中島みゆき『空港日誌』の裏話【試聴あり】|薬師丸ひろ子への提供曲

飛行機

1988年の中島みゆきのシングルB面曲『空港日誌』

中島みゆきが薬師丸ひろ子のために書き下ろし、提供した曲で、後にセルフカバーしている。
中島みゆきがこの曲を書く上で意識したのが、薬師丸の中にある毒。
薬師丸との対談で語られたことや、中島みゆき版と薬師丸ひろ子版の違いなど、色々みていこう。

この記事は、

  • 『空港日誌』は、薬師丸ひろ子のために書き下ろされた
  • 『空港日誌』は、薬師丸ひろ子の毒を活かして書いた曲

について書いてます!

夢おじ子
夢おじ子
中島みゆきの曲を全て聴いてきたファン歴30年以上の夢おじ子が解説!

中島みゆき『空港日誌』


作詞・作曲 中島みゆき

編曲 瀬尾一三

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薬師丸ひろ子に提供された曲

⇒薬師丸ひろ子『空港日誌』(レコチョク試聴あり)

中島みゆきもセルフカバー

『空港日誌』は、薬師丸ひろ子に提供され、1987年のアルバム『星紀行』に収録された。
後に中島みゆきもこの曲をセルフカバーし、1988年10月21日リリースのシングル『涙 -Made in tears-』のB面に収録された

⇒中島みゆきシングル一覧【試聴あり】

中島みゆきが、薬師丸ひろ子のアルバム『星紀行』に提供したのは、『空港日誌』『未完成』の2曲。
『未完成』については、1989年のアルバム『回帰熱』でセルフカバーしている。

⇒『未完成』の記事はコチラ

『涙 -Made in tears-』は、前川清に提供された曲。
AB両面に渡ってセルフカバー曲がシングルリリースされるケースは、中島みゆき史上初。

⇒『涙 -Made in tears-』の記事はコチラ

薬師丸ひろ子の声に惹かれた中島みゆき

薬師丸ひろ子サイドから曲のオファを受けたのは、ちょうどライブアルバム『歌暦』を完成させたばかりで、時間を持て余している時だった。
1987年7月4日放送の「ウィークエンドファンタジー」(FM東京)にゲスト出演した中島みゆきは、薬師丸ひろ子との対談でこの時のことを振り返っている。

薬師丸ひろ子に曲を提供してみないか、という話を受けた中島みゆきは、「いいんですか本当に? 暗くなりますよ?」と戸惑いがあった。
だが、この頃の薬師丸は22歳。
中島みゆきの曲が似合わない年齢ではない。
改めて薬師丸の歌声を聴いてみて、透き通った声の中に毒っ気を感じた中島みゆきは、「これはイケる」とオファを引き受けたのだ。

1992年「月刊カドカワ」11月号のシングル曲解説の中で、中島みゆきは、初めて会った時の薬師丸の印象を「鈴を振るような、きれいな声で話す人だった」と語っている。

薬師丸ひろ子の毒を活かして書いた

1992年「月刊カドカワ」11月号の中で、曲のイメージを膨らませるために、実際に薬師丸ひろ子本人と会って、色々な話をしたことを明かしている。
1987年7月4日放送の「ウィークエンドファンタジー」(FM東京)では、『空港日誌』がどのようにして生まれたか語られた。

「薬師丸さんの声ってすごく透き通ってて、スーッと前に出ていく素直な声なんだけど、ぜったい毒あると私は思ってたのね(笑)」

薬師丸の歌声はどうかするとメルヘンチックな世界に振れてしまう。
中島みゆきが惚れ込んだ薬師丸の「毒」を活かすには、日常へと引き寄せる必要があった。

あの日にあなたが 博多にいたという
愛のアリバイを壊してあげたい
写真ひとつで 幸せはたじろぐ
安い女と嘲笑うがいいわ
(『空港日誌』より)

薬師丸ひろ子には、これまで歌ったことのないタイプの歌詞だった。
また、中島みゆきの周りでも、「あんまり女っぽい詞では、薬師丸も辛いのでは?」という心配の声もあった。
それに対し、中島みゆきはこう答えている。

「大丈夫ですよ、女ですもの」

薬師丸ひろ子のレコーディングでは、中島みゆきも立ち会った。
薬師丸は、中島みゆきから「恨み節にならないように」というアドバイスを受けている

歌詞に登場する「広島空港」は、中島みゆきが全国ツアーでよく利用していた空港だ。
ちなみに、この空港は現在、「広島西飛行場」と名前を変えている。

あなたの心が疲れていた頃へ
もう一度呼び出す 広島空港
(『空港日誌』より)

薬師丸ひろ子版と中島みゆき版の歌詞の違い

『空港日誌』の歌詞は、薬師丸ひろ子版と中島みゆき版では、一部が違う。

  • 薬師丸ひろ子版

風が強くて飛行機は降りない
(『空港日誌』より)

安い女と嘲笑(わら)えばいいわ
(『空港日誌』より)

空のなかに 翼の音を探して
風の中 毎日 耳をすましてみるけど
(『空港日誌』より)

  • 中島みゆき版

風が強くてYSは降りない
(『空港日誌』より)

安い女と嘲笑(わら)うがいいわ
(『空港日誌』より)

羽田へと向かう道にさえ乗っていない
そんなこと 百もわかりきってるけど、でも
(『空港日誌』より)

「YS」は小型旅客機

風が強くてYSは降りない
気の毒顔で ゲートが閉まる
(『空港日誌』より)

「YS」とは、戦後初の国産旅客機「YS-11」のこと。
5~60人程度しか乗せることしかできない中型機なので、『空港日誌』の歌詞に見られる9人の乗客は、この旅客機のサイズからすれば少ない数でもないだろう。

「今夜の乗客は9人
乳飲み子児が1人 女性が2人 あとは常連客
尋ねられた名前は ありません」
(『空港日誌』より)

『空港日誌』はこんな曲

不倫関係にある男を、広島空港で待つ女。
だが、男は姿を現わさず、空港日誌にすら乗った形跡もない。
不倫を、男の妻へ暴露したい思いに駆られるなど、綺麗ごとだけでは語れない愛が描かれている。

もう一度 むくわれぬ季節があなたに来れば
迷いに抱かれて 戻って来るかと……
今日も風は 飛行機を追い返す
(『空港日誌』より)

『空港日誌』のみんなの感想

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収録アルバム

『Singles II』

1987年から1993年までのシングルを収録したコレクションアルバム第2弾。

【収録曲】
『時代』『最後の女神』『ジェラシー・ジェラシー』『兆しのシーズン』『浅い眠り』『親愛なる者へ』『誕生』『Maybe』『トーキョー迷子』『見返り美人 (2nd Version)』『with』『笑ってよエンジェル』『あした』『グッバイガール』『涙 -Made in tears-』『空港日誌』『仮面』『熱病 (2nd Version)』『御機嫌如何』『シュガー』

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⇒『Singles II』の解説&みんなの感想

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