1975年の中島みゆきのシングル『アザミ嬢のララバイ』
中島みゆきのデビュー曲。
歌手の研ナオコが、この曲の世界観に魅了され、中島みゆきへ曲依頼するきっかけとなった。
多くのアーティストにカバーされ、テレビドラマとタイアップするなど、今もなお愛され続ける名曲だ。
創作秘話など交えて色々みていこう。
この記事は、
- 『アザミ嬢のララバイ』がデビューシングルになった経緯
- 編曲家・船山基紀がイメージした『アザミ嬢のララバイ』の世界観
- 研ナオコの中島みゆきとの出会いは『アザミ嬢のララバイ』
について書いてます!
中島みゆき『アザミ嬢のララバイ』
作詞・作曲 中島みゆき
編曲 船山基紀
中島みゆきの考える「アザミ」
春は菜の花 秋には桔梗
そうして私はいつも 夜咲く あざみ
(『アザミ嬢のララバイ』より)
「アザミ」とはキク科アザミ属の植物の総称。
7インチシングルの歌詞カードのプロフィールに、中島みゆきのアザミに対する印象が以下のように書かれている。
「一見針に包まれて強そうだが、実は菜の花や桔梗よりも弱い花なのでは?」
デビュー曲
『アザミ嬢のララバイ』がデビューシングルになった経緯
1975年5月18日に開催された「第9回ヤマハポピュラーソングコンテスト(ポプコン)」で、中島みゆきは、『傷ついた翼』を歌い、入賞を果たした。
これをきっかけに、同年9月25日、中島みゆきは『アザミ嬢のララバイ』をデビューシングルとしてリリースする。
1991年「月刊カドカワ」11月号の中で、この曲のリリースに至るまでの経緯について触れている。
通常なら、入賞曲の『傷ついた翼』をデビューシングルとしてリリースするところだが、関係者から「他にもないの?」と催促され出した『アザミ嬢のララバイ』が、採用された。
7インチシングルの歌詞カードに掲載されたプロフィールには、「レパートリー オリジナル130曲」とある。
『アザミ嬢のララバイ』は、これら多くある持ち歌の1曲だったのだ。
レコードデビュー目前というところで父親が倒れてしまい、上京できず、レコード会社が困ってしまったというエピソードも明かしている。
『アザミ嬢のララバイ』を、デビュー曲ではないと主張する人もいる。
アマチュア時代に出場した「全国フォーク音楽祭」(ニッポン放送主催)では、『あたし時々おもうの』を歌い、入賞している。
この時のライブの模様を収めた音源アルバムが1972年に、リリースされており、これを中島みゆきのデビュー曲とする見方もある。
船山基紀がイメージした世界観
『アザミ嬢のララバイ』の編曲を手掛けたのは、船山基紀。
3月7日放送の「輝き続ける中島みゆき」(BSフジ)の中で、船山は、この曲について語っている。
「アザミ嬢」というタイトルから「痛そう」という印象を抱いた船山は、このインパクトを活かすために、普段は使わないアルトフルートを用いて、世界観を演出しようとしたという。
2022年「女性セブン」2月10日号のインタビューでは、デモテープを聴いて真っ先に思い浮かべたのが北海道の草原と、その横を流れる小川。
そこに咲いているアザミの花はまだ蕾のままで、そこから生まれるミステリアスなイメージを曲に反映したという。
『アザミ嬢のララバイ』の編曲を手掛けた船山基紀は、当時、ヤマハ音楽振興会の職員で、ポプコンに集まってくる応募曲をコンテスト用にアレンジする仕事を任せられていた。
この曲以降、『時代』『悪女』など、70年代から80年代の中島みゆきの曲をいくつも手掛けている。
2000年代以降では、中島みゆきが曲提供した『宙船』『本日、未熟者』の編曲も担当している。
不安から生まれた『アザミ嬢のララバイ』の創作秘話
7インチシングルの歌詞カードに掲載されたプロフィールでは、『アザミ嬢のララバイ』を作った時の心境を以下のように振り返っている。
「去年の1月頃、不安な状態から逃げたい気持ちで作った」
また、1978年「GORO」5月25日号での作家・村上龍との対談では、この曲の歌詞のフレーズがどのように生まれたかについても言及している。
直感的に1フレーズが思いついて、そこを取っ掛かりにして全体的なイメージに広がっていくという村上の推測を肯定しつつ、以下のように述べている。
「「今夜はどこからかけてるの」って歌詞あるでしょう。あれなんかまず「電話」でピンときて、「今夜は――」っていうフレーズができて、そこから始まった。やっぱり、想像だけの歌は作れない」
1977年、「週刊現代」の記者が主催した作家や歌手の交流イベントが東京・豊島公会堂で行われた。
中島みゆきもこれに出席し、作家の中上健次と『アザミ嬢のララバイ』を披露し、2コーラス目からは村上龍がドラムで参加している。
1978年「GORO」5月25日号の対談で、村上は当時の中島みゆきへの印象を語っている。
『アザミ嬢のララバイ』の曲のイメージから、それまで「男を知り尽くした女」という先入観を持っていたが、実際目のあたりにした中島みゆきは、 トム&ジェリーのマークの入った金属製の工具箱みたいなバッグを持っていて、こんな可愛い子があんな歌を歌うのかと驚いたという。
研ナオコを魅了した曲
2004年「文芸ポスト」冬号の中で、研ナオコは、初めて中島みゆきの音楽に触れたときのことを語っている。
飛行機の席でイヤホンを耳につけたまま、まどろみに入っていたところ、機内音楽から『アザミ嬢のララバイ』が流れてきて、ハッと目が覚めたという。
この時の印象を、研ナオコは以下のように振り返っている。
「これははんなの、なに! この歌は! としか言いようのない曲が、耳に、いや、耳というより胸に響いてきて」
「初めて聴く声、初めて聴くメロディー、初めて聴く言葉……。強烈な印象、こんな曲があるんだ、という衝撃」
この衝撃は研ナオコを、「この人に曲を書いてほしい!」という気持ちへと駆り立てた。
それは、後の中島みゆきが研ナオコへ提供した曲の数々へと繋がっていく。
『アザミ嬢のララバイ』のアンサーソング
2006年、中島みゆきは『アザミ嬢のララバイ』へのアンサーソングとして『ララバイSINGER』という曲を発表している。
「ララバイ」の部分をサビに持ってきて、『アザミ嬢のララバイ』に寄せたメロディ。
「中島みゆきCONCERT TOUR 2007」の中では、『ララバイSINGER』の曲の途中で『アザミ嬢のララバイ』へ移行して歌われた。
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タイアップドラマ
「アザミ嬢のララバイ」
2010年の毎日放送制作のオムニバスドラマ。
「眠る前に見るおとぎ話」「大人向けの子守唄」というコンセプトの、犬童一心監督作品。
犬童曰く、全編に流れる女性の気持ちを歌った曲を主題歌に探していたところ、『アザミ嬢のララバイ』の存在を思い出したという。
「探偵物語」
日本テレビ系で放送された松田優作主演のドラマ。
1979年10月23日放送の第6話「失踪者の影」のオープニングで『アザミ嬢のララバイ』が流れた。
監督の西村潔が中島みゆきファンということで、起用される運びとなった。
「あぶない刑事」
日本テレビ系で放送されたドラマ。
1986年11月30日放送の第9話「迎撃」で、強盗殺人犯に追い詰められてしまった松村課長(木の実ナナ)が、覚悟を決め銃を構えながら、『アザミ嬢のララバイ』を口ずさんでいる。
これも西村潔の監督作品であり、彼の好みが反映された演出になっている。
「やすらぎの郷」
2017年に、テレビ朝日系で放送されたドラマ。
菊村栄(石坂浩二)とかつて恋仲にあった女優・安西直美。
安西の死後、彼女の孫・榊原アザミ(清野菜名)と対面することになった菊村は、安西と瓜二つの容貌に驚き言葉を失う。
次第に、その孫に惹かれ始めていくその劇中で『アザミ嬢のララバイ』が流れる。
『アザミ嬢のララバイ』はこんな曲
電話越しに慰めてくれるアザミ嬢。
静かに優しく寄り添うスタンスは、その後の曲にも多く見かける。
ララバイ 一人で眠れない夜は
ララバイ あたしを訪ねておいで
ララバイ 一人で泣いてちゃ惨めよ
ララバイ 今夜はどこからかけてるの
(『アザミ嬢のララバイ』より)
『アザミ嬢のララバイ』のみんなの感想
あとさりげなく中島みゆきがすげーなと思う歌詞はデビュー曲の「アザミ嬢のララバイ」の「今夜はどこからかけてるの」の部分ね。凡才なら電話・受話器などのワード使っちゃって平板で説明的になるところ、生きた言葉として表現しながら、電話相手に語りかけているシーンってのが、確実にわかる。
— まこりん (@wagamamakorin) February 23, 2022
中島みゆきってアザミ嬢のララバイがデビュー曲なんや。。パンチが効いてるなんてもんじゃないな
— うきえさん (@ukie_san) January 29, 2022
苦しんでる人全ての助けになりたいという思いはデビュー時からあった
アザミ嬢のララバイ
#中島みゆき— よっし〜。 (@yossypart2) January 8, 2022
カバーしたアーティスト
研ナオコ
1978年のカバーアルバム『NAOKO VS MIYUKI/研ナオコ、中島みゆきを歌う』に収録。
柏原芳恵
1983年のカバーアルバム『春なのに』に収録。
Le Couple
2015年のベストアルバム『PLATINUM BEST Le Couple&藤田恵美 〜The greatest gift〜』に収録。
清春
2019年のカバーアルバム『Covers』に収録。
工藤静香
2021年のカバーアルバム『青い炎』に収録。
BEBE
2020年のカバーアルバム『中島みゆき 弾き語り』に収録。
本人映像
『歌旅 -中島みゆきコンサートツアー2007-』
2007年に行われたコンサートのライブDVD/Blu-ray。
収録アルバム
『Singles』
デビューした1975年から1986年までのシングルを収録したコレクションアルバム第1弾。
【収録曲】
『やまねこ』『シーサイド・コーポラス』『見返り美人』『どこにいても』『あたいの夏休み』『噂』『つめたい別れ』『ショウ・タイム』『孤独の肖像』『100人目の恋人』『ひとり』『海と宝石』『あの娘』『波の上』『横恋慕』『忘れな草をもう一度』『誘惑』『やさしい女』『悪女』『笑わせるじゃないか』『あした天気になれ』『杏村から』『ひとり上手』『悲しみに』『かなしみ笑い』『霧に走る』『りばいばる』『ピエロ』『おもいで河』『ほうせんか』『わかれうた』『ホームにて』『夜風の中から』『忘れられるものならば』『こんばんわ』『強い風はいつも』『時代』『傷ついた翼』『アザミ嬢のララバイ』『さよなら さよなら』
『私の声が聞こえますか』
1976年リリースの1st.オリジナルアルバム。
- デビュー曲『アザミ嬢のララバイ』のアルバムバージョン
- 『時代』のアコースティックバージョン
を含む全12曲。
【収録曲】
『あぶな坂』『あたしのやさしい人』『信じられない頃に』『ボギーボビーの赤いバラ』『海よ』『アザミ嬢のララバイ』『踊り明かそう』『ひとり遊び』『悲しいことはいつもある』『歌をあなたに』『渚便り』『時代』
『ここにいるよ』
2020年にリリースされたコンセプトベストアルバム。
「エール」をテーマに集められた珠玉の26曲。
【収録曲】
《エール盤》
『空と君のあいだに』『旅人のうた』『宙船 (そらふね)』『糸』『ファイト!』『ひまわり“SUNWARD”』『瞬きもせず』『泣いてもいいんだよ』『負けんもんね』『時代』『ホームにて』『空がある限り』『地上の星』
《寄り添い盤》
『アザミ嬢のララバイ』『泣きたい夜に』『愛だけを残せ』『悪女』『あした』『タクシードライバー』『with』『最後の女神』『慕情』『帰省』『たかが愛』『風の笛』『誕生』
『元気ですか』
2006年のコンセプト・ベストアルバム。
「元気ですか」をテーマに集められた全12曲。
他のアーティストによるカバーアルバム版もリリースされている。
【収録曲】
『糸』『狼になりたい』『時代』『化粧』『空と君のあいだに』『「元気ですか」』『アザミ嬢のララバイ』『世情』『ファイト!』『後悔』『ヘッドライト・テールライト』『恋文』
『中島みゆき ライブ リクエスト -歌旅・縁会・一会-』
2007年、2012~2013年、2015~2016年に行われた3つのコンサートから収録されたライブアルバム。
ライブバージョンの『アザミ嬢のララバイ』を聴くことができる。
- 吉田拓郎の曲『唇をかみしめて』もカバーしている
【収録曲】
『もう桟橋に灯りは点らない』『ピアニシモ』『糸』『時代』『愛だけを残せ』『ララバイSINGER〜アザミ嬢のララバイ』『あした』『唇をかみしめて』『世情』『風の笛』『夜行』『ジョークにしないか』
『中島みゆき 2020ラスト・ツアー「結果オーライ」』
2022年にリリースされたライブアルバム。
2020年に行われた幻のラスト・ツアー「結果オーライ」の音源を収録。
ライブバージョンの『アザミ嬢のララバイ』を聴くことができる。
【収録曲】
『一期一会』『アザミ嬢のララバイ』『悪女』『浅い眠り』『糸』『ローリング』『流星』『最後の女神』『齢寿天任せ』『離郷の歌』『この世に二人だけ』『ナイトキャップ・スペシャル』『宙船(そらふね)』『あたいの夏休み』『麦の唄』『永遠の嘘をついてくれ』『慕情』『誕生』『人生の素人』『土用波』『はじめまして』
⇒『中島みゆき 2020ラスト・ツアー「結果オーライ」』の解説&みんなの感想