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『中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』』に収録された曲に込められた想い|2016年11月10日放送NHK「SONGS」より

前途

2016年11月10日、ベストアルバム『中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』』の特集が「SONGS」(NHK)で放送された。
それぞれの曲に込められた中島みゆきの思いが、満島ひかりのナレーションによって語られている。

この記事は、

  • 満島ひかりが思う中島みゆき
  • 中島みゆきの声のメッセージ
  • 各曲にまつわる中島みゆきの思い
  • 「前途」へ込めた思い

について書いてます!

夢おじ子
夢おじ子
中島みゆきの曲を全て聴いてきたファン歴30年以上の夢おじ子が解説!

満島ひかりが思う中島みゆき

満島ひかりのナレーションでお送りする今回の「SONGS」

冒頭は、2010年に放送されたCMが流れる。
満島ひかりが、学校のグラウンドに立ち、校舎に向かって『ファイト!』を歌う。

「ぎりぎり持ちこたえている人の背中をふわっと風を吹かせて立ち上がらせる」

そんなコンセプトのCMだったようだ。

「中島みゆきはどうしてこんな曲が作れるのか?」

満島ひかりは、ずっとそう思っていた。

2016年、ベストアルバム『中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』』がリリース。
その中で、中島みゆきは、自身の創作ノートを明かしている。

2002年、中島みゆきは初の紅白歌合戦への出場を果たした。
黒部川第四発電所地下道から歌った『地上の星』は、日本の歴史を築いた無名の人々に光を当てたドキュメンタリー番組「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」(NHK)の主題歌であった。

つばめよ 高い空から教えてよ
地上の星を
つばめよ 地上の星は
今 何処にあるのだろう
(『地上の星』より)

この曲の着想について、中島みゆきは以下のように振り返っている。

「無名の人々に「光を当てる」なんてできない。光を放っているのはこの人々自身だったから」

2012年に発表された『倒木の敗者復活戦』は、東北の応援歌ではないかとファンの間で囁かれた。

傷から芽を出せ 倒木の復活戦
(『倒木の敗者復活戦』より)

これについて中島みゆきは、以下のように答えている。

「「倒木」が「東北」として受け入れられるのも、それはそれで否定するまでもないと考えている」

2015年に発表された『Why & No』は、本音を隠して当たり障りのない無難な方へ流れていく心理を歌っている。

言えばいいじゃんいいじゃん「ことわる」ってね
言えばいいじゃんいいじゃん「Why & No & No」
(『Why & No』より)

これについて中島みゆきは、以下のように語る。

「結局、ええカッコしいだから言えなかったのだということを書く」

中島みゆきの声のメッセージ

中島みゆきから番組宛てに、以下の声のメッセージが届いた。

お元気ですか?
中島みゆきです。

たまには「ベスト~!」と真っ向から名乗ってみるのもどうかしらという話がまとまりまして。
「で、どれを?」と考えても、自分では一応「どの曲もそれなりに良いわ」と思っていますので選べなくって。

何を基準に絞ったかというと、私がライナーノーツを書きやすそうな曲という基準で、ええ、実はそんな訳で決まりました。

『地上の星』

⇒『地上の星』(レコチョク試聴あり)

『地上の星』は、2000年代に入って中島みゆきが初めてリリースした曲だった。
2000年から放送されたドキュメンタリー番組「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」(NHK)のために書き下ろされた。

この曲が歌われた2002年の紅白歌合戦の舞台裏が初公開される。
現地入りした中島みゆきがバスから瀬尾一三らと共に降りて来る貴重な映像だ。
ノーメイクの赤いヘルメットを被った中島みゆきが、大勢のスタッフらと共にインクラインに乗り込んでいく。

一行が向かう先は、黒部川第四発電。
このトンネル内で中島みゆきが歌うことになっている。
数分間の生中継のために、総勢100名ものスタッフが携わっているのだ。

この曲について、ライナーノーツには以下のように綴られている。

「無名の人々に光をあててください」というのがNHKからの唯一の注文でした。

分厚い企画書には、懸命に生きた無名の人々の記録。
目を凝らして気づいたのは、この人々に「光を当てる」なんで出来ないということでした。
光を放っているのは、まさに、この人々自身だったからです。

心から敬意を込めて、「地上の星」と名付けました。

紅白の本番直前、黒部川第四発電のトンネル内にカウントが響く。
「5秒前!」
カメラを前に、ワインレッドのドレスを着た中島みゆきがスタンバイしている。

風の中のすばる
砂の中の銀河
みんな何処へ行った
見送られることもなく
(『地上の星』より)

⇒『地上の星』の記事はコチラ

『銀の龍の背に乗って』

⇒『銀の龍の背に乗って』(レコチョク試聴あり)

紅白へ出場した翌年の2003年、中島みゆきはドラマ「Dr.コトー診療所」(フジテレビ系)の主題歌『銀の龍の背に乗って』を発表する。

沖縄の離島の診療所へ着任した五島健介(吉岡秀隆)が、限られた医療資源で島民たちの命を救っていく姿を描いたドラマだ。

中島みゆきは、この曲を書く上で、医師という仕事について見つめ直した。

医者という仕事はなんという孤独で心細いものだろうかと、痛々しく思える時があるのです。
たった1人で命に直面する重責の孤独。
せめてもの援護をしてくれるようにと、命の水の化身であるところの龍に頼みごとをしたかったのです。


銀の龍の背に乗って 届けに行こう 命の砂漠へ

銀の龍の背に乗って 運んで行こう 雨雲の渦を
(『銀の龍の背に乗って』より)

中島みゆきの父親は産婦人科医だった。
幼い頃から命の現場に近いところで暮らしていたせいか、歌詞にも説得力がある。

⇒『銀の龍の背に乗って』の記事はコチラ

『宙船(そらふね)』

⇒『宙船(そらふね)』(レコチョク試聴あり)

2006年にTOKIOへ提供された『宙船(そらふね)』
ドラマ「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」(日本テレビ系)の主題歌に起用され、週間オリコンチャート1位、9週連続トップ10入りするというTOKIOにとっての代表曲となった。

お話をいただいた時には、期待が盛り上がってしまいまして、到底自分では歌えなさそうな勢いの「がっつり系」に仕上がってしまいました。
私は自分のコンサートで歌おうとして、早口部分で挫折しました。

中島みゆきは、コンサートの中でこの曲をコーラスの宮下文一とデュエットしている。
TOKIOに渡されたデモテープはこの宮下の声で吹き込まれていたのだ。

その船を漕いでゆけ おまえの手で漕いでゆけ
おまえが消えて喜ぶ者に おまえのオールをまかせるな
(『宙船(そらふね)』より)

⇒『宙船(そらふね)』の記事はコチラ

『倒木の敗者復活戦』

⇒『倒木の敗者復活戦』(レコチョク試聴あり)

東日本大震災が起きた翌年、中島みゆきが発表した歌が反響を呼んだ。
それが、『倒木の敗者復活戦』だ。

傷から芽を出せ 倒木の復活戦
(『倒木の敗者復活戦』より)

「倒木」「東北」と捉える人が多くいて、この曲が東北の応援歌だという説が生まれた。
これに対し中島みゆきは、以下のように答えている。

あまりにも悲惨だった東日本大震災は、私の作品に於いても、発表を控えたり、表現を変更せざるを得ない事態が、いくつか起きた。

そんな中で、逆にこの曲の「倒木の」が「東北の」と、聞き取れるとして、受け入れていただく結果になったのも、大震災の影響の一つであったと思われるが、それはそれで否定するまでもないと考えている。

⇒『倒木の敗者復活戦』の記事はコチラ

『India Goose』

⇒『India Goose』(レコチョク試聴あり)

2014年に上演された「夜会VOL.18 橋の下のアルカディア」のために書き下ろされた曲。
「India Goose」とは、インドやモンゴルを行き来する渡り鳥で、ヒマラヤ山脈を飛び越える姿がこの曲には描かれている。

ヒマラヤの高峰には、吹きおろす風に向かってひたすら飛び続けるうちに、運が良ければ煽られて、つまり「すっとばされて」ようやく峰を越えて行ける、小さな渡り鳥たちが、羽ばたき続けているそうな。

てんでサマにならない、そんな飛び方だって、美しい渡り鳥だと思います。

飛びたて 飛びたて 戻る場所はもうない
飛びたて 飛びたて 夜の中へ
(『India Goose』より)

『Why & No』

⇒『Why & No』(レコチョク試聴あり)

何かのタイアップ曲という訳ではないが、この曲の説明を聞くと、中島みゆきの創作の原点が見えてきそうな気がする。

いいたい放題、とんでもなくずぶとい人間と見えるタイプです。
でも実際はとんでもなくアガリ性です。
即座に何か言い返すなんてことが出来たなら、人生ずいぶん違っていたでしょう。

言えなかったから。
でも言えばよかったから。
後になって書く。

言えなかったのが自分のせいだということを、書く。
結局、ええカッコしいだから言えなかったのだということを、書く。

その場しのぎのお愛想は もうたくさんだ
もしかしたら世の中が正しいものかもしれないなんて
”正しい他人”なんて あるもんか
(『Why & No』より)

『麦の唄』

⇒『麦の唄』(レコチョク試聴あり)

2014年に放送された連続テレビ小説「マッサン」(NHK)の主題歌として書き下ろした曲。

この曲で、中島みゆきは12年ぶりに2度目の紅白出場を果たしている。
スタジオで大スクリーンに映したドラマのハイライトシーンをバックに歌い上げる。
ラストはドラマの主役の玉山鉄二シャーロット・ケイト・フォックスと3人で握手を交わし、話題になった。

麦に翼はなくても 歌に翼があるのなら
伝えておくれ故郷へ ここで生きてゆくと
麦は泣き 麦は咲き 明日へ育ってゆく
(『麦の唄』より)

⇒『麦の唄』の記事はコチラ

「前途」というタイトルに込めた思い

2016年、ベストアルバム『中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』』がリリースされた。

「前途」

この言葉には、どんな思いが託されているのだろうか?
中島みゆきは、以下のように語っている。

「前途洋々」とか「前途多難」とかいう風に使われますが、地球環境やら世界経済やら民族問題やらを考えると、人類は、なかなかの「前途多難」とも見えますし、とはいえ、それらの問題にも打つ手がなんにもないわけではないと考えると、人類はなかなかの「前途洋々」とも見えるではございませんか。

どちらにしても過ぎたときには戻れないことだけは、みんなに平等なんですよねぇ。

あのぅ、余談ですけど、私は何をやってもトロいタチでして、あれもしようこれもしようと思いながら毎日間に合わなかった用事が残るんです。
これが日を追うごとにうず高く積もっていきまして、先へと進めば進むほどなぜか忙しくなっていく。
つまり私の人生は、いってみれば「前途多忙」ということになっておるわけです。

『中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』』

2016年リリースのベストアルバム。
2000年以降の曲からセレクトされた珠玉の全12曲。

【収録曲】
『銀の龍の背に乗って』『地上の星』『泣いてもいいんだよ』『常夜灯』『Nobody Is Right』『宙船 (そらふね)』『倒木の敗者復活戦』『Why & No』『India Goose』『産声』『麦の唄』『ヘッドライト・テールライト』

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⇒『中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』』の解説&みんなの感想

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