「中島みゆき」と「少女漫画」は、まったく住む世界が違う結びつかない2つであるが、実は中島みゆきは少女漫画を好んで読むらしい。
1992年『月刊カドカワ』11月号の中で、中島みゆきは漫画家の一条ゆかりと対談している。
いったいどんなことを話したというのか?
一条ゆかりとは?
漫画や少女漫画に疎い私ですら「一条ゆかり」という名前だけは知っている。
『有閑倶楽部』『砂の城』などの代表作は、ドラマ化されるほど人気を博した。
1986年には『有閑倶楽部』で第10回講談社漫画賞少女部門受賞。
2007年には『プライド』で第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。
少女漫画界の大先生という位置づけだ。
中島みゆきと少女漫画
一方、中島みゆきはというと、『プチコミック』1978年9月号のインタビューの中で、
「少女漫画を読むようになったのは小学校の頃」
と答えている。
中島みゆきは大島弓子が好き
特に、大島弓子の作品を好んでいるらしく、『雨の音がきこえる』を何度も読むたびに涙するというエピソードが語られている。
雑誌『CREA』1992年9月号では、好きな少女漫画ベスト10の1つに大島弓子『綿の国星』を挙げている(他には、逢坂みえ子の『永遠の野原』や佐々木倫子『動物のお医者さん』も挙げている)。
「私と大島さんの作品って、周波数があうんですよね」
とインタビューでは答えているので、中島みゆきのルーツを知りたいならぜひとも読んでおきたい作品である。
中島みゆきはさくらももこも好き
そして中島みゆきは、さくらももこの作品も好んで読んでいる。
これについては、1990年『月刊カドカワ』6月号でのさくらももことの対談で明らかにされている。
月刊の『りぼん』の中で『ちびまる子ちゃん』を読み、その思いきりのよさとテンポ感に中島みゆきは魅かれたのだ。
ということで中島みゆきと少女漫画が切っても切れない関係であることがお分かりいただけただろうか?
そんな彼女がいったい一条ゆかりとどんなことを話したのか気になるところだ。


中島みゆきと一条ゆかりの対談
水ようかん売り切れてました
中島みゆきは一条ゆかりにおすすめの水ようかんを持参するつもりだったが、売り切れのためにそれが叶わなかったことを詫びている。
ちなみに、中島みゆきは甘党。
レストランで食事を決める時は、最後のデザートを先に決めて、そこからメインディッシュの内容を決めていくという豆知識も、いちお。
一条ゆかりの中島みゆきへの疑問
一条ゆかりはずっと中島みゆきに訊きたかったことがあるようだ。
中島みゆきが他のアーティストに曲を提供する時
一条ゆかりの疑問とは、自分の作った曲を他のアーティストに渡すとき惜しくないのだろうか?ということだ。
中島はそれに対し、
「ありますよ」
とズバと言い切っている。
中島みゆきが人に渡す曲と渡さない曲の基準は、「歌いやすさ」にあるそうだ。
自分が歌いやすい曲は先にキープしておき、それ以外をよそに渡すことにしている。
だが、色々と向こう側の事情もあるらしく、そのアーティストの音域やイメージ戦略などディレクターの注文を聞き入れながらその辺の取捨選択は行っているらしい。
曲と詞はどっちが先?
中島みゆきは曲を作る時に、曲と歌詞、どっちが先に生まれてくるのだろう?
これについては福山雅治との対談でも語っているように、中島みゆきはいちどに曲を書き上げることはない。
曲にしろ歌詞にしろ、これまでストックしておいたパーツパーツを繋ぎ合わせてやがて1つの楽曲の形ができていく
それが中島みゆき流作曲法。
一条「ジグソーパズルみたいな作り方なのかしら?」
中島「そんなもんですよね」

「似る」ことは歌でも漫画でもある
曲は限られた音の組み合わせにすぎないと語る中島みゆき。
だから、それがどこかの誰かの曲と似ている場合、「すっごく恥ずかしいよなって思う」と中島。
中島は、自分が書いた歌詞について過去に
「私の日記帳勝手に読んだな。
著作権料よこせ」
という手紙がくるなど言いがかりをつけられたことがあったという。
これについては、一条ゆかりも似た経験があった。
この世の全ての漫画を読んでるわけではないので、自分の書いた作品がどこかの誰かの作品と似かよることがたまにある。
よその作家のファンからのクレームの手紙がきたりすることが度々あったという。
だが、
「なんだか腹が立ってきて」
「もういいや、好きに描いてやる!」
そんな感じで一条はあるところで吹っ切れたのである。
中島みゆきだってサボりたい時がある
一条ゆかりはかつて徳永英明のコンサートに密着取材したことがあった。
「見てるだけで疲れちゃった」
歌手の苦労を感じたという。
中島「私もサボりたいって思ったことかつてありました(笑)」
ツアーの最中、寝起きにそんなことを思うことがあったらしい。
だからといって中島も一条も替えが効かない仕事。
中島「そういう時はマネージャーに当たり散らす、むしる、苛める(笑)」
そんな時の備えにはマネージャーなのか。
ご飯が作れない中島みゆきと作れる一条ゆかり
話題は料理の話になり、一条ゆかりはアシスタントにご飯をつくってあげるほど料理の腕があるらしい。
一方、中島みゆきはというと、
「私、ごはん作れないもん」
言い切った。
見てくれをなんとかすると味があららという感じになり、味をなんとかすると今度は見てくれが……という感じなのだ。
福山雅治の対談のときにも料理の話は出ていた。
当初予定していた料理が完成を遂げると別の料理になってしまっているということを語っている。
よっぽどなのだろうか。
一条ゆかりの方は味の好き嫌いが激しく、それで自分の好みの味付けになるように料理を始めたのだそうだ。
6人兄弟の大所帯で育ち、味の要望を聞き入れられなかったのも背景にあるみたい。
年齢の話
中島「ところでもしかして、同じくらいの年齢じゃないですか?」
一条ゆかりは1949年生まれ。
中島みゆきは1952年生まれ。
一条ゆかりの方が3歳上だが、同世代ということになる。
一条は、29歳くらいまでは年齢のことを気にしていたというがそれを過ぎるとどうでもよくなったと語る。
中島もまた、20代や30代の8、9あたりはあがいていたが、大台を迎えて1桁目が0になると「チャラ戻りっていう感じ」らしい。
これには一条も同感。
ただ一条の場合、29から30になる時はかなりの抵抗があったが、39から40になる時はわりとすんなりと受け入れられたんだそうな。
対談当時は40代の2人。
中島は10代や20代のときと比べて体力を配分するようになったという。
一方の一条も体力は仕事でしか使わないことにしているという。
一条は、人間の煩悩だとかプライドやわがままを好んでいる(作品づくりのためか)が、この年齢になってそれすら面倒になり、丸くなっている自分がどこか寂しいらしい。
一条「仏になってはいかん!といつも思ってる」
中島「イヤー、一条先生は簡単なことではならないと思うな、仏には(笑)」
丸くなったといえば中島も丸くなったのだ。
中島「私の場合はね、デビューした初めの頃のほうが男にいじわるだったのね」
それがだんだんと男の方にも色々と事情があることを考えるようになり、労わる気持ちが芽生えたんだとか。
『元気ですか』という曲に触れ
一条は中島みゆきの曲にはことごとく嫌われても、好きだからしょうがないという女がよく描かれていると指摘。
中島みゆきの曲『元気ですか』を聴いたとき、作品(漫画)に使えるといったんは思ったが、
「こいういう女っていやだよな」
「ふられるの当たり前だよ」
と、怖さを感じ思いとどまったそうな。
この『元気ですか』という曲は、ある女が、想いを寄せる男の恋人に電話をかけるというモノ。
それとなく男の話題を引き出そうと探りを入れるくだりは、確かに怖い。
さらに女の心の中は、モノローグ形式で朗読されているので、本音剥き出しというのも怖い。
だが一方で一条は、
「すべてをさらけ出す、みたいに書いちゃうと、なまじ性格のいい人を書くよりも気持ちいいんじゃないかって思うんだけど」
と、そこに作家ならではのカタルシスがあるのではないかと見ている。
普通の人なら書かない情けない部分見せない部分を惜し気なく歌にできるのは、
中島「私、今さら嫌われたってていうかね(笑)」
なるほど、肝が据わっているからできる芸当なのだろう。

中島みゆきの曲はどのように生まれるのか?
一条は以前に、1枚のレコード全曲の作詞を手掛けたことがあり、だいぶ骨が折れたよう。
一条は、その歌詞の中に出てくる登場人物の人物像を作り、漫画のネーム(セリフ)を書いていく感じで作り上げていったという。
一方、中島みゆきの方はというと、人物像というのは感情の範囲内でしか肉付けせず、具体的にどんな会社に勤めているとかという設定までには及ばない。
一条「どんなところで(曲を)書くのかしら?」
中島「そこらへん中」
ご飯を食べながら、そのへんにメモ。
新聞読みながら、新聞にメモ。
そのメモをどっかに失くしてしまうというのはしょっちゅう。
小説に手こずる中島みゆき
中島みゆきは曲だけでなく、小説やエッセイ、絵本に至るまでこれまでに数々の文芸作品も発表している。
だが、メインは歌詞を書く人間なので、言いたいことが短い文章で収まってしまう。
中島「結論は出た!
が、しかし、あと五ページ残ってるって(笑)」
もう小説はいいや、と思いながらも、編集長においしいもので釣られてまた書くハメになったりとか。
一条ゆかりについては、その辺は図太く「料亭でなきゃイヤ」と店の指定まで入る。
一条ゆかりの創作法
「連載やってると、つじつま合わせで困ることないですか?」
という中島みゆきの質問に、「すごくある」と答える一条ゆかり。
1人子の設定だったのがウッカリ弟が出て来たりということもあったらしい。
一条は予めぼんやりとしたストーリーが頭の中にあって、そこへ向かっていちおうは筆を進めていくのだが、途中で「こっちのほうがいいんだろうな」と方向を逸らすこともあるんだとか。
だが、面白いと思って書いたはずの完成形が面白くないということもあるようで。
中島みゆきの戸惑い
一条「自分でおもしろくないって思った時ってありますか?」
中島みゆきはコンサートの話を引き合いに出す。
コンサートでは毎日ほぼ同じセットリストで歌われる。
すると、「あれ? これ昨日も歌ったな」という疑問が沸き、そんな時は無理に気持ちをのっけてるようなわざとらしさが感じられてしまい、困るんだそうな。
一条ゆかりの活力源は怒り
話題はストレスの話になり、2人ともストレスはたまらない体質だという。
が、一条はあえて何かあると怒るようにしている。
「今に見てろ、見返してやる!」
そう思うことで自分を上昇志向に持っていくんだそうな。
中島「私、一条さんの漫画の思いきりのいいところが好きなんですよ」
最後に、次回は水ようかんを持参すると再会の約束をし、おひらき。
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