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中島みゆきと薬師丸ひろ子の対談|1987年放送「ウィークエンドファンタジー」より

1987年7月4日放送の「ウィークエンドファンタジー」(FM東京)に中島みゆきがゲスト出演している。
司会は女優・歌手の薬師丸ひろ子

薬師丸へ提供した『空港日誌』『未完成』の裏話、『時代』にまつわるエピソード。
中島みゆきの音楽へのスタンスなど、普段のラジオではなかなか聴くことのできない真面目なことが語られている。
また、薬師丸がそれまでどのように中島みゆきの音楽と接してきたのか、興味深い内容になっている。

この記事は、

  • 薬師丸ひろ子から曲の依頼を受けて中島みゆきが思ったこと
  • 『空港日誌』『未完成』『時代』の制作裏話
  • コンサートで緊張した時に中島みゆきが思うこと

について書いてます!

夢おじ子
夢おじ子
中島みゆきの曲を全て聴いてきたファン歴30年以上の夢おじ子が解説!

薬師丸ひろ子はずっと中島みゆきを聴いてきた

みゆき「こんばんは中島です、どうぞよろしくお願いします」

番組の落ち着いた雰囲気に合わせて、控えめな挨拶で登場する中島みゆき。
司会は、女優であり歌手でもある薬師丸ひろ子だ。

この放送より2日前に、アルバム『星紀行』をリリースしたばかり。
収録されている『空港日誌』『未完成』は、中島みゆきが薬師丸のために書き下ろした曲だ。

中島みゆきと初めて会うことになった薬師丸が、まず頭に浮かんだのは、高校時代の思い出だった。
当時、勉強を教えてもらっていた家庭教師の先生が中島みゆきのファンで、薬師丸の家にあった中島みゆきのCDを借りていったことがあった。
その先生のことが、思い出されたのだ。

みゆき「じゃ、先生孝行の仕事をしてしまったって感じ?(笑)」

薬師丸ひろ子から曲依頼を受けて思ったこと

中島みゆきが薬師丸ひろ子の方から曲の依頼を受けたのは、ライブアルバム『歌暦』の制作を終えたくらいの頃だった。
仕事がひと段落して間が空いていたところへ、「薬師丸ひろ子の曲を書いてみないか?」という話が舞い込んできて驚かされたという。

自分の曲のイメージが、果たして薬師丸に合うものだろうか。
そんな懸念があったようだ。

みゆき「前からちょっと思ってたことがあってね。薬師丸さんの声ってすごく透き通ってて、スーッと前に出てく素直な声なんだけど、ぜったい毒があると私は思ってたのね(笑)」

その「毒」に惚れていた中島みゆきは、ここを取っ掛かりにして曲を作ろうと思い立ったのだ。

『空港日誌』の制作裏話

薬師丸ひろ子のアルバム『星紀行』に収録されている『空港日誌』は、中島みゆきが書き下ろした曲だ。
このアルバムのコンセプトからイメージを膨らませて作ったという。

みゆき「薬師丸さんの声は、どうしても夢のような声になるんじゃないかと思うとこがあったのね。それをすごく日常的なとこへ持っていって毒を表現したいなと思った時にね、「広島空港」って言葉が出たんです」

あなたの心が 疲れていた頃へ
もう一度 呼びだす 広島空港
(『空港日誌』より)

⇒薬師丸ひろ子『空港日誌』(レコチョク試聴あり)

⇒『空港日誌』の記事はコチラ

中島みゆきにとっての広島空港は、ツアーなどでよく利用する馴染みのスポット。
余談であるが、中島みゆきは、この空港で大恥をかいたらしい。
ファンに見送られる中、保安検査場をくぐった中島みゆきは、その先にあるガラスに気づかず顔面をぶつけてしまう。

『未完成』の制作裏話

薬師丸ひろ子のアルバム『星紀行』に収録されている『未完成』もまた、中島みゆきが書き下ろした曲だ。
この曲は、写真で見た薬師丸ひろ子のイメージで書いたという。

一方、薬師丸は、中島みゆきが、いったい自分のためにどんな曲を書いてくれるのか、皆目見当つかなかった。
そして完成したのが、女心を色濃く映した曲だ。

ずるい人ね 貴方からはサヨナラとはきり出せない
未完成の絵を見ながら グラスの中 鍵を隠すわ
(『未完成』より)

⇒薬師丸ひろ子『未完成』(レコチョク試聴あり)

⇒『未完成』の記事はコチラ

「あんまり女っぽくすると、本人も辛くないですかね?」という心配の声もあったが、中島みゆきはそれに対してキッパリ言う。

「大丈夫ですよ、女なんですもん」

その読みは当たる。
後に、テープで聴いた薬師丸の『未完成』は、自分のイメージ通りだった。
意外だったのは、息継ぎがほとんどない曲を歌い上げてしまった薬師丸の肺活量。

みゆき「私の歌う歌って、ブレスの箇所が少ないんですね。どうしても言葉数が多くなっちゃってブレスの箇所が足りないって毎回言われるんですよね」

今回の『未完成』に至っては、そういう心配はないだろうと思っていたが、やはり息継ぎが辛い曲になっていた。

薬師丸「この曲で訓練したせいか分からないんですけど、昨日カラオケに行って『時代』を思い切り歌ったんですけど、こんな上手に歌えるとは思わなかったです(笑)」
みゆき「アハハハハ!」

『時代』の裏話

薬師丸ひろ子が中島みゆきを初めて知るきっかけになった曲が『時代』だ。

まわるまわるよ 時代はまわる
喜び悲しみくり返し
今日は別れた恋人たちも
生まれ変わって めぐりあうよ
(『時代』より)

⇒『時代』(1975年シングルバージョン)(レコチョク試聴あり)

⇒『時代』の記事はコチラ

薬師丸「何年くらい前の曲なんですか?」
みゆき「11年…かな?」
薬師丸「じゃ私が小学生くらいの曲ですね」
みゆき「いや~アハハハハ」
薬師丸「ギターを持ってらした姿とジーンズを穿いてらした姿がすごく印象的で、なんでかよく分かんないですけど、すごくよく口ずさんで歌ってて気持ちが良かったんです。この歌を作られたのは高校生の時なんですか?」
みゆき「これ書いた時は、大学生だったでしょうかね」
薬師丸「何かのきっかけがあって?」
みゆき「そういうのはなかったです。ちょっとずつフレーズ変えていって、繋いだら、ああこんな風になっちゃったみたいな」

『時代』は、ヤマハが主催するポピュラーソングコンテストに応募して、グランプリを獲得した曲でもある。
応募した経緯についても振り返っている。

みゆき「その頃、暗い歌も持ってたんですけどね、その頃のブームとして思ったのは、あまり根の暗い歌は賞はもらえないんだと。派手な曲で賞はもらって、レコード出させてくれるってんなら暗いのまとめて出そうと(笑)やっぱコンテストで『うらみ・ます』は出せないですよ(笑)」

中島みゆきが曲を書き始めた時期

薬師丸「中学生とかそのくらいから曲は書いてたんですか?」
みゆき「そうですね。書いてたのは中学生くらいからでしょうかね」
薬師丸「その頃の曲って、今はどうされてるんですか?」
みゆき「内緒で持ってます(笑)忘れた頃に出そうかしら(笑)でもそうすると、30過ぎてセーラー服着ると不気味なのと一緒ですよね(笑)」

その言葉に、薬師丸ひろ子の好奇心がいっそう掻き立てられる。
いったい中島みゆきは、どんな学生時代をどういう視点で過ごしていたのか。
そうやって生まれくる曲はどんなものなのか?

薬師丸「発表なさるおつもりはあまりないですか?」
みゆき「機会があったら小出しにしてみようかしら」

中島みゆきの考える「いい仕事」とは?

中島みゆきは、女優という仕事の苦労を考える。

みゆき「私は自分の言いたいことをいつも言い続けてるけど、薬師丸さんみたいな立場になると、自分が言いたいこと以外に、いろんな人間の心理を把握していかなきゃなんないでしょ? 作業としてはすごい大変ですよね?」

薬師丸ひろ子にとって、泣く芝居の時に苦労が多い。

薬師丸「私、涙がなかなか出ないんですね。それは技術として涙を出さなきゃならないってこともある訳なんですよね。私、普段はけっこう家で泣いたりするんですけど、「でもなんで芝居の時は涙が出てこないんだろう」って思いに返っちゃうんですよ。そうすると、芝居どころじゃなくて、自分をどんどん痛めつけるっていうか」
みゆき「手段として泣けるようになったら楽だけど、そういうことばっかりやってると腐りますよね」
薬師丸「3つ。慣れない、飽きない、冷めない。これがある限りホントに素人みたいなもんだから、やってられるかなって気がして」

今の薬師丸は、このように前向きに捉えているが、かつては思った通りの芝居ができないと自信を喪失していた。

みゆき「映画も、歌もレコード作ったりもそうですけど、コンビネーションによって生まれてくることがすごい多いと思うんですよね。自分だけ痛めると、深くはなるけど、辛いですからね」

歌手という身であっても、作り笑顔をせざるを得ない状況があると、中島みゆきは言う。
「自分のことをさらけ出すのは得意な方じゃないけど」と、普段は言わないことを語り始める。

みゆき「外で仕事して、ウチに帰った時に、その仕事場に自分はいなかったと思う日は寂しいよね。あれは全部つくり笑顔だったのよと思うような仕事をしてきた日は、家に帰った時は寂しいね。もし、今、家で化粧落とした顔と、外でしてきた顔は違うかもしれないけれども、それでも、私がそこにいたと思える仕事をした日は、いいお風呂に入れますよね」

コンサートで緊張した時に中島みゆきが思うこと

7月からツアーが始まる薬師丸ひろ子
同じ頃、中島みゆきの方でも全国ツアー「SUPPIN Vol.1」がスタートすることになっている。

薬師丸「楽しみですか?」
みゆき「今、歌詞覚えるので七転八倒(笑)ひろ子ちゃんの方はどうですか?(笑)」
薬師丸「私は初めてなんでね、意気込みからどういう心構えで臨んだらいいのか、みっちり毎日絞られて(笑)」
みゆき「いいな~教えてくれる人がいて(笑)」

そんな薬師丸は、コンサートに臨むにあたっての秘訣を中島みゆきに仰ぐ。

みゆき「アドバイスってほどのこともないんですけどね」

中島みゆきが謙遜するのも理由があった。
2人のデビューはほとんど差がない。
中島みゆきは1975年。
薬師丸ひろ子は1978年。
だから、教えられるというほどの立場でもないのだ。

とはいえ、ステージで歌うというキャリアで見れば、中島みゆきが先輩だ。

薬師丸「どうしていいか分からないくらいの緊張に駆られるとき、どうやったら自分を抑えたらいいんでしょう?」
みゆき「そうですね。一番いいのは抑えないってことですねアハハハハ!」

実は、中島みゆき自身も、年々緊張の度合いを増しているのだ。
コンサートの2カ月前は、決まって同じ悪夢を見る。
開始前に劇場になるブザーが鳴り、ステージに立った中島みゆきは、そこから歌詞を丸っきり思い出せず立ち尽くす。

そんな夢にうなされて起きるということが、多々あるらしい。
中島みゆきにとって、コンサートで一番怖いのが、開始前のブザーが鳴る瞬間だという。

歌詞を忘れたらどうしよう?
歌詞を間違えたらどうしよう?

つい弱気になってしまうが、それでもステージに立つ理由があった。

みゆき「自分の場所ってのが、ステージの袖から見えるんですよ。マイクスタンドがあって、そこに自分のギターなんかが置いてあって。あとで歌詞を間違えたら何言われるか分かんないっていうプレッシャーは周りを渦巻いてるけども、あのピンのあたってる、あの場所しか今私にはないんだと思ったら、そこ行くしかないですよね」
薬師丸「なるほどねぇ。ステージに立っていざこれからという時に、足がすくむって感覚は今までにありましたか?」
みゆき「もちろんありますね。自分の場所だと思って立っても、物理的には毎日ステージの床なんかが違ったりするでしょ? そうすると、足の裏から伝わってくるものがすでに、自分に呼びかけてくるものがありますよね。ここはステージなんだぞ、っていう感じのね」

何とか自分の場所にしようとするうちに2時間が終わったということもあるようだ。
だが、このような状況を打ち砕いてくれる突破口が、案外、自分の外にあったりする。

みゆき「今までやってきて思うのは、そういう時に引っ張ってくれる力が客席とかメンバーとかスタッフとかに生まれてくることがあるんですね。歌詞忘れて真っ青になりそうな時に、頑張んなさいっていう意識にフッと引っ張ってくれる時があるんですよ」

コンサートでは強く客席との連帯感を感じる。
こちらが歌詞を間違えてうろたえている時には、それ以上に客席がうろたえる。
そんな光景を、これまでにたくさん目の当たりにしてきた。

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