1979年11月21日に発売された6作目のアルバムに収録された
『あばよ』
をみていこう。
初めて研ナオコに提供されたこの曲。
研ナオコが中島みゆきに曲を依頼した経緯や、出会いなどをまとめてみたぞ。
中島みゆき『あばよ』
作詞・作曲 中島みゆき
編曲 後藤次利
研ナオコが中島みゆきに曲を依頼した経緯
きっかけは『アザミ嬢のララバイ』
研ナオコが中島みゆきに曲を書いてほしいと思ったのは、飛行機の中でのことだった。
機内のオーディオチャンネルで研がたまたま聴いていた曲が、中島みゆきのデビュー曲『アザミ嬢のララバイ』だった。
当時、中島みゆきの存在すら知らなかった研ナオコだったが、すっかりこの曲の虜になってしまった。
研は早速、隣に座っていたマネージャーに、
「この人に曲作ってもらいたい」
と、リクエストしたという。

依頼を受けた中島みゆきは?
中島みゆきは研ナオコをCMの中で見ていた。
当時、カメラのCMに出演していた研ナオコは滑稽な三枚目役を演じていた。
そのCMはこんな感じ。
カメラを持った愛川欽也とその隣に研ナオコ。
愛川欽也が最近凝り始めているという一眼レフのカメラを自慢げに掲げ、しかも、美人しか撮らないというポリシーをひけらかす。
そして、研と欽也が笑いながら見合う。
欽也が研ナオコにレンズを向けるが、不美人にニタニタ笑う研を撮ることを断念する。
中島みゆきはコレを見て、
「あれだけ人を笑わせることができるんだから、泣かせることもできるんじゃないか」
と思ったそう。
そして、研ナオコに提供したのが『あばよ』だった。
歌うのが難しい?
1977年「週刊女性」2月15日号のインタビューの中で、中島みゆきは『あばよ』について、
「伝統的な歌謡曲の手法をふまえていないだけに、うたいやすい、楽な歌だと思いますけどネ」
と答えているが、一方の研ナオコはレコーディング中、息継ぎするタイミングが掴めず、苦労したようだ。
研ナオコが初めて『あばよ』を聴いたとき
研ナオコは、『あばよ』を初めて聴いたときのことを2018年2月13日放送のBSジャパン『あの年この歌~時代が刻んだ名曲たち』で語っている。
研ナオコは、この曲を中島みゆきの歌声で初めて聴いている。
届いたデモテープにはギターの弾き語りで歌う中島みゆき本人の声が吹き込まれていたという。
2016年9月29日に放送されたテレビ朝日系『甦る歌謡曲』の中で研ナオコは、その時の心境を語っている。
中島みゆきの歌う『あばよ』を聴いたとき、研はその歌声と世界観に圧倒され、
「私には歌えない」
と思った。
だが、なんとかこの世界観を、自分というフィルターを通して歌わなければならないと思い直し、そこから自分の歌い方を変えていったそう。
研ナオコが初めて中島みゆきと会った日
また『あの年この歌~時代が刻んだ名曲たち』では、中島みゆきと初めて対面した日のことも研ナオコは語っている。
それはレコーディングの日。
スタジオ入りした研は、会うことになっていた中島みゆきの姿を探すが、どこにも見あたらない。
スタッフに教えられようやく見つけた中島みゆきは、部屋の隅の暗いところに目立たない感じで座っていた。
髪一本結わいて、メガネかけて、小さく何か書きモノをしていたという。
物静かな感じで挨拶する中島みゆきは、オールナイトニッポンにみるぶっ飛んだ印象とは全く違っていたそうな。
『あばよ』の販売形態
『あばよ』は、元々は研ナオコが1976年8月25日に出したアルバム『泣き笑い』に収録されていた曲だった。
同年9月25日に、シングルカットされ、B面の『強がりはよせよ』(こちらも中島みゆきの楽曲)とセットで発売している。
中島みゆきが初めて他アーティストに提供した曲
『あばよ』は中島みゆきが初めて他アーティストに提供した曲だ。
中島みゆきは、研ナオコに『LA-LA-LA』という曲も提供している。
『LA-LA-LA』の方が『あばよ』より先にリリースしているため、こちらの方を初めての他アーティストへの楽曲とする見方もあるが、曲の完成した順でいくと『あばよ』の方が先。
なぜ『LA-LA-LA』が先に発売されたのか?
では、なぜ『LA-LA-LA』が先に完成した『あばよ』よりも前に発売されたのか?
それは戦略的なものだった。
当時、研ナオコは『愚図』という曲を出しヒットさせたばかりだった。
悲しい女を歌った『愚図』の後に、これまた悲しい女の『あばよ』という順番よりかは、間に明るい曲調の『LA-LA-LA』をワンクッション置いた方が『愚図』も『あばよ』も双方が生きるだろうという狙いがあった。
『あばよ』は中島みゆき自身を書いた曲
1980年1月3日のラジオ番組『みゆきと飛んで60分』の中で、中島みゆきは『あばよ』について語っている。
中島みゆき曰く、『あばよ』は研ナオコを意識して書いた曲ではないという。
もちろん研ナオコに依頼を受け書いた曲ではあるが、1976年の「週刊明星」12月19日号のインタビューでは、
「私自身のことを書いたのよ。
器用じゃないから、フィクションは歌にできないの。
自分の体験、自分の気持ち、いつでもそれが出ちゃう」
と答えている。
1977年「週刊女性」2月15日号のインタビューでは、『あばよ』の主人公について、
「ドジとしかいいようがないですねエ」
と答えているが、コレは自分のコトを言っているのだ。
だが、その一方で研ナオコの存在もまたこの曲を生み出すためには欠かせなかった。
1978年「ヤングギター」1月号のインタビューでは、
「半分ぐらいは彼女がいたから書けた。
彼女があたしの歌をひっぱり出したってことだと思うね」
と答えている。
この頃、中島みゆきは様々な雑誌のインタビューで『あばよ』について答えているが、いずれにも、研ナオコと自分の性格が重なるところが大きかったとコメントしている。
2007年に放送されたテレビ東京『たけしの誰でもピカソ』では、中島みゆきが研ナオコへ宛て手紙を送っている。
その手紙の中で、中島みゆきは、
研ナオコの生活を聞き取り調査して書いた曲ではないのに、研ナオコが歌うとまるで、最初から研ナオコのためにあるような曲に思えてくるから不思議。
「自分は研ナオコの筆記用具みたいな存在」とも書かれていた。
研ナオコの『あばよ』を聴いた中島みゆきの感想
1977年「月刊平凡」1月号のインタビューで中島みゆきは、初めて自分のつくった曲を名曲と思い、部屋の中で14回も聴いたことを明かしている。
『あばよ』がヒットしたその年
研ナオコの『あばよ』はオリコン1位を獲得した。
シングルは64.4万枚を売り上げ、研ナオコにとって最大のヒット曲となっている。
この年に、研は、日本レコード大賞歌唱賞、日本歌謡大賞放送音楽賞、FNS歌謡祭最優秀歌謡音楽賞を受賞する。
またこの年、中島みゆきが提供した曲『LA-LA-LA』で『第27回NHK紅白歌合戦』に初出場を果たしている。
『あばよ』の歌詞の内容
いわゆる失恋ソング。
「やさしい人」と女が呼ぶその男は、キッパリと別れを告げられない男なのだろうか。
居留守を使って女に会おうとしない。
だけど、面倒な優しさも兼ね備えている。
「あいつどんな顔していた?」と人伝いに女の様子を気にかけてしまうような男なのだ。
そんな優柔不断な男なので、女は自分にこう言い聞かせ、自ら未練を断ち切るしかないのだろう。
「あの人はお前に似合わない」と。
収録アルバム
研ナオコのリリースから3年後の1979年11月21日に、中島みゆき版『あばよ』がアルバム『おかえりなさい』に収録されリリースされる。
中島みゆきの『あばよ』は、研ナオコのよりもずいぶん、ゆっくりしたペースで歌われていて、そのぶん、哀しみの根が深いように感じられる。
このアルバムは、小柳ルミ子『雨…』や加藤登紀子『この空を飛べたら』など、全曲、中島みゆきが他アーティストに提供した楽曲をセルフカバーしたものになっている。

カバーしたアーティスト
ちあきなおみ
1977年に発売されたちあきなおみのアルバム『ルージュ』に収録されている。
こちらはA面の6曲が全て中島みゆきが手掛けた楽曲で、『あばよ』の他に、代表曲『ルージュ』も収められている。
『あばよ』は、ちあきなおみと中島みゆきが出会うきっかけになった曲だ。

徳永英明
2010年に発売された徳永英明のカバーアルバム『VOCALIST 4』に収録。
これまでも『時代』や『わかれうた』などをカバーしてきた徳永英明。
カバーアルバム第4弾で、『あばよ』をカバーしている。
歌謡曲から離れたアレンジが施されていて、まるでジャズ喫茶で聴いているような錯覚に陥る。
『あばよ』のみんなの感想
中島みゆきの「あばよ」の歌詞が刺さる
カラオケで歌いたい— 歌 (@km_ophelia) February 22, 2020
あばよはいいですよね~、バーに行ってもこれを歌うので、ちょ…とザワザワさせたことがあります💦
あばよも中島みゆきの歌から知ったので実は研ナオコさんはあんまり詳しくないんです😵— 夏さぶろう (@chiico9999) January 31, 2020
あばよを研ナオコバージョンと中島みゆきバージョンで聴き比べても声がめっちゃ似てて分かりづらい
— じゅんにゃん@ドア音セッション (@Misaki_Maebara) January 12, 2020
中島みゆき「あばよ」のお琴バージョンが流れる店内♪
— あべのっち (@abenotti_gold) September 4, 2019
6年生の秋だったかな、仲の良い4人組で秋葉原の交通博物館に遊びに出掛けた。その頃ヒットしてた研ナオコの『あばよ』が街に流れてたのをずっと忘れない。子供なのに何で中島みゆきの憂いに惹かれるのか不思議だし、何が旨かったとか綺麗だったとか他のこと覚えてないし。音楽のチカラってすごい。
— kenzi(sirius) (@tenkist) August 12, 2019
『あばよ』はこんな時に聴こう
失恋してもプライドを損ないたくない時に『あばよ』を聴こう。
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