1992年3月4日に発売された27作目のシングル
『誕生』
をみていこう。
『誕生』が生まれた経緯や、そこに込められた中島みゆきの思いをまとめてみたぞ。
中島みゆき『誕生』
作詞・作曲 中島みゆき
編曲 瀬尾一三
映画のタイアップ主題歌
『誕生』は、映画『奇跡の山 さよなら、名犬平治』の主題歌として中島みゆきが書き下ろした楽曲だ。
1992年3月4日に『Maybe』と両A面シングルとして発売された。
収録アルバム
『EAST ASIA』
『誕生』は、1992年10月7日に発売されたオリジナルアルバム『EAST ASIA』に収録されている。
ドラマの主題歌である『浅い眠り』や、夜会のテーマソングである『二隻の舟』などが収録されている。

ベストアルバム『大吟醸』
『誕生』は、1996年3月21日に発売された中島みゆきのベストアルバム『大吟醸』に収録されている。
『浅い眠り』『空と君のあいだに』『旅人のうた』など、ミリオンセラーを3曲も含む、豪華なラインナップ。

『Singles II』
『誕生』は、シングルコレクションアルバム『Singles II』に収録されている。
1987年の『御機嫌如何』から1993年『時代』までのシングル(カップリング含む)を収めたシングルコレクション第2弾。
『浅い眠り』『最後の女神』などの名曲の他にアルバムではここにしか収録されていない『ジェラシー・ジェラシー』『兆しのシーズン』など。
『歌旅 ~中島みゆきコンサートツアー2007~』
『歌旅 ~中島みゆきコンサートツアー2007~』(レコチョク試聴あり)
2008年6月11日に発売されたライブアルバム『歌旅 ~中島みゆきコンサートツアー2007~』。
こちらではライブバージョンの『誕生』を聴くことができる。
2007年に東京国際フォーラムで行われたコンサートの音源を収めたアルバムで、『ホームにて』『本日、未熟者』『ファイト!』など名曲がライブバージョンで聴ける。
『誕生』が誕生した経緯
犬では書けない?
映画『奇跡の山 さよなら、名犬平治』の主題歌である『誕生』。
最初、中島みゆきのもとにはこの映画の詳細が伝えられていなかった。
犬が出るということ以外には何も。
よく中島みゆきは、インタビューで犬が縁で生まれた楽曲として『空と君のあいだに』『荒野より』と同じ並びで、この『誕生』も挙げる。
だが、『誕生』は犬ありきで作られた楽曲ではなさそうだ。
1992年11月号の『月刊カドカワ』の曲解説の中で、中島みゆきは『誕生』について語っている。
初め、映画に出演する犬の写真を見せられたところで、中島みゆきはピンとこなかったらしい。
曲を作る手がかりとしてはあまりにも乏しい情報。
そこで、中島みゆきは、映画の台本を読み、撮影されたフィルムも見せてもらい、挙句の果てにはフィルム編集に立ち会うなど、かなりこの映画に密着した形でインスピレーションをもらおうとしていた。
「映画と同時進行しながら作っていったの」
と、中島みゆき。
そして、曲のとっかかりとなったのが映画に出てきた女の子(中江有里)とその母親。
『奇跡の山 さよなら、名犬平治』とは?
『誕生』が生まれた背景を知るには、映画『奇跡の山 さよなら、名犬平治』の内容について知る必要がある。
あらすじは、ざっくりこんな感じ。
主人公は、敦子(中江有里)という女の子。
父親の浮気が原因で両親が離婚。
そして母親は自殺へと追い込まれる。
そのショックで敦子は失語症になってしまう。
敦子は母親の生まれ故郷である九重を旅し、そこで一匹の小犬を見つける。
その小犬を平治と名づけ、育てていく。
心の交流を描いた映画。
「いらない子なんていない」
この曲を通じて中島みゆきが伝えかったことだ。
「生まれてくれてWELCOME」という歌詞の意味
この曲を書く上でモチーフになったのがアメリカの風習だ。
英語圏では、赤ん坊が生まれてくるときに、「WELCOME」と声をかけるそう。
どんな子でも、生まれた時に温かく迎え入れられたことを、どうか思い出して欲しい。
物語に出てくる敦子やその母親に声をかけるつもりで、中島みゆきはこの曲を作っていったのだ。
夜会で歌われた『誕生』
『誕生』は『夜会VOL.6 シャングリラ』の中でも歌われている。
映画『奇跡の山 さよなら、名犬平治』の中の女の子とその母親にあてて歌った『誕生』だが、この夜会でも、娘と母親にあてられて歌われている。
『夜会VOL.6 シャングリラ』では、亡き母親の写真に向けて『誕生』を歌う娘と、実の母親が娘を想いながら歌う『誕生』と、この2人の役を中島みゆき1人で演じている。
それぞれすれ違う気持ちの中で歌われる『誕生』は意味合いが異なり、まさに「言葉の実験劇場」である『夜会』の本質を印象づけるシーンになっている。
『誕生』に励まされた人
槇原敬之が泣いた
2013年11月3日のNHK BSプレミアムで放送された『オール中島みゆきナイト』の中で、槇原敬之は『誕生』をリクエストし、この楽曲にまつわる自身のエピソードを語っている。
「自分って何のために生まれてくるんだろう?」
「自分は愛されるために生まれてきたのだろうか?」
思春期に限らず大人になっても度々そういう疑問を抱いてきた槇原敬之。
ある日、中島みゆきの大ファンである友人から贈られたテープを流し聞きして聴いていたところ、『誕生』が流れた。
槇原は堰を切ったように涙を流した。
「みゆきさんがこう言ってくれるんなら頑張れちゃうかな」
光を見出した一曲であることを語っている。
松本死刑囚へ薦めた『誕生』
オウム真理教の被害者や教団脱会者を支援していて自身もオウムから襲撃を受けた滝本太郎弁護士。
彼は、2000年5月13日、松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚の公判で、
私は、あなたのことを、あなたが生まれたことを決して恨んでいません。
あなたがしたことを恨んでいます。
あなたにプレゼントしたいのは、中島みゆきの『誕生』という歌です。
と、松本死刑囚に『誕生』を薦めている。
また、死刑執行後の2018年7月16日には、
「本人(松本死刑囚)には、『生まれてくれてウェルカム』と言いたい」
とマスコミに述べている。
この真意について滝本弁護士は本人のブログで語っている。
麻原に『誕生』の歌を薦めたのは、
「生まれてこなければよかったのに、までは言わないよ」
「あなたの命も一つの大切な命だったんだ」
という意味でしかなく、麻原を決して許したワケでないという。
教科書に掲載
『誕生』の歌詞が中学や高校の国語の教科書に掲載された。
掲載された教科書は、1999年度『高校生の現代文』(角川書店)、2005年度『中学国語(1年)伝え合う言葉』(教育出版)。
他には、『永久欠番』『傾斜』の歌詞も国語教科書に掲載された過去がある。


カバーしたアーティスト
島津亜矢
島津亜矢のカバーアルバム第5段『SINGER5』に収録されている。
これまでに、『SINGER』シリーズで中島みゆきの楽曲をカバーし続けている島津亜矢。
紅白では『時代』を歌い話題となった。
その圧倒的な歌唱力で『誕生』も歌われている。
中村中
『夜会VOL.18 橋の下のアルカディア』で中島みゆきと共演した中村中。
2017年に発売されたミニアルバム『ベター・ハーフ』に『誕生』が収録されている。
まきちゃんぐ
中島みゆきと同じ事務所に所属していて、おしゃべりと歌にギャップがあることから「平成の中島みゆき」と呼ばれているまきちゃんぐ。
そんな彼女の『誕生』は、ピアノを伴奏に柔らかく歌われている。
木山裕策
会社員の傍ら歌手活動を行っている木山裕策。
その柔らかでぬくもりのある声で歌った『home』がヒットし2008年に紅白出場を果たしている。
2016年発売の『F 守りたい君へ』に収録された木山版『誕生』は、夕陽がよく似合いそうな仕上がりになっている。
YOKO(久我陽子)
中島みゆきがYOKOに提供した『闘りゃんせ』(2008年発売)。
そのカップリング曲にこの『誕生』が収録されている。
ライブ映像で観る『誕生』
『歌旅 ~中島みゆきコンサートツアー2007~』
2008年にDVD、2011年にBlu-rayで発売された『歌旅 ~中島みゆきコンサートツアー2007~』。
2007年に行われたコンサートツアーで歌われた『誕生』を「動く中島みゆき」で楽しめる。
他にも『糸』『命の別名』『宙船』『ファイト!』『地上の星』など名曲ばかり。
オリジナルとは違う生のライブ感を味わえるぞ。
『誕生』のみんなの感想
前に何かの番組で、夏目アナが、「中島みゆきの「誕生」を合唱で歌って好き。一人じゃないんだなぁって」と言ってて、薄っぺらwと思ってたら、マツコが、
「いや、逆でしょ、あれは人は独りって事よ」と言ってくれて、
マツコさすがです!と思った。— 夕闇乙女 (@yuuyakemanto19) June 22, 2020
焼酎飲みながら中島みゆきの誕生聴いてたらボロボロ泣いちゃった😢😢😢
— 松下駿平(ちょっと仮名) (@ma_schumpeter) June 6, 2020
誰かのツイートで中島みゆきさん好きって言うの見たのです。私も好きです。小学6年の卒業式で誕生歌ってたからずっと。縁あり中学ではファイトを歌って…この2つの歌には随分と助けられました。若い子にも聞いて欲しいです。今しんどいと感じてる人にも。
— 愚公移山_φ(・_・ゆぽ🐣 (@4BHwCpORs1RIsOf) May 27, 2020
もしかしたら、
素直に受け止められるような子に
ならないかも知れないけれど
もし私が子供を産めるとしたら
中島みゆきさんの【誕生】っていう
曲と一緒に思いを伝えられる母親になりたい— 煉 (@uDdwsYH1RPsIbB9) May 26, 2020
中島みゆきの「誕生」は、『泣きながら 生まれる子供のようにもいちど生きるため 泣いて来たのね』の部分が好きなんだよね。
— しるひとつ (@shiruhitotsu) May 25, 2020
『誕生』は『糸』と処方すると心に効く
『誕生』は人生で壁にぶつかった時に聴きたい一曲だが、『糸』もまたそんな時に聴くと救いになる一曲だ。
この2つの曲を聴いてぜひ元気を出してくれ。
『誕生』はサブスク(定額制)でも聴ける
2020年1月8日よりついにサブスクリプション(定額制)で中島みゆきの曲を聴けるようになった。
『Amazon Music Unlimited』に登録すれば、月額980円(プライム会員は月額780円)で中島みゆきのシングル曲(カップリング含む)が聴き放題。
(※1975年版『時代』、映画主題歌バージョン『瞬きもせず』は含まない)
もちろん中島みゆき以外のアーティスト曲も聴くことができる。
その数、6500万曲以上。
30日間の無料お試し期間があるので、ぜひ一度試していただきたい。
『Amazon Music Unlimited』の公式サイトはコチラ。

