1991年10月23日に発売されたオリジナルアルバム
『歌でしか言えない』
について、みていこう。
1991年11月号の「月刊カドカワ」で、中島みゆきはこのアルバムについて語っている。
交えながら解説していきたいと思う。
アルバム『歌でしか言えない』について
1991年10月23日に発売された19作目のオリジナルアルバム。
週間オリコンアルバムチャート4位を記録。
中島みゆきにとって、初めての本格的な海外レコーディングを経てできたアルバム。
特徴
報道番組「ニュースステーション」のコーナーで流れていた『おだやかな時代』や、鈴木保奈美出演のCM曲『Maybe』などのタイアップ曲などを含む。
ライナーノーツに寄稿した残間里江子と呉智英
ブックレットの冒頭には評論家の呉智英と出版・映像・文化イベントのプロデューサー残間里江子による寄稿文が掲載されている。
呉智英は、寄稿文の中で、1982年10月11日に行われた東京厚生年金会館でのコンサート『浮汰姫』のことについて触れている。
「わたくしが中島みゆきです」と登場して放った第一声に、中島みゆきであることを引き受けている決意が感じられ、感動したということが書かれている。
一方、残間里江子は、中島みゆきの歌詞に見られる普遍性は、グローバルな世界観や人生観、また、主観と客観の間を行き来できる能力があるからだと考察している。
収録曲
『C.Q.』
CQとは無線通信で、通信が届く範囲内で受信可能な無線局の応答を求めるために用いられる信号のこと。
つまり、この歌詞にあるように「誰かいますか?」というメッセージを誰か拾ってくれると願って発信することだ。
ただ、「月刊カドカワ」のインタビュー記事によると、中島みゆきはこれを無線に限っておらず、現代にある色んな情報社会(記事ではダイヤルQ2とかテレフォンクラブとかを例として引用している)における人々の心模様を歌に反映させていると語っている。
「こんなに情報があふれていろんな人のことたくさん知ってるはずなのに、実は1人の人のことはなんにも知らないっていうような付き合いね」
この曲は、出だしが小声で呼びかけるように歌われているため、レコーディングの際はヘッドホンに返ってくる音も小さくして、静かな状態で収録に臨んだという。
『C.Q.』は、1992年に上演された『夜会VOL.4 金環蝕』の冒頭で、中島みゆき扮する天文学者によって歌われている。
まるで広い宇宙に信号を送るようでもあり、この話の軸でもある天岩戸に隠れてしまったアマテラスと交信を試みてるようでもあり、静謐な世界観を演出している。
中島みゆきさんの「C.Q.」という歌です
多くはない伴奏。ただ静かに時が流れ、囁くように語りかけるように紡がれる歌が印象的な曲。
果てしない宇宙で、「一人ではないこと」を確認するためだけに信号を発し続ける。そんな情景がいとも容易く浮かんでしまう。— 談野 (@tanorum6) June 26, 2020
トレンド中島みゆきがあるけど、中島みゆきでずーーーーーーっと印象に残ってるのがアルバム1曲目「C.Q.」
悲しみより闇が深い感じがしてな
しかし何故か好き— 廉条冬馬(とーまくん) (@yukiacid) July 21, 2020
『おだやかな時代』
このCDが発表される5年前の1986年、テレビ朝日の報道番組「ニュースステーション」の中で「日本の駅」というコーナーがあった。
そのテーマソングに流れていたのが、この『おだやかな時代』。
テレビの方で流れていた方は曲の冒頭部分のみで、歌い方やアレンジとはCDとは異なる別バージョンになっている。
「止まり方しか習わなかった町の溜息」
「標識に埋もれて僕は愛にさえ辿り着けない」
全体的に厭世観を感じさせる歌詞だが、一方で、開けた部屋のドアを「駅」、そこから始まっていく先を「レールウェイ」と表現していて、未来へ踏み込んでいく「僕」の力強さを感じる一曲。
ここずっと昔好きじゃったミュージシャンの曲を聴いているが、久米宏がやっていた頃のニュースステーションでかかっていた中島みゆきの「おだやかな時代」の音源はどこかにないか。アルバムにあるやつとは全然違うんじゃよ。
— 元祖ヲイヴォレンヂャー・KEN (@MMM21W) August 31, 2020
中島みゆきさんの「時代」は、時代を代表する名曲…というよりも時代を超える名曲だと思う。僕ももちろん大好きなのだが、実を言うと、みゆきさんの曲の中には、もっと好きな曲がある。「おだやかな時代」だ。僕にとっての中島みゆきさんは、この2曲で十分かもしれない…
— 龍胆寺れん (@takoyamatakota) July 29, 2020

『トーキョー迷子』
演歌寄りの歌謡曲といったテイストの曲。
東京を「トーキョー」とカタカナ表記しているのは、実在する東京とはまたもう一つ先へ行きたかったからだという。
男性を待ち続ける女性の気持ちが、歳月とともに変化していく様子が描かれている。
『トーキョー迷子』は、1991年6月5日にシングルとして先行リリースされているが、こちらのアルバムに収められたものはアレンジが少々異なる。
今っぽいJ-POPが数曲かかった後、中島みゆきのトーキョー迷子が流れるとはなかなか渋い店だな。
— 法寺岡 伸吾 (@houjioka) May 8, 2018
朝の電車の中でトーキョー迷子聞いてると人生の迷子感が半端じゃない
— もっち (@mochiee_y) April 9, 2018

『Maybe』
鈴木保奈美が出演したCM「ブレンビー」で流れていた曲として知られているが、もともとは夜会のために作られた曲。
夜会では中島みゆきがОLに扮し、心の内の寂しさを歌い上げている。
その設定があるため、歌詞の中には、
「ビル風に飛ばされる」
「大きなバッグを持ち直す」
「パウダールームの自己暗示」
など、どこかオフィスの喧噪が漂ってきそうなワードが用いられている。
歌詞には、ОLの本音とタテマエの二面性が歌い込まれている。
特に、
「なんでもないわ 私は大丈夫」
という歌詞は、字面だけだと誤解を与えかねないので、中島みゆきは、この曲は音として聴くことを推奨している。
仕事中だけど、中島みゆきさんの「Maybe」を聞きたい心境。
心が弱りかけてる、でもあとひと踏ん張りほしいときに聞きたい曲。残念ながら公式の動画は見つからず。— しろやぎ🐐 (@shiroyaggy) September 16, 2020
桔梗さんの愚痴が刺さりすぎた。男社会云々。今でこそ多くの女性の同意が得られる様になって自分の気持ちも少し緩和されたけれど、かつて私を支えていたのは中島みゆきさんの歌Maybeだった。あと勿論ファイト!も。どちらも名曲#MIU404
— イノ (@kio_ino) August 28, 2020

『渚へ』
ロサンゼルスで録ったこの曲。
中島みゆきにとって初めての本格的な海外レコーディングなだけに、顔を見合わせて表情でコンタクトをとる海外ミュージシャンはなかなか斬新に映ったようだ。
おなじみの失恋歌であるが、
「あいつを恨みたくない」
と男への優しさを感じさせる歌詞。
だが、そう聞こえるのは、遠回しに言うようになったぶんだけ底意地が悪くなったからなんだとか。
「人を憎んで恋を憎まず」というのがこの頃の中島みゆきのスタンス。
他にいい男がいるかもね、と実はちょっぴり前向きな可能性を含んだ曲でもある。
#NowPlaying
渚へ by 中島みゆき from 歌でしか言えない このアルバム有名な曲は一個くらいしかないけどいい曲あるやん。— Speakerphonei (@speakerphonei) August 21, 2011
中島みゆきさんが、〝気持ちはわかると わかるな学者〟と歌うのは「渚へ」という曲。歌詞も曲もゆらゆらと揺れているんですよねえ。今日はそんな気分。収録されているアルバムは『歌でしか言えない』。1991年の発売です。
— miyutabi (@miyutabi) February 26, 2013
『永久欠番』
誰しも自分がこの世にいる価値を一度は問うことがあると思うが、この曲はまさにこれに直球で応えている歌。
この頃、中島みゆき自身、命について考える出来事があったらしく、それが歌に反映された。
英訳した歌詞をレコーディング現地のミュージシャンに見せると、「永久欠番」というコトバに非常に敏感に反応したという。
メッセージ性の強い歌詞は国語の教科書にも掲載され、ヒット曲ではないが、若い世代に広く浸透した曲といえる。
中島みゆきは糸ばっかり有名になっちゃって、空と君とのあいだにとか旅人のうたとかもっと聞いてよぉぉってなってる。
糸と同じようなバラードなら永久欠番とかMaybeなんかもめちゃくちゃ素晴らしいわよぉぉってなってる。
— yuuki (@yellowuuki) September 30, 2020
シャッフルしてたら中島みゆきの永久欠番流れてきて泣いちゃうよな朝から
— にしむら (@646_rarara) September 27, 2020

『笑ってよエンジェル』
1990年に発売されたシングル『with』のカップリング曲。
ツアー中に『with』のシングル発売が決定した。
『with』はアルバム『夜を往け』からシングルカットされたものだが、B面の曲が用意されていなかったため、大慌てで録った曲が、この『笑ってよエンジェル』だ。
後に、チェリー・チョイという香港シンガーによりカバーされている。
中島みゆきの、笑ってよエンジェル、が昔好きだったんです、20代のころ、音楽的には、みゆきですから、他にもっと良曲があるのでしょうけども、個人的に、ひとりの男として、みゆきの、笑ってよエンジェル、が好きだったんです、
— 雲路駛走 (@kumojishiso) January 14, 2019
中島みゆきさんの歌に『笑ってよエンジェル』という題名の歌がある。ここんところのフィギュアスケートTL見てて思い出した。歌詞をあらためて見返して唸った。これは単なる恋唄じゃないわ……エンジェルは『崇拝するあなた』なんだよな。
— 北斗砂姫@行くぞ 用意はいいか (@sakivega) December 12, 2017

『た・わ・わ』
「おまえを殺したい」
という歌詞が印象的なこの曲。
女の嫉妬を、コミカルに描いている。
恋敵は、タイトルの通り胸がたわわで男を端から端まで悩殺するような女。
「胸は熟したフルーツ」
「糸を渡ってゆくような細いピンヒール」
など、敵の描写が生々しい。
「月刊カドカワ」のインタビュー記事では、
「一大コンプレックスですもん。
やっぱりたわわにはかないませんよ」
と語っているので、この曲、ある程度自分を下敷きにしてるのではと思われる。
ちなみにこの曲を発表した当時、化粧品メーカーが「たわわ」というキャッチコピーを打ち出し新商品を売り出していて、冷や汗ものだったと語っている。
また、中島みゆきの著書『ジャパニーズ・スマイル』の中では、同名のリンゴ菓子が青森で販売されているのを知り、すでに商品名を言えないNHKの番組内で「たわわ」を何度も口走っていたことを後悔するくだりが書かれている。
「月曜日のたわわ」が話題ですが、
中島みゆきの曲に「た・わ・わ」というものがありましてね…あざと系巨乳女子への殺意をポップな曲調で歌った曲で、
「♪た・わ・わ お前を殺したい~」
というストレートすぎる歌詞が印象的。— 歩く梨タイム (@ukkun_rail_navi) November 20, 2016
中島みゆきのた・わ・わは、たわわなおっぱいの女性の歌……ではなく、男ども(と想い人?)を惑わす魔性を憎む者の心の叫びなのである、という理解。
— aniki02 (@aniki02) October 15, 2016
『サッポロSNOWY』
「大陸からの強い寒気が下がって」
曲の冒頭で、え?天気予報の歌?と匂わせつつ、雪を「あの人」に見せてあげたいという恋歌へと変わっていく。
雪が足跡や昨日の出来事を隠してしまうというくだりは乙。
中島みゆき自身もコンサートツアーを回る時に行く先の天気予報を長距離で確認しているという。
「長距離で聞くってことは、つまり札幌にはいないわけだけど、自分の中で雪がつもるんだよね」
なるほど、札幌の外から札幌に思いを馳せる歌らしい。
歌い出し冒頭の「大陸からの強い寒気が下がって…」という、おやっ?となるフレーズを、締めの「今日も天気予報 長距離で聞く」で回収するこの歌詞凄いなぁと、いつも思う。
中島みゆき サッポロSNOWY 歌詞 https://t.co/Dw9SXCt4uQ
— イワヨコ (@iwayoco) June 10, 2019
サッポロSNOWY 中島みゆき #nowplaying 92年の「カーニバルツアー」で札幌で聞いた時、泣けた(;_;)3月中旬でまだ札幌は冬だったからね。みゆきさんの歌は「冬」が似合う♪また冬に札幌でコンサートしてほしい(^^♪
— 北国のくまきち🐻🍠🌰🎃 (@kuma_kichi003) September 1, 2017
『南三条』
東京、札幌、そして南三条とやたら地名の多いアルバムだ。
南三条とは中島みゆきの故郷である札幌の中にある街。
かつては音楽喫茶が多く建ち並んでいたこともあって、中島みゆきにとって縁のあった街であったことは想像に難くない。
この曲はかなりストーリー性の強い内容になっている。
歌詞解釈
地下鉄の人混みの中で突然バッタリ会いたくない女と出会ってしまう。
その女は、かつて自分の男を奪った恋敵。
とっくに2人は幸せになっていると思っていたが、実はとうに2人は別れてしまっていたのである。
「ずっと憎んで来た無駄な日々返してと
何を責めればいいの」
激しい後悔が押し寄せる。
そして、南三条を泣きながら走った夏の日が甦ってくるのだった。

中島みゆき曰く、この曲は息をするところがほとんどなく、体力を消耗するらしい。
さて、この「南三条」というタイトルを英訳すると、「サウス・サード・ブルバード」なのだが、ブルバードはロサンジェルスではものすごい広い道路を意味する。
現地のミュージシャンに伝えたところで、「あんなところを泣きながら走ったのか!パワフルな女だな!」と、かえって認識のズレを生じさせてしまったエピソードを語っている。
何で中島みゆきが好きになったかを思い出した。
高校の時に大学の教授が出張授業で邦楽の話をしていて、お題が中島みゆきの「南三条」だったからだ!
今思うと授業で高校生にゴリゴリの失恋ソングを熱弁するのすごい。— PONTA.zip (@PONTA_zip) August 20, 2020
中島みゆきさんの曲はペップなアレンジなのに詞の世界はドロドロと地の底にたよたうかのようなものも数多く、それが又良い。「南三条」はそんな曲。
— しっちょ7 (@7_usuke) April 6, 2020
『炎と水』
このアルバムは当初、『永久欠番』か『C.Q.』をラストに持ってくるだろうなと思って曲を撮っていたが、この『炎と水』がラインナップに加わったとたん、その場で、この曲がアルバムのラストを飾ることに決定した。
一般的に、男が火で女が水と捉えられがちだが、中島みゆきの中では男の方が水なのだそう。
私小説的な『南三条』とは対照的に男女の根源的なものを歌った曲になっている。
曲後半の高音部分は、音域の広い中島みゆきでもさすがにのたうち回ったという。
中島みゆきで男女を描いた歌だと、糸 より 炎と水 の方が好きだし感情移入する。
— PEKEROKU (@pekeroku) February 18, 2020
でも中島みゆきは言うよ。
違いすぎる炎と水は互いが互いを必要とし合うって。一番遠いものが一番近いのよ。— もっと熱くなれよTACO (@mister_octopus) July 3, 2016
『歌でしか言えない』のみんなの感想
中島みゆきの「歌でしか言えない」というアルバムは札幌への旅情をそそる。
— しろくろこ🐻 (@shirokuroko_EA) September 4, 2020
中島みゆきのアルバムで、一番好きなのは「歌でしか言えない」かしら。「夜を往け」とか「わたしの子供になりなさい」も好きだけど。あ、「LOVE OR NOTHIING」もいいけど。「生きていていてもいいですか」もいいし、「パラダイス・カフェ」もいいな。…って、結局決め切れない。
— 南ツカサ (@kaztok3) May 19, 2018
CQCQ・・と言えば中島みゆき「CQ」が入ってる「歌でしか言えない」は隠れた名盤*\(^o^)/*
私の中のみゆきさんベストソング「Maybe」が入ってるってのもあるけど、どの曲もドラマチックで美しい(*´-`)— はっち (@hacchihp) May 15, 2017
中島みゆきさんのアルバムジャケットって赤・黄系が多く、
青系統って少ない気がするんだー。
けど、その少ない青系統の中の2枚、
『歌でしか言えない』と『夜を往け』が最高に好きなんだー— 深酒酔太郎 (@pinkgolem) October 20, 2015
10/4 久しぶりに聴きたくなったので、
中島みゆきさんのalbum「歌でしか言えない」を借りました。
好きな曲が多いalbum。中でも「炎と水」は聴いていて引き込まれます。「永久欠番」という曲も好きなのですが、
聴くと亡くなったオカンととっつぁんのこと思い出しそうで辛い。— 大野 勝 (@npm_angelofm) October 4, 2015
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