アルバム

中島みゆきのアルバム『36.5℃』の曲解説&みんなの感想|タイトルの意味とは?|ジャケットの手は誰?

夜景

1986年11月12日に発売された14作目のオリジナルアルバム
『36.5℃』
をみていこう。

『36.5℃』の特徴

 

『36.5℃』(レコチョク試聴あり)

甲斐バンドを解散したばかりの甲斐よしひろをプロデューサーに迎え入れ制作。

アルバムの宣伝コピーは「愛が、あぶない」。

週間オリコンチャート1位(CD)を獲得。

1986年「婦人公論」12月号の田家秀樹の手記によると、1980年代に入り、音楽やメロディだけではない「音」が重要な要素となり、音にこだわった中島みゆきはニューヨークへ飛び、そこで約1カ月をかけてこのアルバムのレコーディングに臨んでいる。

ダイアナ・ロスやヒューイ・ルイスなどを手掛けていた売れっ子エンジニアのラリー・アレキサンダーも加わり、音が作られていった。

音楽の方向性を模索していたいわゆる「御乱心の時代」の産物でもあるアルバムだ。

1991年「月刊カドカワ」の中で中島みゆきは、このレコーディングを通じてサウンド作りをいろいろ教わったと語っている。

甲斐よしひろは自分で納得しない音は一切入れず、どうやってその音が出来たのか一から知ろうとしたという。

「36.5℃」というタイトルの意味

「36.5℃」

ラジオ番組でこのタイトルについて、甲斐よしひろと中島みゆきの体温を足して2で割った温度という風に語っているが、1986年「婦人公論」12月号の田家秀樹との対談の中では以下のように答えている。

「普通に生きてるのに一番ギリギリの体温。それ以上高くても低くても生きるにはつらいことになるわけですよね」

「このLPを作ろうとしている時のアタシの気持ちが、肩に力を入れてファイティングポーズをとって38度まで熱をあげてるわけでも、無理に34度まで下げてるわけでもない。人が何というか知れないけど、アタシはここなんだ」

そんな意味がこのタイトルには込められているのだ。

ジャケットの手は誰?

『36.5℃』のジャケットに写っている男女の手は、中島みゆきと甲斐よしひろの手。

第2のデビューアルバム

『36.5℃』の制作の中で、中島みゆきは自分の音への甘さを思い知らされたという。

音について今まで人任せにしてきたということがよく分かり、もういちど音楽を勉強し直さなきゃいけないという気持ちが沸いた。

「デビューアルバムみたいな気分ですよ」

1986年「婦人公論」12月号の対談で、中島みゆきはこのように語っている。

「今回みたいなやり方を始めると、これまで、数百っていうストックがあったんですけど、全部パァ、ですものね」

とも。

『36.5℃』のみんなの感想

曲解説

『あたいの夏休み』

『あたいの夏休み』(レコチョク試聴あり)

1986年6月5日にシングルリリースされた曲だが、こちらはリミックス違いのアルバムバージョン。

この曲には、『つめたい別れ』にも携わったスティービー・ワンダーがシンセサイザーで参加している。

歌詞解釈

夏休みをエンジョイする人々をカーテンの陰でジッと見つめている女。

この女はというと冴えない夏休みを過ごしていた。

「週刊誌読んでやって来れば数珠つなぎ
 冷めたスープ放り投げるように飲まされて
 2段ベッドでも あたいの夏休み」

だが、今年はみじめな夏を過ごしたくない。

一発大逆転を狙っている。

「Summer vacation あたいのために
 Summer vacation 夏 翻れ」

レース
中島みゆき『あたいの夏休み』の「冷めたスープ」は中島みゆきの好物?1986年6月5日に発売されたシングル曲 『あたいの夏休み』 をみていこう。 中島みゆき『あたいの夏休み』 『あたいの夏休み』(...

『最悪』

『最悪』(レコチョク試聴あり)

ジブリ音楽でおなじみの久石譲が編曲を手掛けている。

ドラムの音がビシバシ、「Brandy night」という横文字の歌詞、ロックど真ん中といった曲だ。

歌詞解釈

歌詞に登場する「Brandy」とはブランデーのこと。

ブランデーを飲みすぎて酔ってフラれて帰ってきた男の気持ちを歌っている。

ロック色の強い曲だが、酒と失恋というセットはこれまでの中島みゆき路線を踏襲している。

主人公のこの男は歌手らしく、なにが「最悪」かといったら、フラれて酔った夜に、家のドアを開けたら、うっかりつけっ放しのラジオから、

「Brandy night あいつのために歌った歌が
 Brandy night ちょうど流れて来たりしたら
 最悪だ」

まあ、仮定の話だけど。

『F.O.』

『F.O.』(レコチョク試聴あり)

先の『最悪』といい、この曲といい、この頃の中島みゆきの曲の中には「僕」という男の一人称がよく登場する。

この頃の田家秀樹の対談では、男の捉え方が変化してきたことを語っている。

「男が悪いから女がこんなに弱くて悲しいっていうパターンがあったでしょ。男は敵だったから(笑)。加害者だったでしょ。でも、それは女にとってラクなことなのよね。本当は女が責任をとろうと思ったら、男のいたみをわからないと、女としても責任とれないわけでしょ。そこは、変わってきたかもしれない」

男の気持ちを理解しようとするフシがこの曲からも窺える。

歌詞解釈

「F.O.」とは「フェイドアウト」という音楽や映像の業界用語で、段々と音や映像が薄れていき最終的に消えてしまう演出を意味する。

これに対局の位置にあるのが、「C.O.(カットアウト)」

音や映像をいきなりぶった切る手法

理想の別れ方までが男と女で一致しないというのもなかなかツラい。

「僕の望みはフェイドアウト
 君の望みはカットアウト
 ますます冷める 恋心」

『毒をんな』

『毒をんな』(レコチョク試聴あり)

リリース当時、名古屋のとあるカラオケパブのショータイムでは、この曲をBGMにお面と黒いマントを身につけた男たちが踊るというパフォーマンスが催されていたらしい。

詞&サウンドともに退廃的な世界である。

歌詞解釈

テキトーな男で繋いでいく酒場のママ(あるいは娼婦?)とおぼしき女が描かれている。

この女、過去にはこんな初々しい恋をしていた。

「未明の埠頭を歩いたよね手も握らずに歩いたよね」

だが、それは昔の話。

今となっては、男を金を巻き上げる対象としか見ていない。

「この人間たちの吹きだまりには
 蓮の花も咲きはせぬ」

人生を諦めているように見えるが心は叫んでいる。

「助けてくださいとレースペーパーに1000回血で書いた手紙」

『シーサイド・コーポラス』

『シーサイド・コーポラス』(レコチョク試聴あり)

1分31秒という中島みゆきの中では尺の短い曲。

後にシングル『やまねこ』のB面曲としてシングルカットされるが、シングル版では2番の歌詞が追加されている。

ギターの弾き語りで原点であるフォークの中島みゆきを踏襲した1曲。

「コーポラス」とは集合住宅という意味で、アパートの名称によく用いられる。

実際、「シーサイド・コーポラス」という名前のアパートは存在しているため、どっかで通りかかった「シーサイド・コーポラス」の前で中島みゆきはこの曲を閃いたのでは?と勝手に推測。

歌詞解釈

「シーサイド」とは海岸を指す。

海に面したコーポラス(集合住宅)とその港や人などを描くことでノスタルジー溢れる街の風景が目に浮かぶ。

「いじめっ小僧はいつも 一人きりで遊ぶのが嫌い
 昼寝犬に石をぶつけて 吠えたてられても
 シーサイド・コーポラス 小ねずみ 駆け抜ける
 港はいつも魚の脂の匂い」

『やまねこ』

『やまねこ』(レコチョク試聴あり)

このアルバムからわずか9日後にシングルカットされリリースされた曲。

「毒を歌ったという曲もずいぶんありましたよね?」というこのアルバムについての質問に「そうです」と頷いた中島みゆき。

これまでも町内会のおばちゃんに縁談を勧められたことがあったが、このアルバムで毒を歌うにあたって覚悟を決めたようだ、

「もう、こういうものを出すと、見合いはあきらめました(笑)」

『やまねこ』もまた、見合いをあきらめざるをえなかった1曲であることは言うまでもない。

歌詞解釈

愛すると傷つけるは紙一重。

傷つけず愛せず臆病になっている女心を描いている。

「ああ めぐり逢えても
 傷つけずに愛せなくて 愛したくて
 怯えている夜」

『HALF』

『HALF』(レコチョク試聴あり)

バラードではあるがロックの要素も交じったまた新しいカタチ。

詞の世界観は、後の夜会のテーマへの布石か?

歌詞解釈

「HALF」とは半分という意。

人を好きになるときに懐かしさを感じたりすることがあるが、中島みゆきはその感情を輪廻の中に落とし込んでいる。

人は、足りない魂の半分を探し求めて壮大な輪廻転生の旅をしているらしい。

「傷つけ傷つく苦い旅の中で 私あなたのこと思い出したわ
 次に生まれて来る時は めぐり会おうと誓ったね
 次に生まれて来る時は 離れないよと誓ったね」

『見返り美人』

『見返り美人』(レコチョク試聴あり)

1986年9月21日にシングルリリースされた曲だが、こちらはアルバムバージョン。

シングルとは違いマイルドな歌い方。

中森明菜に提供される予定の曲だったというが。

歌詞解釈

失恋してすさんでいく女を描いた曲。

「アヴェ・マリアでも 呟きながら
 私 別人 変わってあげる
 見まごうばかり 変わってあげる」

別れた男を見返すしたたかさが感じられる一方で、

「いいの いいの 誰でも いいの
 あいつでなけりゃ 心は砂漠」

心が揺れるのは失恋においてもありがちな心理状態だ。

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『白鳥の歌が聴こえる』

『白鳥の歌が聴こえる』(レコチョク試聴あり)

1987年8月21日に発売されたCDV『中島みゆき CDV GOLD』には別バージョンの『白鳥の歌が聴こえる』が収録されているのが、こちらはすでに廃盤となっており入手困難。

「中島みゆきのオールナイトニッポン」の最終回ラストの曲を飾ったのがこの曲。

歌詞解釈

「海からかぞえて三番目の倉庫では
 NOを言わない女に逢える」

NOを言わない女というのは港の倉庫で春を売っている娼婦のこと。

白鳥の歌とは何か?

中島みゆきの短篇小説の中では、このような記述がある。

「一生の最後に放つ言葉を白鳥の歌という」

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