1996年の中島みゆきのアルバム曲『永遠の嘘をついてくれ』
吉田拓郎から曲依頼を受け、書き下ろした曲だ。
後に、中島みゆきと吉田拓郎は、つま恋のステージに立ち、この曲をデュエットしている。
なぜ、吉田拓郎は中島みゆきへ曲を依頼したのかその舞台裏を覗いてみよう!
この記事は、
- 中島みゆきと吉田拓郎の関係とは?
- 吉田拓郎が中島みゆきに曲を依頼した経緯
- 「つま恋 2006」での共演とその舞台裏
について書いてます!
中島みゆき『永遠の嘘をついてくれ』
作詞・作曲 中島みゆき
編曲 瀬尾一三
吉田拓郎に提供された曲
『永遠の嘘をついてくれ』は、吉田拓郎へ提供された曲だ。
1995年のアルバム『Long time no see』に収録されている。
中島みゆきと吉田拓郎の関係
吉田拓郎の追っかけをやっていた
中島みゆきは、アマチュア時代、吉田拓郎の追っかけをやっていた。
吉田の「よ」と拓郎の「た」を取って、「よた様」と呼ぶほどの信奉ぶりだったようだ。
アマチュア時代に会っている
中島みゆきが初めて吉田拓郎と会ったのは学生の頃。
当時、中島みゆきは、学業の傍ら札幌のコンサート会場でアルバイトをしていて、楽屋で休んでいる吉田拓郎にお茶出しをしていた。
実は、この時の中島みゆきを吉田拓郎は覚えている。
2010年10月18日放送の「坂崎幸之助と吉田拓郎のオールナイトニッポンGOLD」に中島みゆきがゲスト出演した際に、この時のことを語っている。
「その時に白いミニスカートだったんだよ。可愛い子だと思ってさ」
吉田拓郎は、その時の中島みゆきの服装まで詳細に記憶していた。
吉田拓郎の曲『唇をかみしめて』をカバーしていた
「雲の上の人」
数多くのヒット曲名曲を生み出した女王・中島みゆきでも、未だに吉田拓郎のことをそう呼ぶ。
中島みゆきが、2007年のコンサートツアーで吉田拓郎の『唇をかみしめて』を歌ったことは、異例中の異例だった。
中島みゆきが、他のアーティストの持ち歌を歌うということは非常に珍しいケースなのだ。
それだけに吉田拓郎への敬愛ぶりが窺える。
吉田拓郎に提供した経緯
吉田拓郎は自信を失っていた
そもそも、吉田拓郎が中島みゆきへ曲を依頼しようと思ったのはなぜだろうか。
それは、吉田拓郎がミュージシャンとしてスランプ状態に陥っていたからだ。
曲が書けなくなり、引退すらも考え始めていたという。
きっかけは『ファイト!』
ミュージシャンとしてやっていく自信を失っていた1994年。
吉田拓郎は、「日本を救え’94~奥尻島、島原・深江地区救済コンサート」に出演した。
そこで歌った曲が中島みゆきの『ファイト!』だった。
この曲を歌い終えると吉田拓郎はこう言い放った、
「おお、コレは俺の歌だ!」
そして、この『ファイト!』との出会いが、後に『永遠の嘘をついてくれ』へと繋がっていく。
吉田拓郎が中島みゆきに楽曲依頼した日
『ファイト!』をコンサートで歌いあげた翌年、吉田拓郎は、中島みゆきの代々木のレストランで会っている。
音楽評論家の田家秀樹もその席に立ち会っている。
「武蔵と小次郎の巌流島の決闘を見る思いだった」
田家は自身のラジオ番組「LEGEND FORUM」の中で、この時のことを振り返っている。
吉田拓郎は、素直に今の自分を中島みゆきに晒した。
「もう自分には『ファイト!』みたいな曲が作れない」
「遺書のような曲をお願いします」
これが、吉田拓郎の注文だった。
中島みゆきは、これを最後の曲にしないという条件で楽曲の依頼を引き受けたのである。
吉田拓郎が聴いたデモテープ
吉田拓郎のもとにデモテープが届いたのは、レコーディングのためにバハマへ発とうとしていた時だった。
テープを再生すると、流れてきたのは中島みゆきの歌声。
これが、吉田拓郎が初めて『永遠の嘘をついてくれ』を耳にする瞬間だった。
一説には、泣き叫ぶように歌われたデモテープだと言われているが、吉田拓郎は自身のラジオ番組で「鼻歌のような歌だった」と語っている。
レコーディングに手を焼いた
吉田拓郎は、この難解な歌に手を焼いた。
レコーディング先のバハマでも何度も録り直しをしたが、どうもしっくりこない。
その後、ロサンゼルスへ移り、今度は弾き語りで歌ってみるも、これも上手くいかない。
日本へ帰国後も、自宅にこもって試行錯誤は続いた。
そして、ようやく曲は完成したのである。
「つま恋 2006」での共演
中島みゆきは「吉田拓郎 & かぐや姫 Concert in つま恋 2006」のステージで、吉田拓郎と『永遠の嘘をついてくれ』をデュエットしている。
白いブラウスとジーンズ姿で突如現れ、会場を沸かせた。
きっかけは瀬尾一三
このデュエットを実現させた仕掛け人は、中島みゆきの楽曲アレンジを手掛けている瀬尾一三だ。
2014年11月16日放送「LEGEND FORUM」の中で瀬尾は、中島みゆきが「つま恋」に出演することになった経緯を語っている。
「つま恋」のアレンジを担当していた瀬尾は、リハーサル期間中に吉田拓郎と食事をしながらこんなことを言った。
「ここ(つま恋)に中島さん来るとオモシロイよね」
軽い気持ちで言った言葉だったが、吉田拓郎はそれを真に受けた。
「あとヨロシク」
まるで瀬尾にその後の交渉を託すようにして吉田拓郎は店を出ていったのだ。
ここから夢の共演へ向けて事が運び出すが、この先、実現までにかなりの紆余曲折があった。
それだけに、本番、ステージに並ぶ中島みゆきと吉田拓郎の背中を見たときは感無量だったと、瀬尾は語る。
ステージに上がるまでの中島みゆき
中島みゆきはこの日、シークレットゲストという扱いであった。
ステージに上がるまで決して身バレしてはならず、そのため、自分の出番以外はホテルにずっと缶詰め状態だったのだ。
2006年12月15日放送「中島みゆきのオールナイトニッポン」の中で、中島みゆきは、この日のことを振り返っている。
缶詰め状態を長いこと強いられ、ようやく自分の出番がやってきた。
中島みゆきは、ホテル前のワゴンに乗らされ、窓にみっちりカーテンをかけた状態で会場まで運ばれた。
「なんか私悪いことした?」
その時の気持ちをこう振り返る。
中島みゆきの登場で静まり返った
会場入りした中島みゆきは、いよいよ吉田拓郎のいるステージへと向かう。
この模様は、NHK-BSハイビジョンで生中継で放送された。
2012年10月21日放送の「新栄トークジャンボリー 小堀勝啓のお気楽パラダイス」(CBCラジオ)の中で、この時のことを振り返っている。
中島みゆきによると、ステージへ上がると、一瞬、その場が静まり返ったという。
突然現れた謎の女の姿に、観客はキョトンとしているようだった。
「帰れって言われてんのかなと思って」
その時の静まり返った「一瞬」が、3時間くらいに感じたと中島みゆきは語る。
その後、前にある大型ビジョンに中島みゆきの顔が映し出されて、ようやく会場から歓声が上がったのだ。
「吉田拓郎 & かぐや姫 Concert in つま恋 2006」は、吉田拓郎とかぐや姫が31年ぶりにつま恋で行った野外コンサート。
13~21時の長丁場のライブの中の、終盤部分5部に中島みゆきが出演した。
去り際のコーラスとハイタッチの意味
中島みゆきは、リハーサルを行わず「つま恋」のステージに臨んでいる。
会場の下見すらも行っていないので、どこにコードがあって段差があるのか、ステージに辿り着くまでの道のりに不安があった。
そこで中島みゆきは、「つま恋」でバックコーラスを務める坪倉唯子に目をつける。
坪倉とはレコーディングやコンサートでも組むことが多い。
信頼を寄せる彼女に、目印になって欲しいと頼んだのだ。
「つま恋」の舞台袖からはステージが見えず、見えるのは坪倉の姿のみ。
ライブでは立ち位置が変わりやすいコーラスだが、絶対に動かないで欲しいと中島みゆきは坪倉に念を押していた。
本番当日、坪倉は目印になるべく派手なオーラを放っていたと、中島みゆきは言う。
そのおかげで、無事、ステージに辿り着くことができたのだ。
吉田拓郎とのデュエットを終え、ステージから去っていくときに、中島みゆきはある1人の女性コーラスとハイタッチしている。
このコーラスこそが、坪倉唯子なのだ。
あのハイタッチには、「目印、ご苦労さん」という労いの意味が隠されていたのだった。
坪倉唯子は、かつて「ちびまる子ちゃん」のエンディング曲「おどるポンポコリン」を歌ったB.B.クィーンズのボーカルだった。
「つま恋」を満喫できなかった中島みゆき
「つま恋」への出演が決まった中島みゆきは、ある期待があった。
それは、タダでライブが聴けるということ。
シークレットゲストの扱いでホテルに缶詰め状態だった中島みゆきだったが、デュエットを終えた後はすぐさま東京へと運ばれていった。
結局、ライブのタダ聴きは叶わずじまいになってしまったのである。
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花火のBGM
「つま恋」で歌われた時の『永遠の嘘をついてくれ』の音源が、なぜか各所の打ち上げ花火のBGMに使われている。
「つま恋 2006」では、吉田拓郎が『落陽』を歌う中、花火が打ち上げられた。
そのオマージュということだろうか?
モエレ沼芸術花火2016
2016年札幌市モエレ沼公園で行われた花火大会。
打ち上げられる花火をバックに中島みゆき&吉田拓郎『永遠の嘘をついてくれ』つま恋バージョンが流されている。
京都芸術花火2019
天皇陛下御即位を奉祝するために行われた花火と音楽をシンクロさせた芸術文化。
約1万3000発が打ち上げられ、そこでもバックで流されていたのが中島みゆき&吉田拓郎『永遠の嘘をついてくれ』つま恋バージョン。
ポルノグラフィティ版
『永遠の嘘をついてくれ』はポルノグラフィティによってカバーされている。
2017年リリースの吉田拓郎トリビュートアルバム『今日までそして明日からも、吉田拓郎 tribute to TAKURO YOSHIDA』に収録。
ポルノグラフィティは、吉田拓郎に『アポロ』の広島弁バージョンを作詞してもらった縁があり、このトリビュート企画に参加した。
数多くの吉田拓郎の楽曲からポルノグラフィティが選んだのが、『永遠の嘘をついてくれ』だったのだ。
ドラマ「泣くな研修医」の中で歌われた
2021年5月15日放送のドラマ「泣くな研修医」第4話(テレビ朝日系)の劇中で『永遠の嘘をついてくれ』が歌われている。
研修医たちがそれぞれ嘘を告白していく流れで、1人が『永遠の嘘をついてくれ』を歌い始める。
その後、リレーバトンのように1人ずつマイクが渡り、歌い繋がれていき、最後は大合唱という盛り上がりを見せる。
マイナーな曲であるはずなのに、皆そらで歌いこなしてしまうというミラクルなシーンだ。
『永遠の嘘をついてくれ』はこんな曲
吉田拓郎に寄せた譜割り
吉田拓郎の楽曲に見られる「字余り」「字足らず」作詞法は、中島みゆきの楽曲にも見受けられる。
『永遠の嘘をついてくれ』もその1つで、音符をはみだす譜割りで歌詞があてがわれている。
さまざまな歌詞解釈
『永遠の嘘をついてくれ』には、2人の人物が登場するが、関係性が曖昧に描かれており、様々に解釈されている。
- 男女の恋愛
- ゲイの恋愛
- 学生運動で共に戦った盟友
- 中島みゆき&吉田拓郎etc.
君よ 永遠の嘘をついてくれ
いつまでもたねあかしをしないでくれ
永遠の嘘をついてくれ
なにもかも愛ゆえのことだったと言ってくれ
(『永遠の嘘をついてくれ』より)
『永遠の嘘をついてくれ』のみんなの感想
それはそれとして、私は中島みゆきが書いた歌詞の「君よ 永遠の嘘をついてくれ いつまでも種明かしをしないでくれ 一度は夢を見せてくれた君じゃないか」という一節がとても好きなんですよね……
— むとー (@Eth_Mutoh) August 8, 2021
中島みゆきさんの「永遠の嘘をついてくれ」の歌詞、本当に傑作過ぎて、一緒に歌おうとしても感嘆して声が出なくなる。切ないような元気が出るような、そのバランスがすごい。畏怖。
— 真理 (@Mari_MaruQQ) July 4, 2021
はなしかわるけど種明かしといえばつま恋の中島みゆき「永遠の嘘をついてくれ」かっこよすぎ
女神— 日月犬 (@ranranponpon110) May 19, 2021
本人映像
『Forever Young Concert in つま恋 2006』
31年ぶりに一夜限りで復活した「つま恋コンサート」に中島みゆきが出演。
中島みゆき&吉田拓郎『永遠の嘘をついてくれ』のデュエットが実現した。
収録アルバム
『パラダイス・カフェ』
1996年リリースのオリジナルアルバム。
- 日本テレビ系ドラマ「家なき子2」の主題歌『旅人のうた』(アルバムバージョン)
- 吉田拓郎に提供した『永遠の嘘をついてくれ』
- テレビ朝日系ドラマ「はみだし刑事情熱系」の主題歌『たかが愛』
を含む全11曲。
【収録曲】
『旅人のうた〈2nd Version〉』『伝説』『永遠の嘘をついてくれ』『ALONE,PLEASE』『それは愛ではない』『なつかない猫』『SINGLES BAR』『蒼い時代』『たかが愛』『阿檀の木の下で』『パラダイス・カフェ』
『中島みゆき 2020ラスト・ツアー「結果オーライ」』
2022年にリリースされたライブアルバム。
2020年に行われた幻のラスト・ツアー「結果オーライ」の音源を収録。
ライブバージョンの『永遠の嘘をついてくれ』を聴くことができる。
【収録曲】
『一期一会』『アザミ嬢のララバイ』『悪女』『浅い眠り』『糸』『ローリング』『流星』『最後の女神』『齢寿天任せ』『離郷の歌』『この世に二人だけ』『ナイトキャップ・スペシャル』『宙船(そらふね)』『あたいの夏休み』『麦の唄』『永遠の嘘をついてくれ』『慕情』『誕生』『人生の素人』『土用波』『はじめまして』
⇒『中島みゆき 2020ラスト・ツアー「結果オーライ」』の解説&みんなの感想