1977年9月10日に発売された5作目のシングル
『わかれうた』
をみていこう。
中島みゆきにとって初のヒット曲。
自身がこの曲をどう思っているのかについてもまとめてみたぞ。
中島みゆき『わかれうた』
作詞・作曲 中島みゆき
編曲 福井崚・吉野金次
『わかれうた』が収められたアルバム
『愛していると云ってくれ』
『3年B組金八先生』の挿入歌として話題になった『世情』や、多くのアーティストにカバーされている『化粧』など、未だに受け継がれる名曲を含んでいる。

『大吟醸』
『空と君のあいだに』『悪女』『ファイト!』『時代』など誰もが認める代表曲を厳選したベストアルバム。

『Singles』
1975年から1986年までのシングルを集めたシングルコレクションアルバム。
CD3枚にまとめた超大作のアルバムである。
『やまねこ』『あたいの夏休み』『誘惑』『悪女』『時代』など、ヒット曲多数で、初期のベスト盤の様相を帯びている。
『いまのきもち』
1976年から1988年に中島みゆきが発表した13曲を瀬尾一三によるアレンジでセルフカバーしたアルバム。
オリジナルとはアレンジの違う『わかれうた』はエスニック調の強いサウンドとなっている。
『わかれうた』は初の中島みゆきのヒット曲
『わかれうた』は中島みゆきにとって初めてオリコン10位内に入った曲であり、同時にオリコン1位を獲得した曲だ。
累計売上も76万枚と1978年度年間10位にランクイン。
中島みゆき本人はヒットした実感がない
メガヒットにも関わらず、中島みゆき本人曰く、実感がなかったそう。
街を歩いてもラジオを聴いても、それほど『わかれうた』が流れていなかったからだ。
1978年、FM大阪の『きまぐれ飛行船』という番組に出演した中島みゆきは、『わかれうた』のヒットについてピンク・レディーをひきあいに出して語っている。
ピンク・レディの歌の場合、世の中がピンク・レディ一色になるような影響力がある。
それに対し、自分の『わかれうた』は、のっぺりした上にタラタラと歌っているだけに、あんまり影響力のない曲じゃないか。
ヒットの実感が湧かない中島みゆきは、
「誰かが1人で何万枚も買ってんじゃない?」
と、よっぽど疑っている。
業界紙のランキングで4位に『わかれうた』を見かけたときですら、ここだけ「わかれうた」と書いたテープが貼りつけてあるんじゃないかと疑い、なんども剥がそうとしたエピソードも語っている。
職務質問で『わかれうた』を歌った中島みゆき
中島みゆきの著書『女歌』の中で、夜中に引っ越ししているところを警官2人に職務質問されたことが書かれている。
警官は中島みゆきが家出をしているのではいかと疑っていたらしく、身元を尋ねられた中島は、歌手であること、中島みゆきであることを明かすも、
「中島みゆき……オイ、知ってる?」
といまいちピンときてなかった。
すったもんだのあげく、『わかれうた』を歌ったところ、
「あ、知ってる、もしかして中島みゆきなの?」
とようやく信じてもらえたという。
なお、『女歌』は小説とエッセイが組み合わさった形で組み合わさっているが、このエピソードは実話らしい。
必ず議論になる歌詞の部分
中島みゆき曰く、『わかれうた』は自分に「別れを歌う人」という1つの看板を作った曲だそう。
『わかれうた』について人々が論じるときに、やたら引用される歌詞が歌い出しの部分。
「途に倒れて」去っていった男の名を呼び続ける哀しい女の描写だ。
なぜかサビではないこの部分がフォーカスされる。
自分の経験、あるいは身の回りに「途に倒れて だれかの名を呼ぶ」人間がいたか否かで話が盛り上がる傾向がある。
ちなみに芸能界では、俳優の古田新太は「途に倒れて だれかの名を呼びつづけた」人間を見たことがあると言い、女優の高畑淳子は、「そんな人見たことない!」と言っている。
まるで人はコレを中島みゆきの実体験のように捉え、
「こんな修羅場をくぐりぬけた中島みゆきには敵わないな。
これぞ中島みゆき」
と、詞の世界観を【=中島みゆき】と定着させた曲なのかもしれない。
夜会VOL.3 KAN(邯鄲)TAN
ちなみに、この「途に倒れてだれかの名を呼び続けた女」をその後、中島みゆきは『夜会VOL.3 KAN(邯鄲)TAN』の中で演じている。
スポットライトを浴びながら、地面に這いつくばって歌うその姿は不思議と様になっている。
『夜のヒットスタジオ』に出演した中島みゆき
1977年12月26日、中島みゆきはフジテレビ系音楽番組『夜のヒットスタジオ』に出演し、『わかれうた』を披露している。
照明を極力落とした暗いセットの中で歌う中島みゆきの衣装もまた黒。
背景の闇と衣装が同化し、弾き語りのギターの色だけがやけに目立つという逆転現象が起きている。
翌年、1978年2月21日に出演したフジテレビ系音楽番組『ミュージック・フェア』でも、やはり、同じ状況で歌われた。
日の当たらないところで歌うイメージを印象づけた一因がここにもあるかもしれない。
『わかれうた』をカバーしたアーティスト
平井堅
2009年に発売されたカバーアルバム『Ken’s Bar II』に収録。
ここで歌われている『わかれうた』は、スピッツの草野マサムネとのデュエット曲。
歌声から男の哀愁が漂っている。
徳永英明
2007年に発売されたカバーアルバム『VOCALIST 3』に収録。
ミリオンセラーを記録したこのアルバムには、他にも小林明子の『恋におちて -Fall in Love-』や安室奈美恵の『CAN YOU CELEBRATE?』などのヒット曲が多く含まれている。
徳永英明版『わかれうた』は、哀愁の中に艶っぽさがある。
アウトロ部分は、オリジナルのイントロ部分を踏襲している。
研ナオコ
1978年に発売されたアルバム『NAOKO VS MIYUKI (研ナオコ、中島みゆきを唄う)』に収録。
アレンジはほぼオリジナルに近い。
中島みゆきの初期の楽曲と研ナオコの歌声はつくづく親和性が高いと思わせる一曲。
加藤登紀子
2008年に発売された『SONGS ~うたが街に流れていた~』に収録。
オリジナルよりもゆったりとしたテンポで歌われている。
夜の酒場でワインを傾けながら聴きたくなるような曲に仕上がっている。

柏原芳恵
1983年に発売されたアルバム『春なのに』に収録。
ヒット曲『春なのに』の他に『わかれうた』『あした天気になれ』『海よ』など中島みゆきの楽曲だけで構成されているアルバム。
『春なのに』をヒットさせた直後のアルバムとあって、柏原芳恵の歌う『わかれうた』には可憐な女子高生の余韻が残っている。

庄野真代
2008年に発売されたアルバム『Reminiscence』に収録。
思いきりジャズで『わかれうた』を歌っている。
加藤登紀子の『わかれうた』が古い酒場で歌われるイメージとすれば、庄野真代の『わかれうた』は都会のビル街にある洗練されたバーといったところだろうか。
布施明
2009年に発売されたアルバム『Ballade II』に収録。
熟年の男の寂しい背中が浮かぶような歌声。
昔の恋人を思い出してるような追憶入ってる感じ。
荒牧陽子
2019年に発売されたアルバム『リスペクト!~私が昭和を歌ったらこんな感じ!~』に収録。
ロック調なサウンドでアグレッシブに歌っている。
ヤケ酒してカラオケで憂さ晴らしするにはよいアレンジになっている。
ぜひカラオケで。
類似の曲
『わかれうた』と似た曲として引き合いに出されるのが松山千春の『時のいたずら』。
コード進行がほぼ同じらしいのだ。
中島みゆきは1978年に札幌で行われた「第16回STVヤングジャンボリー」というコンサートの中で松山千春の『時のいたずら』に触れ、
「こっちの方が先にできていたんだ!」
と、『わかれうた』を歌うも、その流れで『時のいたずら』に変えて歌うという茶目っ気も見せている。
当時、週刊誌が、「中島みゆきと松山千春が熱愛中」というデマの記事を掲載していたことあって、
「今日はみんなからナイフが飛んでくるんじゃないかと思ってましたが」
などネタを盛り込んだMCが繰り広げられた。
有吉弘行の『わかれうた』の聴き方
2012年9月22日に放送されたテレビ朝日系『ナツメのオミミ』の中で、有吉弘行は『わかれうた』を聴くシチュエーションについて話している。
有吉は、お台場に仕事があるときには、早めに行って、海浜公園を楽しそうに歩いているカップルや家族連れを眺めながら車の中で『わかれうた』を聴くのが習慣という。
亀田誠治による『わかれうた』の考察
東京事変のメンバーでもある亀田誠治はNHKEテレ『亀田音楽専門学校』(2013/01/04放送)で、『わかれうた』から情念が感じられる理由として2つの点を挙げている。
1つは同じメロディが何度もリフレインされているという点。
亀田は例として冒頭の「途にたおれて~」の部分を引用している。
この部分だけとっても同じメロディが4つも繰り返されている。
もう1つは、1つ1つの音符に1つ1つの言葉があてはめられている点。
亀田はこれを説明する際に『時代』と比較している。
『時代』が歌詞が横に流れる歌い方をしているのに対し、『わかれうた』は1つ1つの言葉に短くエッジを効かせることで、刃物で切り込むような強烈さを演出していると語っている。
『わかれうた』のみんなの感想
中島みゆきでぱっとでてきた曲がわかれうたとうらみますだったからもうダメだ……道に倒れて誰かの名を呼び続けたことはありますか……
— す?う (@guitar_basslove) May 26, 2020
わかれうた
高校の頃に流行って、ハマった子がみんな廊下に倒れて歌うって言う珍現象あったわ#関ジャム
— ち ょ び 織 姫-ソーシャルディスタンス (@chobimipo) May 24, 2020
中島みゆき聴いたら怖くて一人で夜ションベン行けなかった ひとり上手とかわかれうたとか あのへんのラブソングでさえ 怖かった ただただ怖かった 大人の世界をはじめてのぞいた
— NM (@border1968) January 21, 2020
私が憂うつから解放されるのは、お歌を歌って別の誰かになりきっている時くらいよ。
そして大恋愛もしていないのに、わかれうたとかヤバめに歌いながらこんな人生4分くらいで調度いいわとか思ったりすんの。— マリスン【造形師】 (@asagooods) December 4, 2019
母にドライブ用に中島みゆきのCD作ってと言われ作ってみたけど、未練たらたらな曲ばかりでドライブ向きじゃないけどいいですか?と聞きたくなる選曲になった。慟哭とかわかれうたとか流星とか好きなんだ。
— 久遠 (@quon_sor) March 23, 2019
『わかれうた』はこんな時に口ずさもう
不本意なことで相手に別れを告げられた時に自分を慰めるつもりで口ずさもう。
『わかれうた』はサブスク(定額制)でも聴ける
2020年1月8日よりついにサブスクリプション(定額制)で中島みゆきの曲を聴けるようになった。
『Amazon Music Unlimited』に登録すれば、月額980円(プライム会員は月額780円)で中島みゆきのシングル曲(カップリング含む)が聴き放題。
(※1975年版『時代』、映画主題歌バージョン『瞬きもせず』は含まない)
もちろん中島みゆき以外のアーティスト曲も聴くことができる。
その数、6500万曲以上。
30日間の無料お試し期間があるので、ぜひ一度試していただきたい。
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