中島みゆきのCDアルバムを購入すると、日本語の歌詞といっしょに英訳の歌詞カードがついている。
そこには、言葉にこだわる中島みゆきならではの狙いがあった。
この記事は、
- 中島みゆきのアルバムに英訳歌詞カードをつけるようになった経緯
- 翻訳家は同じシンガーソングライター
- レコーディングでも英訳の歌詞カード
英訳をつけるようになったのは1996年
中島みゆきのCDアルバムに英訳がつけられるようになったのは、1996年10月18日に発売されたアルバム『パラダイス・カフェ』からだ。
日本語の歌詞が書かれたブックレットとは別に、全曲の英訳歌詞が書かれた大判の紙が折りたたまれた状態でケースの中に入っていた。
本格的な海外進出を視野に入れているのかと思いきや、どうやらこれには別の意味があるようだ。
英訳は誤解を避けるため
中島みゆきが、アルバムに英訳の歌詞カードをつけるようになった経緯について、2004年11月12日放送の「K’s Transmission」(NACK5)の中で以下のように答えている。
みゆき「アメリカ進出の希望は全然ないんだけど、アジア圏に発売されてるんですよ。その時に、とんでもない意外な訳をされてることがあって。英語にすると主語述語がないと成立しないのね。そうすると、大間違いはしづらいの」
歌詞というのは、極力、言葉が削ぎ落されているので、その空白部分に誤解を生じることが多々ある。
2020年「ダ・ヴィンチ」3月号のインタビューの中では、以下のようにも答えている。
「私はあまり写実的な歌詞って書いてないんですよね。だから、いかようにも取れる」
もちろん人それぞれの詞への解釈に立ち入るつもりはない。
だが、大きく解釈が外れることのないように、できるおせっかいの限界が、この英訳だという。
翻訳するのはミュージシャン
2004年11月12日放送の「K’s Transmission」(NACK5)の中で、歌詞を英語へ翻訳しているのが、ニューヨークで活動しているシンガーソングライターであることを明かしている。
中島みゆきをも唸らせるくらい見事な意訳を出してくることもあるようだが、時に、こちらの意図する解釈とは外れた翻訳になっていたりもする。
例えば、2020年のアルバム『CONTRALTO』に収録されている『おはよう』という曲は、「Good Morning」と翻訳された。
だが、中島みゆきが意図していたものは挨拶ではなく、「Wake up」つまり「目を覚ませ」という掛け声なのだ。
翻訳されたものは、中島みゆきが目を通し、修正が加えられる。
このようにして、生じた誤解の隙間が埋められていくのである。
レコーディングでも英訳の歌詞カード
中島みゆきが、本格的な海外レコーディングを行ったのは1991年のアルバム『歌でしか言えない』からだ。
この頃から、海外アーティストとやり取りすることが多くなった。
1991年「月刊カドカワ」11月号のインタビューでは、『永久欠番』の歌詞を英訳し、現地のミュージシャンとイメージを共有したことが語られている。
また、1984年「GB」のインタビューによると、エンジニアのボブ・ハーランと曲のイメージを共有するために、4種類の歌詞カードが用いられたという。
- 日本語の歌詞カード
- ローマ字にした歌詞カード
- 英語に直訳した歌詞カード
- 意訳した歌詞カード
訳には翻訳家のセンスが多少なりとも入ってしまうため、偏りを生じさせないために2人の翻訳をつけて、ディスカッションしてもらうことにした。
日本語が分かる者同士ならすっ飛ばしてきた歌詞も、ボブには通用しないこともある。
それを説明するのに、日本人スタッフと1つ1つの歌詞について話し合うという徹底ぶりだ。
「もしかしてミキサーが変わるなりしたら、違う曲になると思う。歌詞も含めて」
中島みゆきが英訳にこだわるのは、言葉次第で音楽の解釈が変わってしまうということを熟知しているからだろう。
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