中島みゆきのアルバムCDを購入したことがある人なら知っていることであろうが、中島みゆきのアルバムには歌詞カードといっしょに英訳の歌詞がついてくる。
一体どんな意図があるのだろうか。
いつ頃から英訳をつけるようになったのか?
中島みゆきのCDに英訳がつけられるようになったのは、1996年10月18日に発売されたアルバム『パラダイス・カフェ』からだ。
歌詞が書かれたブックレットとは別に、全曲の英訳歌詞が書かれた大判の紙が折りたたまれた状態でケースに入っていた。
いよいよ中島みゆきも、本格的に海外進出を視野に入れてきたかとその時は思っていたが、どうやらこれには別の意味があるらしい。

なぜ英訳がついているのか?
中島みゆきが英訳をつけた理由は、歌詞のというのは極力そぎおとしていったコトバでできていて、その空白部分に誤解を生むことが多々あったからだとどっかのインタビューで語っていた。
また、2020年3月号の『ダ・ヴィンチ』での糸井重里との対談でも、これに関連したことが語られている。
「私はあまり写実的な歌詞って書いてなんですよね。
だから、いかようにも取れる」
人が各々違った解釈をしたところでそこに自分が立ち入る領域ではないと語った上で、大きく解釈が外れることのないようできるおせっかいの限界が、この英訳なんだそう。
英訳は中島みゆきがするのか?
英訳は翻訳家がしている。
中島みゆきはノータッチかというとそうでもなく、訳されたものには必ず目を通して、場合によっては修正させる。
例えば、アルバム『CONTRALTO』に収録されている『おはよう』という曲は、タイトルの「おはよう」を翻訳家が「Good Morning」と訳したことで修正が加えられた。
中島みゆきの意図した「おはよう」は挨拶のことではなく、「Wake up」つまり「目を覚ませ」という意味なのだ。
日本語の隙間を埋めるために英訳したはずが、それでさらに大きな誤解が生まれるという一例である。

英語の難しさを実感する中島みゆき
本格的な海外レコーディングを行ったのは1991年のアルバム『歌でしか言えない』からだった。
この頃から海外アーティストとやり取りすることが多くなり、例えば『永久欠番』では英訳を介し曲のイメージを共有したことが1991年11月号『月刊カドカワ』の中で語られている。
他のアーティストもこれくらいのことはしているのもしれないのが、中島みゆきは徹底している。
「それはもうしつこいくらいに時間かけて説明した」
こう語るのは1984年12月号の『ギターブックGB』でのインタビュー。
アルバム『はじめまして』でエンジニアのボブ・ハーランと曲のイメージを共有するために用意した歌詞カードというのが実に4種類。
日本語の歌詞カード、それをローマ字にした歌詞カード、英語に直訳した歌詞カード、意訳した歌詞カード。
英訳するにも翻訳家の多少のセンスが入ってしまうため、ディスカッションできるように2人の翻訳家をつけるという徹底ぶりだ。
日本語が分かる者同士ならすっ飛ばしてきた歌詞もボブには通用しなかったり、それを説明するのに日本人スタッフとも改めて1つ1つの歌詞について話し合う場が設けられたりと、コトバの壁は予想以上だったようだ。
「もしかしてミキサーが変わるなりしたら、違う曲になると思う。
歌詞も含めて」
中島みゆきが英訳にこだわるのは、音楽の解釈すらも変わる繊細さがコトバにはあるからと熟知しているからだろう。
ボブ・ハーランは1984年のアルバム『はじめまして』にエンジニアとして参加している。
ボブが手掛けたスティービー・ワンダーのレコードを聴いた中島みゆきが、音に惚れ込んで、ボブヘ依頼した。
後に、このボブが仲立ちになって中島みゆきはスティービー・ワンダーと会うことになる。
スティービーは、中島みゆきのシングル曲『つめたい別れ』の伴奏でハーモニカーを吹いている。


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