1980年9月15日放送の「サウンド・スペシャル」(FM東京)で、中島みゆきと松任谷由実が対談している。
互いのラジオ番組にゲスト出演して、様々なことを語り合ってきた2人だが、今回は、音楽や人生観、恋愛観について真剣に語っている。
2人の対談をみていこう。
(※部分的に編集しています)
この記事は、
- 中島みゆきと松任谷由実が考えるレコード
- 中島みゆきと松任谷由実が思う「自分らしさ」
- 中島みゆきと松任谷由実の恋愛観
について書いてます!
休暇の過ごし方
ユーミン「さて、今日は私の前にこんな方が遊びに来てくれました」
みゆき「中島です、こんばんは」
この年の6月に、松任谷由実は「中島みゆきのオールナイトニッポン」に出演している。
その時に、お互いの電話番号を交換したのだが、
ユーミン「電話かけてもぜんぜん掴まんないのね」
みゆき「え、くれた?」
まだスマホや携帯電話のない時代、このような行き違いは日常茶飯事だった。
ユーミン「北海道と東京はだいたいどのくらいのペースで行き来してんの?」
みゆき「この夏は盆休みが入ったから」
当時の中島みゆきは、故郷の北海道で暮らしていて、仕事の度に東京へ出ていた。
盆休み、正月休み、田植え休み、取り入れ休み。
聞き慣れない休みのバリエーションに、松任谷は大興奮だ。
みゆき「おたくは一体どういう暦で?」
ユーミン「私は、降臨祭とか、イースター休みとか」
みゆき「ハハハハ!」
中島みゆきにとっての音楽
レコードを出す時の心境
松任谷由実は、夕べ、寝る前に曲が頭に浮かび、それを忘れないうちに録音した。
そのため、気が高ぶってしまい、眠れなくなってしまったという。
夫の松任谷正隆にも、「その時間に書いたら絶対眠れないよ」と言われたらしい。
ユーミン「私の場合ね、レコードが出来て歌詞カード見た時に、「あ、手元を離れた」っていう感じがあるんだけど。そういうの、ない?」
みゆき「そうね、同じ意味なんだろうけどもね、この次歌う時は、別のタッチでやりたいなあとは思う」
曲を書いてレコーディングに臨む時には、曲を書いた時の気持ち通りに歌いたくないかもしれない。
また、レコードが出ると、それが決定稿のように捉えられがちだが、それには違和感があるようだ。
みゆき「コンサートなら、「間違えちゃいけない」と今まではそう思ってきたんだけど、「べつにいいじゃない間違えても」と最近は思っちゃう」
また、発表した曲でも、後で歌いたくなくなる歌詞がたまにあるという。
泣きながら歌うこともある
ユーミン「ライブ以上にレコーディングで感情高ぶっちゃう人もいるけど、レコーディングで泣いちゃったことある?」
みゆき「うん、ある」
その点、松任谷由実は違うようだ。
ユーミン「歌い方自体が感情に走ると、私なんかもう歌がしっちゃかめっちゃかで」
みゆき「私もあるよ(笑)」
だから、中島みゆきの場合、歌の体裁を崩さないくらいに、そこには限度を設けている。
松任谷由実が思う中島みゆき
ユーミン「あなたの発想力には、すごく興味がありますね」
松任谷由実は、自分と異なる中島みゆきの思考回路に興味津々だ。
日本の女性の中で、そういう風に好奇心を抱くのは、中島みゆきくらいなもの。
同じ音楽畑で活動しているが、女優やカメラマンなど、違うジャンルの友達と話しているような感じがするらしい。
中島みゆきが思う松任谷由実
松任谷由実の細い指
中島みゆきもまた、松任谷由実とは音楽以外のところで話をしているような印象があるという。
中島みゆきから見た松任谷は、ストイックに自分を追いつめていき、それが時に、意地らしく痛々しくさえ感じられる。
みゆき「もっと小ずるければ、もっと楽にやれるんじゃないかなあって思う」
中島みゆきは、松任谷の痩せた指が気掛かりだ。
みゆき「私も指細い方だけど、ユーミンのには負けてる。手が痩せるのって、そうとう精神的なものがないと痩せないんじゃない?」
ユーミン「そんなのあるの!? そんな苦労してんのかなあ私って(笑)でも、あなたは歌の中で追い詰めてるから、実生活は健康的なんだよね。私は歌の中では追い詰めてないから。食わねど高楊枝って感じだし」
自分らしさ
松任谷由実は、歌のカラーが世間に定着しているため、そのイメージを裏切らないように崩さず歌い続けていかなけれなばらないのかと、時々不安になるようだ。
みゆき「最近、私も特に思うんだけどさ、「私らしさってなんだろう」って思うのよね」
レコード会社から「あなたらしい曲をやってくれ」という注文を受けたり、会う人から「レコードのイメージと違いますね」と言われたり。
その度に、中島みゆきは、「自分らしさ」というものを深く考えるようになっていった。
みゆき「「私らしいことをしなくちゃ、私はみんなと同じになってしまうんじゃないか」とかさ、「人に埋もれるのは怖い」とかね、思ってたのね」
そのように思うようになったのは、学生の頃からだったという。
だが、ある晴れた春の日に、「自分らしさなんてどこにもない」ということに気付いたのである。
探し求めていた自分が存在せず愕然としたが、結局、自分がやろうとすることはみんな自分なのだと腑に落ちたのである。
ユーミン「子供のときから割とライバルとかそういうのをね、別に向こうは何とも思ってなくても、攻撃目標みたいなものを立てちゃうのよね」
みゆき「逆に、自ら攻撃目標になろうとしてる気がする」
ユーミン「ああ、そうかもしれないな」
みゆき「痛々しいねぇ」
ユーミン「そう? なんか褒められ会だな今日は(笑)」
中島みゆきの場合、これまでは攻撃目標になりたくないという思いが強かった。
だが、今は違う。
みゆき「どういう風に見られたっていいじゃないかと思うんだね。私らしさって元々あるもんでもない訳だし」
ユーミン「結局、音楽とか表現活動みたいなことしてると、「自分はいったい何なんだろう」って常に知りたいじゃない?」
中島みゆきとは、その方法論が違うかもしれないが、だからこそ比較してみたい。
ユーミン「中島みゆきさんと話して安心するというのはさ、明らかに異質だってところよね」
中島みゆきと松任谷由実の恋愛観
恋の歌に込めた情念
ユーミン「私の場合は、「見返してやる」ってのを歌に出しちゃうわけ。そういうの、みゆきさんの曲にはないでしょ?」
みゆき「個人的に五寸釘ね。人形に打ち付けちゃうっていうタイプ。どっかで聞いてやがんだろうなとかあるけどね(笑)」
ユーミン「あるある、それは意識するよね(笑)」
松任谷由実は、そういう時に備えて、曲に綺麗な演出を施すようだ。
ユーミン「「お前が残した苦悩を私は美しく楽しんでるよ」ってね」
ユーミンは、以前、タモリが話していたことを思い出す。
人の悩みや憂いは切り捨てれば楽になるはずなのに、作家はそれを敢えてほじくり出して突き詰めようとする嫌な職業。
ユーミンは、タモリのその言葉に理解を示しつつも、一方で反発したくなる。
ユーミン「そういうことほじくり返さないと歌になんないじゃない」
松任谷由実のタイプの男性像
みゆき「ユーミンって、男の人の好みってあるわけ?」
ユーミン「すごくナイーブで、ある意味で坊ちゃんタイプか、それか全く逆のバンカラなタイプか」
松任谷由実曰く、バンカラな人は、極めてバンカラな人間から好かれる要素があるらしい。
そんな松任谷自身もまた、バンカラタイプと自己分析している。
みゆき「うん、そう思った!」
松任谷は、周りがお嬢様ばかりの環境で育ってきたために、そこには馴染まないように自ら意識してバンカラなふるまいをしてきたのだ。
中島みゆきのタイプの男性像
ユーミン「男の好みってあるわけ?」
みゆき「どっちかというと、「皿用意して待ってるわ」「帰りに魚釣ってきてね」って感じだから」
逆に、「一緒に走りましょう」というスポーツマン気質な人間とはそりが合わない。
ユーミン「私なんかさ、別の料理作ってんのよね」
みゆき「アハハハハ!」
ユーミン「魚がまずかったら嫌だから」
みゆき「オタクの旦那だったら、魚屋に寄って買ってきてくれるよ」
ユーミン「ああ、そういうタイプかもしれない。釣れなかったらそうするんだろうね」
相手より自分本位という点で、自分を「デリカシーのない女」と形容する。
みゆき「いいことよ。自分本位っていいと思うんだ。「あなたのために」って、ひっくり返せば、「あたなのせいよ」でしょ(笑)」
ユーミン「今日のオチが出たね(笑)」
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