1999年12月7日、「スーパースターライブ/中島みゆき・夜会の冒険」(NHK 衛星第2)で、「夜会」特集が放送された。
西田ひかる、木の実ナナ、竹中直人、野田秀樹、谷川俊太郎などの著名人が、中島みゆきや「夜会」について語っている。
この記事は、
- 著名人が見た中島みゆきと「夜会」
- 1989年の「夜会」から1998年の「夜会VOL.10 海嘯」までの名シーン
について書いてます!
1989年『夜会』
東京渋谷のBunkamuraシアターコクーンのホール内が映し出される。
座席数747席。
「夜会」の出発地点だ。
構成・脚本・演出を中島みゆき自身が手掛けた、コンサートでも演劇でもない言葉の実験劇場。
「夜会」では、毎回、必ず歌われる曲がある。
それが、『二隻の舟』だ。
中島みゆきが「夜会」のために初めて書き下ろした曲だ。
時流を泳ぐ海鳥たちは
むごい摂理をささやくばかり
いつかちぎれる絆 見たさに
高く 高く 高く
(『二隻の舟』より)
瀬尾一三が語る「夜会」
「夜会」のトータルプロデューサーである瀬尾一三は、「夜会」について以下のように語る。
「「夜会」ってものは、色んなところの会場でやるってことではなくて、コクーンでしかやらないその空間を利用して中島みゆきがどういうことやるのかってのが「夜会」の根本的な
ところのスタートなので」
瀬尾は、大きな意味で「夜会」はコンサートと言うが、一方で1人の主人公が歌うこの形態はないとも語っている。
1990年『夜会1990』
1990年上演。初めて映像化された「夜会」作品。
様々なシチュエーションの中の様々な女の孤独にスポットライトが当てられている。
「夜会1990」では、スーツ姿のОLに扮した中島みゆきが『Maybe』を歌っている。
これもまた、この「夜会」から生まれた曲だ。
弱気になった人たちは強いビル風に飛ばされる
私は髪をきつく結いあげて 大きなバッグを持ち直す
(『Maybe』より)
1991年『夜会VOL.3 KAN(邯鄲)TAN』
1991年上演。中国の故事「邯鄲の夢」をモチーフに、クリスマスの夜に見た夢の中で、真実の愛に気づいていく女の姿が描かれている。
幼い子から老婆までを中島みゆき1人が演じている。
「夜会VOL.3 KAN(邯鄲)TAN」では、クリスマスの夜、欲しい愛を得られず1人街を彷徨いながら『涙 -Made in tears-』が歌われる。
⇒『涙 -Made in tears-』(レコチョク試聴あり)
忘れようと心を決めたのは
ひと足の途絶えだした 公園通り
メッキだらけの
けばい茶店の隅っこは
雨やどりの女のための席ね
(『涙 -Made in tears-』より)
この「夜会」から、ストーリー性が加えられた。
1人の女が、夢の中で、恋を叶えられず老いていく一生を歩んでいくという物語だ。
パジャマ姿で歌う『LA-LA-LA』は、この「夜会」でしかお耳にかかれない曲だ。
明日 朝目覚めたら
あたしはもう消えてるわ
呼んでみても無駄なこと
その頃夜汽車は となり町
(『LA-LA-LA』より)
1992年『夜会VOL.4 金環蝕』
1992年上演。天文学と古典がクロスした斬新なストーリー。
天岩戸へと隠れてしまった天照大神と、それを舞いと歌で励まそうとするアメノウズメ。
加え、天体を観測する天文学者の3役を中島みゆきが演じている。
「夜会VOL.4 金環蝕」では、天文学者に扮した中島みゆきが『砂の船』を歌っている。
月は波に揺れて 幾百 幾千
古い熱い夢の数だけ
いま 誰もいない夜の海を
砂の船がゆく
(『砂の船』より)
西田ひかるが語る「夜会」
西田ひかるの「夜会」初体験がこの「夜会VOL.4 金環蝕」だ。
日本の歴史を探りながら、精神的な部分を追究していくこの舞台は、西田の想像していたものとはまるで違っていた。
「印象に残っているものは、裸足で足に鈴をつけて、アフリカの踊りじゃないんだけど体いっぱいで表現しているシーンですね」
西田は、中島みゆきから『きっと愛がある』という曲の提供を受けている。
あっけらかんとした曲調は、中島みゆきのイメージからはずいぶんとかけ離れていて、この多面性が、「夜会」にも反映されていると西田は語る。
その印象に残ったシーンというのが、歌と踊りで見せる『泣かないでアマテラス』だ。
地上に悲しみが尽きる日は無くても
地上に憎しみが尽きる日は無くても
それに優る笑顔が
ひとつ多くあればいい
(『泣かないでアマテラス』より)
斎藤ノブが語る「夜会」
「夜会」では、パーカッションを担当している斎藤ノブ。
ノブが思い出に挙げた「夜会」の一幕が、中島みゆき扮するアメノウズメが胸を露わにして踊るというシーン。
このシーンは、実際に日本神話に描かれていて、日本最古のストリップショーとも言われている。
中島みゆきは、美術が作ってくれた「つけ胸」を装着し、これに挑んでいる。
「オヤジギャグで、途中からみんな「厄介厄介」とか言ってたんだけど、そういう発想がぜんぜんなかったんだけども、別に厄介じゃなかったし、すごく面白かったし」
つけ胸を装着して中島みゆきが歌ったのが『真直な線』だ。
真直な線を 引いてごらん
真直な線なんて 引けやしないよ
真直な定規を たどらなきゃ…ね
(『真直な線』より)
曲の間奏で、チューブからこのつけ胸に息が吹き込まれる。
「アテンションプリーズ、なお膨らみが足りない場合には―」
つけ胸は、たちまちのうちに救命胴衣に様変わりするのだ。
1993年『夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』
1993年上演。雨月物語「浅茅が宿」がモチーフの作品。
季節ごとに、それぞれ4人の「待つ女」を中島みゆき1人が演じている。
⇒『夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』の解説&みんなの感想
木の実ナナが語る「夜会」
木の実ナナは、色で「夜会」を例える。
「色鉛筆にある色が、染め合わさっていくような。何種類の中島みゆきの色が見えてくるんだろうっていう」
詞もメロディも大好きだという木の実が挙げる「夜会」の印象的なシーンは、ハッピ姿の中島みゆきが歌う『まつりばやし』だ。
「祭りの格好してすごく可愛くてね、今までにない中島みゆきさんの面が見えたっていうか。静のみゆきちゃんと動のみゆきちゃんが一緒に見れたっていうね」
肩にまつわる 夏の終わりの 風の中
まつりばやしが 今年も近づいてくる
丁度 去年の いま頃 二人で 二階の
窓にもたれて まつりばやしを見ていたね
(『まつりばやし』より)
色とりどりの華やかなセットが主人公の孤独を際立たせていて、そのコントラストに引き込まれてしまう。
竹中直人が語る「夜会」
竹中直人は、「夜会」のパンフレットに寄稿したことが縁で「夜会」を観るようになった。
「夜会」を初めて観た竹中は、感動して思わず涙を流してしまったという。
竹中は、高校の頃から中島みゆきファンで、特に『アザミ嬢のララバイ』を好んで聴いていた。
「よく僕は本当に眠れないんですよ、夜になると」
「夜会」は、重たさの中に艶っぽさがあると語る。
「ドスンとくるっていうかね。女心の蛇のような感じというのがね」
竹中が挙げる「夜会」の印象的なシーンは、戦地にいる夫からの手紙に、思いを馳せて歌う『二隻の舟』だ。
「背中を見て歌ってる感じが好きだったな」
おまえの悲鳴が胸にきこえてくるよ
越えてゆけと叫ぶ声が ゆくてを照らすよ
(『二隻の舟』より)
小川幾雄が語る「夜会」
照明デザイナーを担当する小川幾雄は、本番とリハーサルで、その都度「夜会」の見え方が違ってくると語る。
小川が挙げる「夜会」の印象的なシーンは、鉄骨の階段を上りながら歌う『夜曲』だ。
月の光が 肩に冷たい夜には
祈りながら歌うのよ
夜にさざめく 灯りの中で
遥かにみつめつづける瞳に気づいて
(『夜曲』より)
鉄骨階段の半ばで、月光に向かって歌うシーンはやはり美しい。
1994年『夜会VOL.6 シャングリラ』
1994年上演。母親を騙し大富豪のもとへ嫁いでいった女の居所を突き止めたメイ。
メイドを装い女が暮らすシャングリラへと乗り込んでいく。
「夜会」初の完全オリジナルストーリー。
野田秀樹が語る「夜会」
「夜会」は5年目に差し掛かった頃になると、演劇関係者から一目置かれるようになった。
劇作家・演出家である野田秀樹は、「夜会」は中島みゆきだから成立すると語る。
「中島みゆきを聴きに来る人は、どっちかというと群れているんじゃなくて、1対1の関係を求めに行く。そうすると、空間的に大きくない方が、中島みゆきには合うんだろうな」
『シャングリラ』は、この「夜会」のために書き下ろされた曲だ。
シャングリラから シャングリラから
いつか迎えの馬車が来る
シャングリラには シャングリラには
幸せ者が辿り着く
(『シャングリラ』より)
1995年『夜会VOL.7 2/2』
1995年上演。恋人と暮らしていた女が二重人格を発症してしまう。
自分の幸せを許さないもう1人の自分。
その正体を突き止めるため、女は、自分のルーツを辿る旅へと出る。
「夜会」初の全曲書き下ろし。
ひれ伏しながら けして折れはせぬ
私がなりたいものはといえば
地下に根を張る あの竹林
(『竹の歌』より)
植野葉子が語る「夜会」
植野葉子は、「夜会VOL.7 2/2」で中島みゆき扮する莉花の双子の妹を演じている。
出演のオファが来た時は、プレッシャーだったと語る。
「双子の役って言われて、「え、こんなに丸い顔なのにどうしよう」とか思って、結構減量とかしてたんですけど(笑)もう図々しく姉妹になったつもりで」
劇の後半は、植野に向かって中島みゆきが歌うシーンがある。
特に、『二隻の舟』は、毎日聴きながら鳥肌が立っていたと、その時のことを振り返る。
「あれは絶対忘れないですよね」
おまえの悲鳴が胸にきこえてくるよ
越えてゆけと叫ぶ声が ゆくてを照らすよ
(『二隻の舟』より)
双子の姉妹の間にあったわだかまりが解けていく感動的なシーンで歌われた。
1996年『夜会VOL.8 問う女』
1996年上演。言葉を使い捨てる生き方に虚しさを覚えるアナウンサーの女。
日本語が話せない外国人娼婦との出会いをきっかけに、言葉と向き合い直す姿を描いている。
堀尾幸男が語る「夜会」
「夜会VOL.8 問う女」では、田んぼのあぜ道のようなセットが組まれている。
舞台美術を手掛けた堀尾幸男は、以下のように語る。
「通常は芝居ができるスペースを確保して、舞台を造形するんです。ですが、この舞台では場所をかなり限定して造形した上に乗っかってもらうという形なんです。それは通常の芝居ではありえない。みゆきさんは、その中でどこでどう歌おうかとすごく考えられる人なんですね」
中島みゆきは、思いもよらない良い位置を見つけて歌う嗅覚を持ち合わせている。
この「夜会」では、ワニの着ぐるみを被って『SMILE,SMILE』を歌う姿が印象的だ。
君の笑顔には不思議な力があると
君だけが知らない気づいていない
(『SMILE,SMILE』より)
1998年『夜会VOL.10 海嘯』
1998年上演。アメリカでレストランを経営する女は、命を懸けても果たしたい復讐があった。
その復讐のために日本行きの便に乗ったが、持病の結核が悪化し、ハワイへと緊急着陸。
収容された療養所の人々との交流を通して、自分の生き方を見つめ直していく。
「夜会VOL.10 海嘯」では、紙吹雪の中、歌われる大迫力の『紫の桜』に圧倒される。
桜 桜 20年前に
桜 桜 見たものを話せ
(『紫の桜』より)
谷川俊太郎が語る中島みゆき
詩人の谷川俊太郎は、中島みゆきが気に入ってくれているという自作の詩を披露する。
「うそとほんと」
うそはほんとによく似てる
ほんとはうそによく似てる
うそとほんとは
双生児
ほんとはうそとよくまざる
うそとほんとは
化合物
うその中にうそを探すな
ほんとの中にうそを探せ
ほんとの中にほんとを探すな
うその中にほんとを探せ
私小説的な事実と芸術作品の中の真実を簡単に分けられないという中島みゆきの気持ちが、この詩から反射して見えるという。
多くのミュージシャンが、自分の気持ちをいかに表現するかというところに力点を置く中、中島みゆきは、虚構の中で表現している。
「夜会」は、その集大成的な存在なのだと谷川は語る。
「中島さんの大きさみたいなものが、「夜会」の方ではよく見えるっていう風に思いましたけどね」
そんな谷川の望みは、中島みゆきが年老いた時の歌を聴いてみたいということ。
おばあちゃんになった中島みゆきがおばあちゃんの歌を歌う。
そこにもやはりフィクションが存在し、どう表現されるのか、今から楽しみだという。
ラストは、「夜会VOL.6 シャングリラ」で歌われた『誕生』。
娘と老いた母親の2役を中島みゆき1人で演じ、それぞれの立場でこの曲を歌い分けている。
谷川の言う「虚構」の分かりやすい形だ。
Remember 生まれた時
だれでも言われた筈
耳をすまして思い出して
最初に聞いた welcome
(『誕生』より)
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