1990年の中島みゆきのアルバム曲『with』
もともとはアルバムの中の1曲だったが、後に、山田洋次監督の映画「息子」のイメージソングに起用され、シングルカットされた。
この曲に目をつけた山田洋次の思いを対談記事から探っていこう。
この記事は、
- 『with』が映画「息子」イメージソングに起用された経緯
- 『with』を手話を交えて歌った理由
について書いてます!
中島みゆき『with』
作詞・作曲 中島みゆき
編曲 瀬尾一三
映画「息子」イメージソングに起用
イメージソングの起用でシングルカット
『with』は、1990年のアルバム『夜を往け』に収録されていた1曲だった。
1991年公開の山田洋次監督映画「息子」のイメージソングに起用され、1990年8月21日にシングルカットされた。
ちなみに、本編でこの曲は流れていない。
『with』のシングルカットは急遽決まったようだ。
1991年「月刊カドカワ」11月号の曲解説によると、ちょうど全国ツアー中にシングルの制作が行われた。
B面曲がなかったため、急いで『笑ってエンジェル』をレコーディングしたことが語られている。
きっかけは手話で歌ったコンサート
『with』は、この映画のために中島みゆきが書き下ろしたものではない。
映画「息子」の監督である山田洋次が、この曲を見出し、イメージソングに起用したのだ。
1991年「月刊カドカワ」11月号の山田洋次との対談で、このことが語られている。
映画「息子」は、東京でフリーター生活を送っていた青年(永瀬正敏)が、聴覚障がいの女性(和久井映見)と恋に落ち、実家の父親に彼女を紹介するというストーリー。
劇中、父親が酔っ払って歌を歌うシーンがあるのだが、山田の頭にふと疑問が湧いた。
「聾唖の人は歌をどう感じるのかということを、映画を作りながらずっと考えてたの」
そんな時、巡り会ったのが『with』だった。
中島みゆきが、コンサートでこの曲を手話を交えて歌っていると人づてに聞いたのだ。
「それでまあ、この曲と映画がぶつかり合うと不思議な味が出るんじゃないかと」
手話で歌う理由
1990年の「中島みゆきCONCERT TOUR ’90「Night Wings」」で、中島みゆきは『with』を手話を交えて歌っている。
なぜ、手話なのか?
これに対し、1991年「月刊カドカワ」11月号の山田洋次との対談で、以下のように答えている。
「私の場合、言葉だけで歌やってますというのでは何か物足りなさを感じたんで、使えるものなら表情でも体でも何でも使って伝えるものは伝えなきゃと……」
コミュニケーションの術を言葉だけに依存するということに、中島みゆきはかねてから違和感があったようだ。
僕のことばは意味をなさない
まるで遠い砂漠を旅してるみたいだね
(『with』より)
「中島みゆきCONCERT TOUR 2007」でも『with』は、手話を交えて歌われている。
その手の動きは「with LOVE」と伝えている。
カバーしたアーティスト
サミー・チェン
香港出身の歌手。
『薩拉熱窩的羅密歐與茱麗葉(サラエヴォのロミオとジュリエット)』というタイトルでカバーしている。
中島みゆきは、香港で『夜会VOL.6 シャングリラ』のビデオ撮影を行っている時に彼女の歌う『with』を耳にした。
1995年「月刊カドカワ」12月号のインタビューでその時のことを振り返っている。
撮影は、香港の田舎で行われ、その撮影中にポツポツ建っていた家から偶然この曲が流れてきたのだ。
中国語で歌われていたが、イントロだけですぐに分かったという。
「香港の方々が私の曲を聴いてくださってるっていうのは聞いてたんですけど、メイクして衣装着てメイの役やってるその時に、いきなり後頭部にが~んと『with』ですから」
1995年の全国ツアー「LOVE OR NOTHIG」のラスト3公演は、香港で開催された。
香港公演でのみ、中島みゆきは、中国でよく聴かれている『ルージュ』『最愛』『with』を歌っている。
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『with』はこんな曲
虚しさを埋めるようにして大切な人の名前を綴る。
意味を持たないはずの名前が、どんな言葉よりも力を帯びることがあるとこの曲は教えてくれる。
ひとりきり泣けても
ひとりきり笑うことはできない
with…そのあとへ君の名を綴っていいか
with…淋しさと虚しさと 疑いとのかわりに
(『with』より)
『with』のみんなの感想
中島みゆきさんの歌でトップ1,2を争うくらい泣かされるのが、withって曲で、「手帳にはいつも旅立ちとメモしてあるけれどwithその場所へ君の名を綴っていいかい」って歌詞がすごく好き。心の中にいる大事な誰かに対して、その人のおかげで前を向けるって気がして、そんな誰かがいることへの羨ましさ
— SSS (@SSS91814305) February 15, 2021
中島みゆきさんの「with」って曲大好きなの
ひとりきり泣けてもひとりきり笑うことはできない
のとこすんごい好き
— 千鶴 (@koganeich) December 2, 2020
“生まれる前に 僕は夢見た
誰が 僕と寒さを分かち合っていくだろう?
時の流れは 僕に教えた
皆んな 自分の事で忙しいと…”中島みゆき “with”から、詞の一節です。頭にリフレインしている、この一節だけ
…どうしてだろうね。わからないけど、とりあえず書くよ🙂— Canisius (@Canisius1221) September 26, 2020
本人映像
『歌旅 -中島みゆきコンサートツアー2007-』
2007年に行われたコンサートのライブDVD/Blu-ray。
手話を交えながら『with』が歌われている。
収録アルバム
『夜を往け』
1990年リリースのオリジナルアルバム。
- サスペンスドラマシリーズの主題歌に起用された『夜を往け』
- KDDのCMソング『あした』のアルバムバージョン
- 映画「息子」のイメージソング『with』
を含む全10曲。
【収録曲】
『夜を往け』『ふたつの炎』『3分後に捨ててもいい』『あした』『新曾根崎心中』『君の昔を』『遠雷』『ふたりは』『北の国の習い』『with』
『Singles II』
1987年から1993年までのシングルを収録したコレクションアルバム第2弾。
【収録曲】
『時代』『最後の女神』『ジェラシー・ジェラシー』『兆しのシーズン』『浅い眠り』『親愛なる者へ』『誕生』『Maybe』『トーキョー迷子』『見返り美人 (2nd Version)』『with』『笑ってよエンジェル』『あした』『グッバイガール』『涙 -Made in tears-』『空港日誌』『仮面』『熱病 (2nd Version)』『御機嫌如何』『シュガー』
『大銀幕』
『大吟醸』に続く姉妹版ベストアルバム。
全てテレビドラマや映画などで使われた曲が収録されている。
【収録曲】
『糸』『命の別名』『たかが愛』『愛情物語』『世情』『with』『私たちは春の中で』『眠らないで』『二隻の舟』『瞬きもせず』
『ここにいるよ』
2020年にリリースされたコンセプトベストアルバム。
「エール」をテーマに集められた珠玉の26曲。
【収録曲】
《エール盤》
『空と君のあいだに』『旅人のうた』『宙船 (そらふね)』『糸』『ファイト!』『ひまわり“SUNWARD”』『瞬きもせず』『泣いてもいいんだよ』『負けんもんね』『時代』『ホームにて』『空がある限り』『地上の星』
《寄り添い盤》
『アザミ嬢のララバイ』『泣きたい夜に』『愛だけを残せ』『悪女』『あした』『タクシードライバー』『with』『最後の女神』『慕情』『帰省』『たかが愛』『風の笛』『誕生』