1993年10月21日に発売された21作目のオリジナルアルバムに収録された
『あたし時々おもうの』
をみていこう。
幻のデビュー曲といわれているこの曲。
中島みゆきがいちどデビューを辞退したその理由と谷川俊太郎との出会いについて書いてみた。
中島みゆき『あたし時々おもうの』
作詞・作曲 中島みゆき
編曲:倉田信雄
収録アルバム
『時代 -Time goes around-』
『時代 -Time goes around-』(レコチョク試聴あり)
1993年10月21日に発売された21作目のオリジナルアルバム。
『あたし時々おもうの』は6曲目に収録されている。
『慟哭』『風の姿』など他アーティストに提供した曲や『ローリング』『時代』などかつて発表した曲のカバーアルバムとなっている。

歌詞の解釈
年をとった「あたし」の視点で歌われている。
「若くなくなってしまったあたしたち」は「まだ」「いつか」と互いに声を掛け合うことがあるのだろうか?
なんにもしないで終わってしまう人生の中でどんな顔をすればいいの?
自問する歌である。
幻のデビュー曲
公式には、中島みゆきのデビュー曲は1975年に発表した『アザミ嬢のララバイ』とされているが、実はこれより前に中島みゆきの歌声はレコードで出ている。
その曲が、この『あたし時々おもうの』である。

全国フォーク音楽祭に入賞した曲
まだ中島みゆきが藤女子大学に在籍していた頃の1972年。
ニッポン放送主催のコンテスト『全国フォーク音楽祭』に応募した作品がこの『あたし時々おもうの』だった。
レアなライブアルバム
この大会で歌ったときの音源が1972年にアルバムで出ているのだが、このアルバムというのが中島みゆき本人も持っていないというほど世に出回っていない代物なのだ。
アルバム『時代 -Time goes around-』に収録されるまで、実に21年間この曲は披露されることはなかった。
その間、一方で歌詞のみが書籍『愛が好きです』(新潮文庫・82年12月刊)、『中島みゆき全歌詞集』(朝日新聞社・86年12月刊)に掲載された。
全国フォーク音楽祭の模様
音源を聴くと、歌の前に司会が中島みゆきを紹介している。
北海道の大学3年生で国文学を専攻しているということ。
練習は、放課後や、あるいは自主的に休校して体育館で行っていたということなど。
一通り紹介を終え、中島みゆきによる『あたし時々おもうの』が披露される。
伴奏は自身の弾くギターのみ。
『時代 -Time goes around-』に収録されたモノよりも、激しく、叫ぶように歌っている。
デビューを辞退
『全国フォーク音楽祭』で中島みゆきはみごと優秀賞を受賞した。
その際、プロデビューの話が持ちかけられたのだが、彼女はそれを辞退している。
なぜなのだろう?
衝撃を受けた谷川俊太郎の詩
この大会の1週間ほど前に中島みゆきはある一篇の詩を受け取っている。
大会では、与えられた課題詩に自作の曲をつけて歌わなければらないのだ。
それは、谷川俊太郎の詩だった。
『私が歌う理由(わけ)』というその詩は中島みゆきに衝撃を与えた。
「私が歌うわけは
いっぴきの仔猫」
歌う対象が「いっぽんのけやき」だったり「立ちすくむひとりの子ども」だったりと小さな存在へと向かっていくこの詩に、
「天狗になって舞い上がっていた自分が、詩を見た瞬間にガーンと「やられた」と思った」
と、後に中島はこの時の心境を語っている。
1991年11月号の『月刊カドカワ』では
「それまでライブやって大きなホールで歌っていい気になりレコードデビューという夢の頂点まできたとこで、一番下の所まで引き戻されてしまった」
「あの詩に出会わなかったら私の人生は違ってた」
とも語っている。
「このままでは歌に失礼だ」
その思いからプロデビューを辞退して故郷北海道へと帰っていったのだった。
デビューを辞退した後の中島みゆき
デビューを辞退した後の中島は、当時在籍していた北海道大学のフォーク研究会へ戻り、地道にライブ活動を始めている。
そして谷川俊太郎についての論文を提出して大学を卒業した後は、家の産婦人科の手伝いやそれ以外のバイトをこなしながら、コンテストに出たりと、音楽の活動は続けていた。
が、賞をもらっても以前のように浮かれることはなくなっていたという。
谷川俊太郎の詩によって音楽への向き合い方が変わったというコトはもちろん言うまでもない。
谷川俊太郎が語る中島みゆき
1999年12月8日にNHKで放送された『スーパースターライブ/中島みゆき・夜会の冒険』で谷川俊太郎は中島みゆきが好きだという自身の詩『うそとほんと』を披露し、ここに中島みゆきの本質があると語っている。
「私小説的な事実と自身が作り上げる芸術作品の中の真実は簡単に分けられるものではないし、分けて欲しくない」
この詩をみる中島の眼差しにそういった気持ちが透けて見えると谷川は言う。
気持ちの表現に力点をおく多くの歌手とは違い、フィクションの中で歌われ、『夜会』はまさにその集大成。
完全な虚構の枠組みの中で演じられるフィクショナルな部分は中島みゆきの大きさをよく映しているのだそう。
『うそとほんと』
谷川俊太郎が書いた詩。
「うそとほんとはよく似てる」
「うその中にうそを探すな」
「ほんとの中にうそを探せ」
嘘と本当は互いに切り離すことのできない存在だとうたった詩。
「こうまで言われると私なにもやることないんだけど」
と中島みゆきを唸らせたという。
『あたし時々おもうの』のみんなの感想
いっぽうこのあたし時々おもうの、は、中島みゆきがデビュー当時にLIVEで歌っていた曲じゃがまったくアルバムに入らず、30年経ってようやくアルバムに入って嬉しかった。
— 元祖ヲイヴォレンヂャー・KEN (@MMM21W) October 1, 2016
私は葬式で中島みゆきさんの「あたしときどき思うの」を流してほしいが、もはや亡くなった人間からこんなことを伝えられても困るかなとも思う でもこれしか思いつかないわ http://t.co/EGksAaRNXU https://t.co/4m5gWDWjDa
— ちいちい (@chichi01357) June 9, 2015
時代とか傾斜とかあたし時々おもうのとか、ある程度歳を重ねてみないと得られない感覚を、みゆきさんは10代や20そこそこの若い頃によく歌にできたなぁと思う。
「若くなくなったあたしたち」なんて若い頃は想像もしないもんだろうに。— チョコ@親愛なる者へ (@chocoringo3) September 30, 2017
中島みゆきがデビュー前にコンテストの自由曲で「あたし時々おもうの」でグランプリを獲りながら、課題曲の谷川俊太郎の「私が歌う理由」という詞に曲をつけるというのを、真剣に捉えすぎて歌う理由を見つけられずグランプリを辞退したのと同じくらい、はるたむは朗読を深く捉えすぎてたんだと思う。
— アぱトサウルス(ぴちこ☆スター) (@bronto_saurus) December 27, 2016
「 あたし時々おもうの 命はいったいどれだけ
どれだけのことを できるものかしら 」
中島みゆきさんが二十歳でこんな詞を書けたとは、なんと素晴らしいことです。努力家で、色々挑戦してみたい人しか言えないことですね💪— のんき (@shizuka112) April 16, 2019
『あたし時々おもうの』はこんな時に聴こう
老後のことを考える時に『あたし時々おもうの』を聴いて自分なりの回答を出しておこう。
ちなみにこの曲、自問はしているものの、自答はしていない。
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