1993年に上演された『夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』
「雨月物語」をモチーフに、「待つ」をテーマに4人の女の群像を描いている。
特徴から、見どころまで、色々みていこう。
この記事は、
- 『夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』の特徴
- 『夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』の見どころ&みんなの感想
について書いてます!
中島みゆき『夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』
1993年上演。雨月物語「浅茅が宿」がモチーフの作品。
季節ごとに、それぞれ4人の「待つ女」を中島みゆき1人が演じている。
『夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』の特徴
通算100回公演
「夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」は、1993年11月14日~12月11日まで渋谷のBunkamura・シアターコクーンで上演された。
12月4日公演で、1989年にスタートした「夜会」は、通算100回目を迎えた。
1人4役
「夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」では、4人の女を軸に、それぞれの「待つ」が描かれている。
この4人の登場人物を中島みゆき1人が演じ分けている。
春(梅雨)、冬、秋、夏へと、季節を逆に辿っていく構成で、季節ごとに1人の女のエピソードが繰り広げられる。
いずれも舞台はカフェテラスで、ウェイターとの掛け合いのくだりもテーマに沿ったものだ。
1994年出版のシナリオ「夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」(角川書店)には、以下のような記述がある。
「彼もまた「待つ人」という名を持つ第三者である」
- 「wait(待つ)」+「er人」=「waiter(待つ人)」
「雨月物語」がモチーフ
「花の色はうつりにけりなり」の意味
サブタイトル「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」は、「古今和歌集」に収められた小野小町の歌。
「花の色がすっかり褪せてしまったことよ。むなしく長雨が降り、物思いにふけっている間に」という意味だ。
この歌については、世間で様々な小野小町像が膨らみ、伝説が飛び交っている。
1994年出版のシナリオ「夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」(角川書店)には、以下の記述がある。
「その伝説の中にいない本人は、どこをさまようのか。「伝説の中にいない本人は、どこをさまようのか。「伝説の中にはいない本人」を探す旅の歌枕として、舞台は「浅茅が宿」(「雨月物語」)の姿を借りて始まる」
「浅茅が宿」(「雨月物語」)の内容
「浅茅が宿」とは、どんな物語なのだろうか?
舞台は、室町時代中期の享徳4年(1455年)。
- 今の千葉県に位置する下総に、勝四郎という男と宮木という妻がいっしょに暮らしていた。
- 勝四郎は、ろくに働かない男で、のらりくらりと日々を過ごしているうちに、やがて家は貧しくなっていく。
- ようやく極貧から脱け出したいと思うようになった勝四郎は、商売を始めようと、宮木を置いて、京都へ発つ。
- その後、宮木のいる関東は戦乱に巻き込まれていく。
- 久々に故郷へ戻ってきた勝四郎は、宮木と再会し、互いに喜び合った。
- だが、翌朝になると、宮木の姿はない。辺りを探すと、そこには墓があり、宮木の文字で書かれた辞世の句が貼られてあった。夕べ再会した宮木は亡霊だったのだ。
「浅茅が宿」のエッセンス
「夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」のシナリオを読むと、随所に「浅茅が宿」のエッセンスが見て取れる。
【突然のクーデター】
銃撃戦のSEをバックに、戦地にいる男からの手紙を読むシーン。
突然のクーデターに見舞われたというくだりは、「浅茅が宿」に描かれている享徳4年(1455年)の争乱を下敷きにしている。
【見晴らしの良い吹き抜け】
ラブレターを送った男が、待ち合わせ場所に選んだのは見晴らしの良い吹き抜け。
「浅茅が宿」の以下の一節をなぞらえている。
「面にひやひやと物のこぼるるを、「雨や漏ぬるか」と見れば、屋根は風にまくられてあれば有明月のしらみて残りたるもみゆ」
『遍路』
劇中で歌われる『遍路』の歌詞もまた、「浅茅が宿」に重ねている。
もう幾つ目の 遠回り道 行き止まり道
手にさげた鈴の音は
帰ろうと言う 急ごうと言う
(『遍路』より)
上の歌詞は、京へ出稼ぎに行ったきり戻ってこない勝四郎とリンクする。
【4人の女も亡霊】
登場する4人の女について、ト書きには以下のように書かれている。
「この女の足音を、誰も聞いたおぼえがない」
「waiterは気づいていないが、実はこの女は、この世には生きていない者なのである」
「「待つ」という思いだけを姿に変えて現れるのが、「待つ人」すなわちwaiterの目には見えるのである」
これら4人の女は亡霊という設定なのだ。
「浅茅が宿」の中の、夫を待ちながら死んでいった宮木の化身として描かれている。
シナリオの注釈には、以下のように書かれている。
「これまで四人の女たちに姿をかえた宮木の亡霊には足音がなかった」
メイキング映像
「夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」のメイキング映像が1994年NHKにて放送された。
後に、辻仁成のナレーションによりビデオ化されている。
セットリスト
『夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』では、以下の曲が歌われている。
『どこにいても』『雨が空を捨てる日は』『家出』『バス通り』『笑わせるじゃないか』『人待ち歌』『信じ難いもの』『サッポロSNOWY』『ノスタルジア』『船を出すのなら九月』『遍路』『まつりばやし』『3分後に捨ててもいい』『りばいばる』『二隻の舟』『雨月の使者』『孤独の肖像1st.』『彼女の生き方』『テキーラを飲みほして』『たとえ世界が空から落ちても』『くらやみ乙女』『愛よりも』『人待ち歌』『夜曲』
『夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』の見どころ
『孤独の肖像 1st.』
妊婦役の中島みゆきが、戦地にいる夫からの手紙を胸に抱きしめながらこの曲を歌っている。
夜空に上がる花火の音が、やがて爆撃・銃撃音へと変わっていく印象的なシーンだ。
消えないわ心の中 消えやしないわ
消せないわ心の中 消せやしないわ
手さぐりで歩きだして暗闇の中
もう一度はじめから愛を探したい
(『孤独の肖像 1st.』より)
『人待ち歌』
この「夜会」から生まれた曲。
テーマである「待つ」をストレートに描き、宮木と勝四郎の存在が感じられる1曲となっている。
待つ、待たない、待つ、待たない、
待つ、待たない、待つ、待たない、
荒野を越えて 銀河を越えて
戦さを越えて 必ず逢おう
(『人待ち歌』より)
『夜曲』
鉄骨の階段を上りながら歌われるこの曲も、ラストシーンを彩っている。
「夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」のシナリオには以下のように書かれている。
「愛しい者に呼びかけ呼びかけ、自ら「逢いに行く」ことを決意した女が、嬉しそうに非常階段を這い登っていく」
街に流れる歌を聴いたら
気づいて 私の声に気づいて
心かくした灯りの中で
死ぬまで 贈りつづける歌を受けとめて
(『夜曲』より)
『夜会VOL.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』のみんなの感想
中島みゆき『夜会vol.5 花の色は移りにけりな以下略』の録画を見ました。いやあ素晴らしい。参りました。『人待ち歌』からの『夜曲』!
— 夏井孝裕 NATSUI Takahiro 🐠 (@futodoki) April 20, 2020
夜会「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」の「まつりばやし」のアウトロは最高😆✨
杉本和世のコーラスなんとも切なく、幻想的な大量の風車も凄く美しい😊✨✨— まさざる (@masazaru) October 3, 2021
花の色は今だに一番好きな作品です。初めて生で見た夜会でもあります。
— BAKAQ (@redwing2014) December 9, 2019
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