中島みゆきの1988年と1993年のアルバム曲『ローリング』
もともとは、1988年に発表された曲だが、後に瀬尾一三の編曲によりリメイクされた。
学生運動を表していると思しき歌詞や、編曲を手掛けた瀬尾一三がこの曲に対し抱いていたイメージ、また、香港の歌手によるカバーまで、色々みていこう。
この記事は、
- 『ローリング』がリメイクされるまでの流れ
- 『ローリング』の学生運動を表した歌詞
- 『ローリング』のイメージは40代の男
について書いてます!
中島みゆき『ローリング』
作詞・作曲 中島みゆき
編曲 椎名和夫(1988年)
編曲 瀬尾一三(1993年)
リメイクまでの流れ
『ローリング』は、もともとは、1988年のアルバム『中島みゆき』に収録されていた1曲だ。
編曲を手掛けたのは椎名和夫。
ライトタッチなロックサウンドが用いられ、それに合わせる形で淡々と歌われていた。
だが、その5年後の1993年、コンサートツアー「EAST ASIA」ではガラリと印象を変えて披露された。
アレンジを担当したのは瀬尾一三。
ドスの効いた歌声、ドラムやサックスが前面に出たサウンドにより、重厚感に富んだ表情を見せている。
このライブでの演奏をベースにリメイクされ、1993年のアルバム『時代 -Time goes around-』の1曲に加えられた。
レコーディングはロサンゼルスのミュージシャンを起用。
CDブックレットには、彼らの声が引用されている。
「歌詞がわからないハズなのに、どうしてあんなにニュアンスがわかるのかな」
ヘッドフォンから、リハーサル時の中島みゆきの歌声の表情を聴きながら、それを演奏に反映させていたという。
学生運動を表した歌詞
『ローリング』の歌詞には、学生運動が反映されていると一部で言われている。
その根拠とされるのが以下の歌詞。
黒白フィルムは 燃えるスクラムの街
足並揃えた幻たちの場面
それを宝にするにはあまり遅く生まれて
夢のなれの果てが転ぶのばかりが見えた
(『ローリング』より)
- 「スクラム」……デモなどで大勢が腕を組み合わせて横に列を組むこと。
- 「足並揃えた」……デモ行進。
- 「黒白フィルム」……学生運動という過去の情景を追憶している
- 「夢のなれの果てが転ぶのばかりが見えた」……夢を砕かれた後の現実。
主人公のイメージは40代の男
『ローリング』の編曲を手掛けた瀬尾一三は、この曲に見られるような男前の世界観が大好物だと話す。
「ラジオ瀬尾さん」の中で以下のように印象を語っている。
Rollin’Age 笑いながら
Rollin’Age 荒野にいる
僕は僕は荒野にいる
(『ローリング』より)
ポツンと踏ん張って立っている男の哀愁を歌った曲を、男は気恥ずかしくて書くことができない。
しかも、中島みゆきの書く男は的を射ている。
Rollin’Age 淋しさを
Rollin’Age 他人に言うな
軽く軽く傷ついてゆけ
(『ローリング』より)
他人には胸の内を語らない。
語れば、恥ずかしい。
そんな男の本音を上手く捉えている。
いかにしてこのような男に近づけていけるかと考えながら、瀬尾はサウンドを構築していったのである。
さて、一部のファンの間では、この歌の主人公の年齢をめぐって論争になっている。
20代のようにも取れるが、40代にも取れる。
ちなみに瀬尾は、こう語っている。
「若者として見てなかった。40過ぎくらいと思ってた」
あの渋みを伴ったサウンドは40代の男をイメージして作られたのだ。
1988年版を20代、1993年版を40代という風に区別して聴く人もいるようだ。
『ローリング』はこんな曲
打ちのめされて酒場をハシゴする男が主人公。
弱みを誰にも見せないでいることを美学として描いている。
9桁の数字を組み替えて並べ直す
淋しさの数と同じイタズラ電話
ボックスを叩く街の風が冷たい
どうしても1つだけ押せない組がある
(『ローリング』より)
『ローリング』のみんなの感想
中島みゆきのラストツアーのセットリストの中に
ローリングっていう曲があるんだけど、本当に
この曲に何度も救われたんだよね。
1988年の作品だから生まれてないんだけどさ。
この歌詞の中の「僕」はめちゃくちゃ強い人。
何度も自分に置き換えて泣いたなぁ。
この曲のためだけにDVD出たら買うわ。— ちょーちん (@ZUZbTBaCKoA8mX4) January 4, 2022
アマミュで中島みゆきのローリングがないのに納得がいかん。あれは本当にいい曲やぞ。歌詞がシンプルだけどシンプルだからこそ作詞のセンスが出まくってる
「一見相手の洒落た挨拶を配る」とかね、日常の中にある寂しさと言うには抽象的すぎる寂しさを簡潔かつ精密に書き表してる
あと二隻の舟も出せ
— 椿ちゃん@器用貧乏アマ作家 (@best_yayoilover) December 24, 2021
中島みゆきさんの「ローリング」の歌詞が今の僕なんだよなぁ。
— ゆうき@まどかちゃんからもらい泣き (@MeruMado_Y_313) June 8, 2021
カバーしたアーティスト
ルイ・フォン(呂方)
香港の男性歌手。
歌詞のみ中国版に差し替えられており、タイトルを『流浪花』と変えている。
林振强による中国語版歌詞は、お茶を飲みながら、別れた恋人を想う主人公の気持ちが描かれている。
その喫茶店は、かつて恋人と時間を過ごしたという設定だ。
紅茶は今でも良い香りを放っています
でも 今 ここには私だけが座っている
(『流浪花』より和訳)
二度とあなたを抱きしめられないなら
この世界に私は要らない
(『流浪花』より和訳)
『ローリング』をフルで聴く方法
単品購入
収録アルバム
『中島みゆき』
1988年リリースのオリジナルアルバム。
- 椎名和夫作曲の『湾岸24時』
- 郵政省「かもめ~る」のCMソング『御機嫌如何』
- 甲斐よしひろ作曲の『仮面』
を含む全9曲。
1988年版の『ローリング』を聴くことができる。
【収録曲】
『湾岸24時』『御機嫌如何』『土用波』『泥は降りしきる』『ミュージシャン』『黄色い犬』『仮面』『クレンジング クリーム』『ローリング』
『時代-Time goes around-』
1993年リリースのオリジナルアルバム。
- 1993年版『時代』
- 幻のデビュー曲と言われている『あたし時々おもうの』
- 工藤静香に提供した『慟哭』
を含む全11曲。
1993年版の『ローリング』を聴くことができる。
【収録曲】
『時代』『風の姿』『ローリング』『あどけない話』『夢見る勇気(ちから)』『あたし時々おもうの』『流浪の詩』『雨月の使者』『慟哭』『孤独の肖像1st.』『かもめの歌』
⇒『時代-Time goes around-』の解説&みんなの感想
『中島みゆき 2020ラスト・ツアー「結果オーライ」』
2022年にリリースされたライブアルバム。
2020年に行われた幻のラスト・ツアー「結果オーライ」の音源を収録。
ライブバージョンの『ローリング』を聴くことができる。
【収録曲】
『一期一会』『アザミ嬢のララバイ』『悪女』『浅い眠り』『糸』『ローリング』『流星』『最後の女神』『齢寿天任せ』『離郷の歌』『この世に二人だけ』『ナイトキャップ・スペシャル』『宙船(そらふね)』『あたいの夏休み』『麦の唄』『永遠の嘘をついてくれ』『慕情』『誕生』『人生の素人』『土用波』『はじめまして』
⇒『中島みゆき 2020ラスト・ツアー「結果オーライ」』の解説&みんなの感想
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