『F.O.』『忘れてはいけない』『思い出させてあげる』『あり、か』『子守歌』『グッバイガール』『黄砂に吹かれて』『友情』『シャングリラ』『春までなんぼ』『二隻の舟』『生きてゆくおまえ』『誕生』
『夜会VOL.7 2/2』
1995年上演。恋人と暮らしていた女が二重人格を発症してしまう。
自分の幸せを許さないもう1人の自分。
その正体を突き止めるため、女は、自分のルーツを辿る旅へと出る。
「夜会」初の全曲書き下ろし。
【曲目】
『TOURIST』『1人旅のススメ』『拾われた猫のように』『誰かが私を憎んでいる』『NEVER CRY OVER SPILT MILK』『この思いに偽りはなく』『1人で生まれて来たのだから』『途方に暮れて』『ハリネズミ』『市場は眠らない』『竹の歌』『紅い河』『7月のジャスミン』『自白』『目撃者の証言』『二隻の舟』『幸せになりなさい』
『夜会VOL.8 問う女』
1996年上演。言葉を使い捨てる生き方に虚しさを覚えるアナウンサーの女。
日本語が話せない外国人娼婦との出会いをきっかけに、言葉と向き合い直す姿を描いている。
【曲目】
『誰だってナイフになれる』『エコー』『SMILE, SMILE』『台風情報』『RAIN』『JBCのテーマ』『公然の秘密』『女という商売』『二隻の舟』『あなたの言葉がわからない』『血の音が聞こえる』『未明に』『異国の女』『PAIN』
『夜会VOL.10 海嘯』
1998年上演。アメリカでレストランを経営する女は、命を懸けても果たしたい復讐があった。
その復讐のために日本行きの便に乗ったが、持病の結核が悪化し、ハワイへと緊急着陸。
収容された療養所の人々との交流を通して、自分の生き方を見つめ直していく。
【曲目】
『夢を叶えて』『夢の代わりに』『I am』『故国』『カレンダー』『知人・友人・愛人・家人』『空しき人へ』『二隻の舟』『難破船』『愛から遠く離れて』『Good Morning, Ms. YAMASHINA』『献灯』『白菊』『明日なき我等』『時効』『フロンティア』『紫の桜』『叶わぬ夢』『フロンティア』
『夜会VOL.13 24時着 0時発』
2004年上演。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」がモチーフの作品。
過労で倒れた女は、不思議な世界へと迷い込んでいく。
そこで女が出会ったのは、川を遡上するも行き場を失った鮭たちだった。
【曲目】
『サヨナラ・コンニチハ』『線路の外の風景』『分水嶺』『フォーチュン・クッキー』『パーティー・ライツ』『闇夜のテーブル』『情婦の証言』『ティムを探して』『廃線のお知らせ』『遺失物預り所』『水を点して火を汲んで』『ミラージュ・ホテル』『メビウスの帯はねじれる』『DOORS TO DOORS』『リゾート・ラッシュ』『水の線路』『我が祖国は風の彼方』『三日月の湖(うみ)』『帰れない者たちへ』『月夜同舟』『命のリレー』『サーモン・ダンス』『二隻の舟』『無限・軌道』
『夜会VOL.14 24時着 00時発』
2006年上演。2004年上演『夜会VOL.13 24時着 0時発』のリメイク。
【曲目】
『サヨナラ・コンニチハ』『線路の外の風景』『分水嶺』『フォーチュン・クッキー』『パーティー・ライツ』『闇夜のテーブル』『情婦の証言』『ティムを探して』『廃線のお知らせ』『遺失物預り所』『水を点して火を汲んで』『ミラージュ・ホテル』『メビウスの帯はねじれる』『DOORS TO DOORS』『リゾート・ラッシュ』『水の線路』『我が祖国は風の彼方』『帰れない者たちへ』『月夜同舟』『命のリレー』『サーモン・ダンス』『二隻の舟』『無限・軌道』
『夜会VOL.16 〜夜物語〜本家・今晩屋』
2009年上演。「安寿と厨子王」がモチーフの作品。
今生に残した悔いを、輪廻を繰り返す中で解き放っていく和テイストスペクタクル。
【曲目】
『暦売りの歌』『百九番目の除夜の鐘』『夜をくだされ』『海に絵を描く』『旅支度なされませ』『私の罪は水の底』『逃げよ、少年』『愚かな禿』『らいしょらいしょ』『ちゃらちゃら』『憂き世ばなれ』『夜いらんかね』『都の灯り』『幽霊交差点』『安らけき寿を捨て』『有機体は過去を喰らふ』『十文字』『ほうれやほ』『十二天』『紅蓮は目を醒ます』『赦され河、渡れ』『天鏡』
『夜会VOL.17 2/2』
2011年上演。1995年上演『夜会VOL.7 2/2』、1997年上演『夜会VOL.9 2/2』に次ぐ、第3弾目のリメイク。
【曲目】
『旅は始まる』『新しい風』『笹舟』『遠近法』『ささやかな花』『LAST SCENE』『奇妙な音楽』『鏡の中の他人』『NEVER CRY OVER SPILT MILK』『ギヴ・アンド・テイク』『彼と私と、もう1人』『誰かが私を憎んでいる』『夢中遊行』『ばりほれとんぜ』『暗闇のジャスミン』『1人で生まれて来たのだから』『市場は眠らない』『途方に暮れて』『この思いに偽りはなく』『帰郷群』『竹を渡る風の中で』『姉妹になるがいい』『鶺鴒(セキレイ)』『緘口令』『旅人よ我に帰れ』『茉莉花』『竹の歌』『紅い河』『7月のジャスミン』『海のカルテ』『自白』『目撃者の証言』『幸せになりなさい』『二隻の舟』
『夜会VOL.18 橋の下のアルカディア』
2014年上演。歌手の中村中と石田匠の共演作。
橋の下で占い屋を営む女とバーのママ、そしてガードマンの男。
繰り返す輪廻の中で、この3人が関わりながら生きてきたことが明らかになっていく。
【曲目】
『なぜか橋の下』『水晶球(スイショウキュウ)』『謎な女(ナゾナオンナ)』『問題集』『いらない町』『失せ物探し(ウセモノサガシ)』『恋なんていつでもできる』『いちど会ったらどうかしら』『大きな忘れ物』『猫なで声プリーズ』『川の音が聞こえる』『一族』『昔々あるところに』『捨て子選び』『すあまの約束』『男の仕事』『身体の中を流れる涙』『みのむし(鬼の捨て子)』『私と一緒に』『猫籠(ネコカゴ)』『人柱(ヒトバシラ)』『人間になりたい』『どうしてそんなに愛がほしいの』『雨天順延』『ペルシャ』『袋のネズミ』『シャッター街』『二隻の舟』『呑んだくれのラヴレター』『一夜草(イチヤソウ)』『毎時200ミリ』『国捨て(クニステ)』『India Goose』
『夜会VOL.20 リトル・トーキョー』
2019年上演。歌手の渡辺真知子との共演。
北海道の山奥にあるホテル&パブを舞台に様々な人間模様が織りなされていく。
久々に、既存曲も歌われ、原点回帰したような作品になっている。
【曲目】
『渡らず鳥』『何か話して』『リトル・トーキョー』『野ウサギのように』『大雪警報』『BA-NA-NA』『カナリア』『いつ帰ってくるの』『思い出だけではつらすぎる』『勝(か)ち女(おんな)』『招かれざる客』『テキーラを飲みほして』『後悔はないけれど』『ねぇ、つらら』『LOVERS ONLY』『氷女(こおりおんな)』『ずれてるあたしたち』『大人たちはみんな』『捨て石』『紅灯の海』『梅(うめ)が枝(え)』『月虹(げっこう)』『二隻の舟』『放生(ほうじょう)』
⇒『夜会VOL.20 リトル・トーキョー』の解説&みんなの感想
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