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中島みゆきと増井孝子の対談|1976年放送「ポプコン・アウドアンドイン」より

壁

1976年に放送された「ポプコン・アウトアンドイン」(FM大阪)に、まだデビュー間もない初々しい中島みゆきがゲスト出演している。

ファーストアルバム『私の声が聞こえますか』についてや、当時よく訪れていた京都での変わった過ごし方、中島みゆきの音楽的思考などを語っている。
司会は、映画評論家の増井孝子だ。

2人の対談をみていこう。
(※部分的に編集しています)

この記事は、

  • 『私の声が聞こえますか』の収録曲について
  • デビュー間もない中島みゆきの音楽やコンサートについての考え方
  • 中島みゆきの京都での変わった過ごし方

について書いてます!

夢おじ子
夢おじ子
中島みゆきの曲を全て聴いてきたファン歴30年以上の夢おじ子が解説!

「あどけない顔した音楽の魔女」

司会は映画評論家の増井孝子
『時代』をBGMに中島みゆきについて紹介する。

増井「「あどけない顔した音楽の魔女」。中島みゆきさんは、周りの人からこんな風に言われています。譜面、ギター、ピアノを使わずに頭の中で音階を作り、それをドレミで書き殴る独特の作曲法」

『私の声が聞こえますか』収録曲を弾き語り

ここから、中島みゆきのワンマンステージが始まる。

みゆき「今日、何してましたか? 私は、ほぼ御機嫌になんとか生きてます」

落ち着いた口調で、もうじきリリースされるファーストアルバム『私の声が聞こえますか』についてこれから弾き語りしようというのだ。
LPは、中島みゆきの誕生日に出来あがったそうで、満を持しての披露となる。

みゆき「いろんな曲があってビックリしたでしょ? あんまり傾向が違うの入れると、みんな迷っちゃうかもしれないけど、私はね、人間にはいろんな面があると思うんだよね。1つの面で捉えるのは恐ろしいことだと思うから、私の色んな面を見て、私ってものを見てちょうだい」

そう言って、『時代』を弾き語りで歌い始める。

まわるまわるよ 時代はまわる
喜び悲しみくり返し
今日は別れた恋人たちも
生まれ変わってめぐりあうよ
(『時代』より)

⇒『時代』(1976年アルバムバージョン)(レコチョク試聴あり)

⇒『時代』の記事はコチラ

「第10回ポピュラーソング・コンテスト」「第6回世界歌謡祭」でこの曲を歌い、グランプリをダブル受賞してからまだ1年も経っていない頃だ。
続いて、デビューシングル『アザミ嬢のララバイ』のエピソードを語る。

みゆき「最初のレコードは、私が知らない間に出てたんだよね」

ポプコンに出場した後、ライブレコードのLPが出て、その後シングルカットされるというのが定番のコース。
『アザミ嬢のララバイ』は、当初は、B面用に歌った曲だったが、後にこれがA面になったことを知る。
初めて世に出したレコードは、やはり中島みゆきにとっても特別だ。

みゆき「テスト版もらって帰って喜んだんだけどね」

「イメージが狂う元となった」と、この曲の別の側面についても語る。

デビュー前の中島みゆきは、コンテストの傾向を多少意識して明るめの曲を選んで歌っていた。
暗めの曲は、デビュー後に少しずつ出していこうという計算があったようだが、のっけから『アザミ嬢のララバイ』というのは誤算だった。
コンテストでの中島みゆきしか知らない人にとっては、イメージからかけ離れた曲に聞こえただろう。

そんなことを、ギターのチューニングを合わせながら話す。

みゆき「私は、ステージで間違えることや忘れること、チューニングが狂うことはしょっちゅうでね、弾きながらチューニングするっていうのは度々で」

それから例の『アザミ嬢のララバイ』を歌い始める。

ララバイ ひとりで眠れない夜は
ララバイ あたしをたずねておいで
ララバイ ひとりで泣いてちゃみじめよ
ララバイ 今夜はどこからかけてるの
(『アザミ嬢のララバイ』より)

⇒『アザミ嬢のララバイ』(アルバムバージョン)(レコチョク試聴あり)

⇒『アザミ嬢のララバイ』の記事はコチラ

『私の声が聞こえますか』に収録されているものは、アルバムバージョンだ。

みゆき「シングルの時とはアレンジが違ってるんだけれども、これは、ギター1本でやってた時のアレンジにそっくりなものを入れたのね」

中島みゆきにとって、このアルバムバージョンの方がオリジナルという認識かもしれない。

続いての曲は、リリースされたばかりのシングル『こんばんわ』だ。

こんばんわ 久しぶりね どうにか無事でいるようね
どうしたの 知らん人を 見るような眼をしてさ
(『こんばんわ』より)

⇒『こんばんわ』(レコチョク試聴あり)

ここで、司会の増井孝子が登場する。

増井「いいですねぇ、全然レコードと感じが違うけど、私はむしろギター1本のそういうみゆきさんが好きだなあ」
みゆき「どうもぉ。ステージはギター1本なんですけどねぇ」
増井「ホントに? じゃ今度ぜひ、夜のステージを拝見しに行かなくちゃと思いますけど」

中島みゆきの歌を分類

世間では、中島みゆきの歌を以下の3つに分類しているらしい。

  1. 怨歌(人間の怨念を歌った曲)
  2. メッセージソング
  3. みんなで口ずさめる歌

増井「自分で分けて作曲しているんですか?」
みゆき「いえ、そういう風に私、音楽的学問ないですから、そんな器用に分けるほどの技術はないです(笑)」
増井「いろいろ作ったらなんとなく3つに分かれたということ?」
みゆき「はたからみたらそういう風に見えるんじゃないですか?」
増井「現在オリジナル曲が130曲」
みゆき「そうですね」
増井「すごいわねぇ。ちょっと出来てるのも含めると500か600くらいあるんだって?」
みゆき「ちょっと出来てるくらいじゃ人前で出せないですからねぇ」

各々のパーツが、時間をかけて繋がっていき1つの曲を形成していくというこの作曲法は、未だ変わっていない。

グランプリ受賞後の生活

この放送より半年ほど前に、「第6回世界歌謡祭」に出場し、『時代』を歌い、グランプリを受賞している。
受賞後、生活はどう変わったのだろうか?

みゆき「物理的には、あっち走ったり、こっち走ったりっていう体の忙しさはありますけどね、ものの考え方とは全然変わんないですね」

中島みゆきが目指すコンサート

増井「どんなステージをやってみたいと思いますか?」
みゆき「私はね、一方的なステージってのは嫌いなのね。だから、対話のできるコンサートってのを小さくでいいから積み上げていきたいのね」

このスタンスは今も変わらない。
言葉の実験劇場である「夜会」をスタートさせた時も、観客との距離感を大切にし、シアターコクーンというあえて小さな劇場を選んだのだ。

みゆき「ステージで、「ね?」って言ったら、「そう」だとか「そうじゃない」とか言ってくれる気配が感じられる距離に人にいて欲しいな」
増井「一番記憶にあったステージって何ですか?」
みゆき「3年くらい前に、大学のね、ちょっとした階段教室みたいなとこで、明かりを消して、すごいボロっちいとこでしたけどね、そこでやったコンサートがわりと思い出に残っています」

京都での変わった過ごし方

増井「東京から札幌に帰る時に、京都経由で帰るんですって?」

当時、中島みゆきは、まだ札幌に住んでいて、そこから仕事のたびに東京へ出てきていた。
その帰り道に立ち寄る場所が、なぜ、京都なのか?

増井「京都が好きだから?」
みゆき「頭が休まるんですよね、旅先でいえば。私は札幌住んでるから、やっぱり札幌が肌に合って好きですけどね。旅先にいて気分を休めるって意味で、京都の壁を見てるのが好きなんですよ」
増井「壁? 壁なんて別に京都行かなくてもいいんじゃない?(笑)」
みゆき「京都まで行くと、そこらじゅうに壁があるからね。だから、アホみたいにジッと壁見ている人いたら、私ですから(笑)」

特別な壁という訳でなく、何でもないような普通の壁で事足りるようだ。

みゆき「デザインされたものとか、そういうの見てるのもいいんですけどね、それだと頭休まんないからね。空とか、プラスチックとかでもいいし、何にもないところを見てるのが好きなんです」

これには増井孝子も理解が及ばないようだ。
一風変わったこの癖は、幼い頃からだという。

みゆき「幼稚園に通ってた時にね、角を曲がって帰ってる時に、姿が見えるところから家まで2時間かかるんだって」
増井「何してるワケ?」
みゆき「空見たり、石見てたりしてんだって」

伝聞の形で語っているのは、おそらく成長した時に、後で親からその話を聞いたのだろう。

増井「空見ても石見ても何かが得られるっていうのは、かなり哲学的ね」
みゆき「と思うでしょ? 空を見て何か考えてるように見えるでしょ? じゃないの。何も考えないで空見てるからね」
増井「じゃ、小さい頃から仲間を集めて遊ぶっていうんじゃなくて、1人で遊んでたワケ?」
みゆき「あんまり器用に仲間に入れなかったですね。女の子っていったら徒党を組むでしょ? あれになかなか入れなくてね。何て声をかけたらグループに入れてもらえるか分かんなくて、おたおたしてるうちに通り過ぎていったりね。だんだんそれが繰り返されると、声かけても入れなかったらどうしようって思っちゃうの」

『私の声が聞こえますか』

1976年リリースの1st.オリジナルアルバム。

  • デビュー曲『アザミ嬢のララバイ』のアルバムバージョン
  • 『時代』のアコースティックバージョン

を含む全12曲。

【収録曲】
『あぶな坂』『あたしのやさしい人』『信じられない頃に』『ボギーボビーの赤いバラ』『海よ』『アザミ嬢のララバイ』『踊り明かそう』『ひとり遊び』『悲しいことはいつもある』『歌をあなたに』『渚便り』『時代』

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