中島みゆきが『永遠の嘘をついてくれ』を吉田拓郎に曲提供した経緯|つま恋の舞台裏

ニューヨーク

1996年10月18日に発売された24作目のオリジナルアルバムに収録された
『永遠の嘘をついてくれ』
をみていこう。

吉田拓郎にこの曲を提供した経緯や、歌詞の解釈、つま恋での裏話などまとめてみたぞ。

中島みゆき『永遠の嘘をついてくれ』

『永遠の嘘をついてくれ』(レコチョク)

作詞・作曲 中島みゆき
編曲 瀬尾一三

『永遠の嘘をついてくれ』が収められているアルバム

『パラダイス・カフェ』

『パラダイス・カフェ』(レコチョク)

1996年10月18日に発売された24作目のオリジナルアルバム。

このアルバムの3曲目に『永遠の嘘をついてくれ』が収められている。

他にも、日本テレビ系ドラマ『家なき子2』の主題歌『旅人のうた』(アルバムバージョン)やテレビ朝日系ドラマ『はみだし刑事情熱系』の主題歌『たかが愛』も収録されている。

『永遠の嘘をついてくれ』の歌詞の意味&解釈

『永遠の嘘をついてくれ』の歌詞は、様々に解釈されている。
大別すると、以下の3パターン。

男女の恋愛を描いた歌詞

この説を主張する人の解釈はこうだ。

自分のもとを離れ行方を眩ませてしまった恋人からある日手紙が届く。

手紙にはその恋人ではない誰かの下手な代筆文字で、「上海の裏町で病んでいる」と書かれてあり、さらには「探しにくるな」と結んでいる。

自分の前から去った理由は聞きたくはない。

「今はまだ二人とも旅の途中」とか「愛ゆえのことだった」とか都合のいい「嘘」をつき続けて欲しい。

そういう思いで「永遠の嘘をついてくれ」なのだ。

確かにココだけ切りとれば、男女の恋愛にもとれなくない。

ただ、それで考えると整合がとれない部分が出てくる。

歌詞には、この手紙のことを「友からの手紙」とハッキリ書いてある。

友達から恋人へ発展しそうなグレーゾーンの関係と取れるかもしれないが、それすら首を捻ってしまうのは、この1人称の視点で書かれている歌詞には「しないでくれ」「笑ってくれ」などという男言葉が使われているからだ。

一般的に女性は、「君よ」「~してくれ」という言い方をしない。

一方、手紙を寄こしてきた相手の方は、
「この国を見限ってやるのは俺の方だ」
と吐き捨てた一幕が描かれているので、男性であることは明白である。

つまり、この歌には、2人の男性しか登場していない。

ゲイのカップルでない限り、恋愛としては成立しない歌詞である。

学生運動を描いた歌詞

そして次に浮上してくるのが、2人がかつて学生運動で肩を組んだ同志という説。

「この国を見限ってやる」というのは、なかなか日常では使わない言葉である。

この歌詞から推測できることは、手紙を寄こしてきた友が、かつて国を相手に闘い、しかも追われる身であったということだ。

「上海の裏街で病んでいる」と手紙に書いていることから、その後、国外逃亡しているとも考えられる。

以上の境遇にしっくりくるのが、元学生運動の活動家。

活動をやりすぎた結果、国家に危険分子として目をつけられ、追われた結果、海外へ高飛びしたという筋が、妙にぴったりとハマるのだ。

手紙を受け取ったこの歌の主人公は、かつて「君」と学生運動に励んでいた同志だと考えられる。

理想を描きながら活動に身を投じていた主人公だったが、やがて世間と折り合っていくために、活動から足を洗い、無難に就職する道を選んだのだろう。

本音を殺し世の中の歯車に組み込まれていく弱い自分。

世の中に抗い闘い続ける「君」の姿が輝いて見えていたかもしれない。

だが、その「君」からある日、弱った内容の手紙が。

「上海の裏町で病んでいる」

見知らぬ誰かの代筆文字がその深刻さを物語っている。

衰弱した「君」を認めたくない想いがあり、それで「永遠の嘘をついてくれ」なのか。

中島みゆきが吉田拓郎に曲提供した経緯

だが、一番説得力を持つのは吉田拓郎のことを歌った歌ではないかという説。

なぜなら、この『永遠の嘘をついてくれ』は中島みゆきが吉田拓郎にオファを受けて書いた曲だからだ。

自信を失っていた吉田拓郎

事の発端は、1994年のチャリティー・コンサート『日本を救え’94~奥尻島、島原・深江地区救済コンサート』で吉田拓郎が弾き語りで歌った『ファイト!』だった。

吉田拓郎は『ファイト!』を歌い終えると、「おお、コレは俺の歌だ!」と感銘を受けたという。

実はこの頃、吉田拓郎はスランプに陥っていた。

曲が書けなくなり引退すらも考えていたという。

「俺はこんな曲が作りたかったんだよ!」

と吉田拓郎を言わしめた『ファイト!』との出会いが、後に『永遠の嘘をついてくれ』と繋がっていく。

ファイト
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吉田拓郎が中島みゆきに楽曲依頼した日

『ファイト!』を歌ったその年の秋、吉田拓郎は、中島みゆきと代々木のレストランで会っている。

「もう自分には『ファイト!』みたいな曲が作れない」

そういって中島みゆきに曲を作って欲しいと依頼したのである。

「遺書のような曲をお願いします」

それが吉田拓郎の注文だった。

中島みゆきは、これを最後の曲にしないという条件で依頼を引き受けた。

そして出来上がったのが、『永遠の嘘をついてくれ』だ。

中島みゆきは吉田拓郎の追っかけをやっていた

中島みゆきは、学生時代に初めて吉田拓郎と会っている。

当時、中島みゆきは、学業の傍ら札幌のコンサート会場でアルバイトしていて、楽屋で休んでいる吉田拓郎にお茶出しをしていた。

実は、この時の中島みゆきを吉田拓郎は覚えていて、2010年10月18日の『坂崎幸之助と吉田拓郎のオールナイトニッポンGOLD』に中島みゆきがゲスト出演した際に、このことを語っている。

吉田拓郎は、その時の中島みゆきの格好まで記憶していた。

「その時に白いミニスカートだったんだよ」

拓郎の思わぬ発言に中島みゆきは「うぎゃ」と小さく悲鳴をあげる。

「可愛い子だと思ってさ」とその時の印象を拓郎は語っている。

この頃から中島みゆきは吉田拓郎の追っかけをやっていて、吉田拓郎を「よた様(吉田の『よ』と拓郎の『た』を取って?)」と呼ぶ信奉ぶりだ。

中島みゆき曰く、未だに吉田拓郎は「雲の上の人」の存在なのだ。

そんな人が吐いた弱音ともとれる「遺書のような曲をお願いします」

しかも、吉田拓郎が詞・曲両方を人に依頼するというのはコレが初めてらしい。

この時、中島みゆきの胸の中には、何としても応えてやりたいと熱いものがたぎっていたのではないだろうか。

吉田拓郎が聴いた『永遠の嘘をついてくれ』

吉田拓郎のもとにデモテープが届いたのは、レコーディングでバハマへ発つ直前だった。

テープからは、『永遠の嘘をついてくれ』を歌う中島みゆきの声が流れる。

一説には、泣き叫ぶような激情を込めた歌声だったと言われているが、吉田拓郎はラジオ番組で「鼻歌のような歌」と語っている。

拓郎へのメッセージ

「遺書のような曲をお願いします」

中島みゆきは、この言葉に、自ら音楽から遠ざかっていこうとする吉田拓郎を感じたのだろうか。

「嘘であってほしい」

『永遠の嘘をついてくれ』というタイトルには、そんな気持ちが窺える。

「二人とも旅の途中だと」という歌詞は、まだ2人で音楽の世界を探究し続けたいという願いかもしれない。

上手く歌えない

吉田拓郎はこの難解な歌に手を焼いたという。

レコーディング先のバハマで何度も撮り直しをしたが、しっくりくる歌い方ができず、その後、ロサンゼルスに移り、今度は弾き語りで歌ってみるも、コレも上手くいかない。

そして、日本に帰ってきて、自宅に籠って苦闘した結果、ようやく完成形ができあがったのである。

吉田拓郎版『永遠の嘘をついてくれ』

吉田拓郎『永遠の嘘をついてくれ』(レコチョク)

1995年に発売されたアルバム『Long time no see』にも収録されている。

中島みゆきと吉田拓郎の楽曲は似ている

吉田拓郎の楽曲によく見られる「字余り」「字足らず」作詞法は、中島みゆきの楽曲の中でもよく見られる。

この『永遠の嘘をついてくれ』も、1つの音符をはみ出す形で歌詞があてがわれているその手法がとられている。

坂崎幸之助『ファイト!』を初めて聴いたとき、「あ、吉田拓郎の曲みたい」という感想を抱いたらしい。

中島みゆきの楽曲が吉田拓郎の影響を色濃く受けていると思わせる例は、他にもある。

それは中島みゆきが2007年に行ったコンサートツアーで、吉田拓郎の『唇をかみしめて』をカバーして歌った時のことだ。

ちなみに、人の作った曲を歌うというのは中島みゆきにとって異例中の異例。

それはさておき、この中島みゆきの『唇をかみしめて』が、まるで彼女のオリジナル曲だと錯覚してしまうほど違和感がないのである。

中島みゆきが、かつて「女拓郎」と呼ばれていたのもこれを聴けば確かに頷ける。

この中島みゆきが『唇をかみしめて』を歌っている映像は、ライブDVD&Blu-ray『歌旅 ~中島みゆきコンサートツアー2007~』に収録されている。

CD『中島みゆき ライブ リクエスト ~歌旅・縁会・一会~』でも聴ける。

『つま恋』での舞台裏

『吉田拓郎 & かぐや姫 Concert in つま恋 2006』で、中島みゆきが飛び入りで『永遠の嘘をついてくれ』を歌っている。

白いブラウスとジーンズ姿で現れた中島みゆきはここで憧れの吉田拓郎とデュエットを果たしている。

この模様はNHKBSハイビジョンにて放送されていて、中島みゆきの登場とともに会場からはどよめきが起こる映像が流されているが、実は、この時のことを冷や汗ものだったとラジオ番組『新栄トークジャンボリー 小堀勝啓のお気楽パラダイス』で語っている。

中島みゆきによると、ステージに出た瞬間、観客の方は静まり返っていたのだった。

突然の謎の女性の登場にキョトンとしていたらしい。

「帰れって言われてんのかなと思って」

と、その時の一瞬の「シ~ン」が中島みゆきには3時間くらいあるように感じたという。

それから、前にある大型ビジョンに中島みゆきの顔が映し出されてようやく、会場から歓声が上がったというのだ。

『吉田拓郎 & かぐや姫 Concert in つま恋 2006』吉田拓郎かぐや姫が31年ぶりにつま恋で行った野外コンサート。

13~21時までという長丁場のライブの中の、終盤部分5部に中島みゆきが登場した。

ステージに上がるまでの中島みゆき

中島みゆきは、「タダでライブを聴ける」という期待を抱いて出演オファを引き受けたという。

だが実際は、シークレットゲストということあって、自分の出番以外はずっと近くのホテルに缶詰め状態だったという。

ステージに上がるまでの事を2006年12月15日放送の『中島みゆきのオールナイトニッポン』で語っている。

ようやく出番が来て、中島みゆきは待機場所のホテルからワゴンに乗り込み会場まで運ばれた。

その車内というのがシークレットゲストだけに、みっちりカーテンをかけるという徹底ぶり。

「なんか私悪いことした?」

と、その時の心境を語る。

会場に着いて、『永遠の嘘をついてくれ』を歌い終えた中島みゆきは、またすぐさまワゴンに乗り込み、そのまま東京へと運ばれていった。

結局、ライブをタダで聴けるという期待は叶わなかったのだ。

去り際のコーラスとのハイタッチの意味

中島みゆきはリハーサルを行わずこの『つま恋』のステージに臨んでいる。

会場の下見すらも行っていないので、どこにコードがあって段差があるのか、ステージに辿り着くまでの道のりに不安があったという。

そこで中島みゆきは、『つま恋』でバックコーラスを務める坪倉唯子に目をつける。

中島みゆきのレコーディングやコンサートでも組むことが多い、いわば信頼を寄せる坪倉に、目印になって欲しいと頼むのだ。

『つま恋』の舞台袖からはステージが見えず、見えるのは坪倉の姿のみ。

ライブでは立ち位置が変わりやすいコーラスだが、絶対に動かないで欲しいと中島みゆきは坪倉に念を押した。

本番当日、坪倉唯子は目印になるべく派手なオーラを放っていたと、中島みゆきは語っている。

坪倉の居場所を頼りに無事ステージに辿り着くことができたという。

『永遠の嘘をついてくれ』を歌い終えた中島みゆきが、去り際にハイタッチしている相手がこの坪倉唯子だ。

あのハイタッチには「目印、ご苦労さん」という労いの意味が隠されていたのだった。

この坪倉唯子、実は『ちびまる子ちゃん』のエンディング曲『おどるポンポコリン』を歌ったB.B.クィーンズのボーカルだった過去があり、多くの人にとってずいぶんと馴染みのある歌手なのだ。

1990年に発売されたB.B.クィーンズ『おどるポンポコリン』は、オリコン週間ランキング1位を7度獲得し、164.4万枚の売上を記録した。

その年の日本レコード大賞をはじめ多くの賞を受賞した。

つま恋版『永遠の嘘をついてくれ』


『つま恋』で中島みゆき&吉田拓郎によって歌われた『永遠の嘘をついてくれ』は、DVD&Blu-ray『Forever Young Concert in つま恋 2006』で観ることができる。

花火のBGMに『永遠の嘘をついてくれ』

なぜか、このつま恋版『永遠の嘘をついてくれ』が各所の打ち上げ花火のBGMに使われている。

『吉田拓郎 & かぐや姫 Concert in つま恋 2006』でも吉田拓郎が『落陽』を歌っている最中に花火が打ち上げられたが、そのオマージュということだろうか?

モエレ沼芸術花火2016

2016年札幌市モエレ沼公園で行われた『モエレ沼芸術花火』

打ち上げられる花火をバックにつま恋で歌われた時の『永遠の嘘をついてくれ』が流されている。

京都芸術花火2019

天皇陛下御即位を奉祝し、花火と音楽をシンクロさせた芸術文化。

約1万3000発打ち上げられた花火のBGMに、やはりここでもつま恋版『永遠の嘘をついてくれ』が流されている。

ももクロへ歌った『永遠の嘘をついてくれ』

坂崎幸之助がCS放送のフジテレビNEXT『坂崎幸之助のももいろフォーク村NEXT』

共演しているももいろクローバーZが2019年6月13日の番組をもって卒業になり、坂崎幸之助から弾き語りで『永遠の嘘をついてくれ』をプレゼントしている。

坂崎幸之助は、『吉田拓郎 & かぐや姫 Concert in つま恋 2006』の時、会場にいたというから、中島みゆき&吉田拓郎『永遠の嘘をついてくれ』を聴いているはずだ。

一方、ももいろクローバーZは、2014年に中島みゆきから『泣いてもいいんだよ』の楽曲提供を受けている。

中島みゆきと坂崎幸之助とももクロ、歌で繋がる不思議な縁だ。

泣く
中島みゆき作詞作曲『泣いてもいいんだよ』はももクロへ提供された曲だった2014年10月29日に発売された 『泣いてもいいんだよ』 をみていこう。 ももいろクローバーZに提供されてヒットした『泣いて...

ポルノグラフィティ版『永遠の嘘をついてくれ』

『永遠の嘘をついてくれ』ポルノグラフィティによってカバーされている。

ポルノグラフィティ版は、2017年に発売された吉田拓郎トリビュートアルバム『今日までそして明日からも、吉田拓郎 tribute to TAKURO YOSHIDA』に収められている。

ポルノグラフィティは、吉田拓郎に『アポロ』の広島弁を作詞してもらった縁があり、このトリビュート企画に参加することになった。

数多くの吉田拓郎の楽曲の中からポルノグラフィティが選んだのが、『永遠の嘘をついてくれ』だった。

『永遠の嘘をついてくれ』のみんなの感想

『永遠の嘘をついてくれ』はこんな人に歌おう&贈ろう

同じ夢をみていた仲間が弱気になっている時、この歌を歌ってあげよう&贈ろう。

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中島みゆきが好きで、人よりちょっと詳しいだけが取り柄の人間やってます。