1979年の中島みゆきのアルバム曲『この空を飛べたら』
この曲は、1978年に加藤登紀子に提供され、後に中島みゆきによってカバーされた。
加藤曰く、自分の人生をまるで見透かしているような歌詞。
加藤登紀子と中島みゆきの出会いから、この曲が完成するまで、インタビューの言葉を交えながらみていこう。
この記事は、
- 中島みゆきと加藤登紀子の出会い
- 加藤登紀子の人生を映した『この空を飛べたら』
について書いてます!
中島みゆき『この空を飛べたら』
作詞・作曲 中島みゆき
編曲 鈴木茂
加藤登紀子への提供曲
ドラマ主題歌に起用
『この空を飛べたら』は、1978年に中島みゆきが加藤登紀子のために書き下ろしたシングル曲だ。
ゴールデンドラマシリーズ「球形の荒野」の主題歌に起用された。
週間オリコンチャート14位を記録し、35万枚のセールスを記録。
きっかけは「世界歌謡祭」
加藤登紀子と中島みゆきの出会いは、1975年の「第6回世界歌謡祭」まで遡る。
このステージで中島みゆきが『時代』を歌っているのを、加藤登紀子はテレビで観ていたのだ。
1978年2月21日放送の「ミュージックフェア」(フジテレビ系)で、その時の印象を以下のように語っている。
「歌いぶりが、声が太くてちょっと乱暴。それにすごく魅力を感じて」
加藤のオフィシャルサイトでは、以下のように印象を綴っている。
「多少機嫌の悪そうな」
「挑みかかるような目」
「彼女の表情に大いに共感した」
2019年12月25日放送の「歌のあとさき~加藤登紀子~特別編」の中では、以下のように語っている。
「歌もすばらしかったけど、伝わってくる強さがね、激しいものがみゆきさんの中にありましたね」
加藤登紀子にとって中島みゆきは、これまでに見たことのないタイプの人間として印象づけられた。
その後、どうしても会いたいという衝動に駆られ、ヤマハにコンタクトを取ったのである。
中島みゆきとの初対面
中島みゆきとの念願の対面を果たしたのは、ヤマハへコンタクトを取ってから1カ月のことだった。
2004年「文芸ポスト」冬号のエッセイによると、中島みゆき自ら、加藤登紀子の自宅を訪ねてきたという。
初めて目の当たりにする中島みゆきは、テレビで見たときの印象とは異なり、静けさをまとった雰囲気があった。
この頃、中島みゆきは初めてのアルバム制作の打ち合わせのために北海道から上京していた。
だが、自分の意思がなかなか通らずもどかしい思いをしていたようだ。
中島みゆきは、部屋にあった加藤のギターを取り、持ち歌である『夜風の中から』を弾き語りで歌った。
この時の印象を、加藤はこう語っている。
「強くて、静かで、透明で、やわらかい、その歌はずしりと胸にとどいた」
この頃、加藤のお腹の中には小さな命が宿っていた。
中島みゆきは「触っていいですか?」と加藤のお腹をなで、加藤は「あなたはあなたの思う通りにやればいい」と声を掛けた。
2人の初対面は、こうして終わった。
加藤登紀子の人生を表したような曲
初対面から2年後、加藤登紀子のために中島みゆきが曲を書くことになった。
中島みゆきは、コンサートの舞台裏からレコーディングまで、加藤の様子をジッと見つめていた。
こうして完成したのが、『この空を飛べたら』だ。
飛べるはずのない空 みんなわかっていて
今日も走ってゆく 走ってく
戻らないあの人 私わかっていて
今日も待っている 待っている
(『この空を飛べたら』より)
初めてこの曲を聴いた加藤は圧倒される。
「1つの歌にたくさん言葉が込められている」
「避けてきれい事にするというところはなく、ズバッと語る」
歌詞の独特の言葉遣いに、加藤はシャンソンを感じた。
2020年3月13日に行われた55周年記念コンサートの中でも加藤は、この曲に言及している。
「20代のみゆきさんが作ってる訳だけど、多くの人生が包括されている」
それは、加藤登紀子の人生も然りだ。
2020年6月28日のオーチャードホール・コンサートでは、この曲が自分の人生の節目を歌っているようだと語る。
暗い土の上に 叩きつけられても
こりもせずに 空を見ている
(『この空を飛べたら』より)
中島みゆきが、まるで当時の自分を見てくれていたのかなと思わせる歌詞。
学生運動の最中、公務執行妨害等の罪で逮捕された藤本敏夫と、加藤は1972年に周りの反対を押し切って獄中結婚した。
その後、長女を出産。
夫が出所後、新婚生活をスタートさせるも、2番目の赤ちゃんを流産させてしまう。
仕事と家庭、どちらかに絞れと決断を迫られ、仕事を取った加藤だったが、その直後に妊娠が判明。
『この空を飛べたら』は、そんな波乱に満ちた加藤登紀子の半生を象徴したような曲なのだ。
また、この曲との出会いは、その後のシンガーソングライターとしての生き方に大きく影響したと加藤は語っている。
テレビ出演から見る2人の関係
1977年11月16日放送の「コッキーポップ」(日本テレビ系)と1978年2月21日放送の「ミュージックフェア」(日本テレビ系)に、中島みゆきと加藤登紀子が2人で出演し、『この空を飛べたら』をデュエットしている。
番組の中で、中島みゆきは加藤のことを「オトキさん」と呼び、慕っている様子が窺える。
中島みゆきにとって加藤登紀子はどんな存在なのだろうか?
1991年「月刊カドカワ」11月号のインタビューでは、いっしょによく飲みに行っていたと語っている。
2002年11月12日放送の「スタジオパークからこんにちは」に加藤が出演した際、中島みゆきはこんな手紙を送っている。
「赤ん坊が母親の声を聴き分けて、すがるように聴いている自分がいる」
中島みゆきにとって加藤は、母であり尊敬すべき歌い手なのだ。
日本レコード大賞西条八十賞
1978年「第20回日本レコード大賞」で、中島みゆきは、『この空を飛べたら』『しあわせ芝居』(桜田淳子へ提供)で、後の作詩賞である西条八十賞を受賞している。
1978年「第20回日本レコード大賞」では、中島みゆきが作詞作曲を手掛けて研ナオコに提供した『かもめはかもめ』も金賞を受賞している。
『この空を飛べたら』はこんな曲
可能性のない恋を想い続けることは、空を飛ぼうと思うことと同じくらい不毛なこと。
それを止められずいる人間の愚かさといじらしさを歌った曲だ。
あぁ 人はむかしむかし
鳥だったのかも しれないね
こんなにも こんなにも
空が恋しい
(『この空を飛べたら』より)
『この空を飛べたら』のみんなの感想
「この空を飛べたら」ば大学生の時に行った中島みゆきのコンサートでアンコールで生で聴いたな。
何も話さずこの一曲だけ披露して終わったけど凄かった記憶だけは残ってる。#フォーク村— 紫ヒーロ@紫94%の箱推し? (@akanitiger) December 14, 2021
俺、加藤登紀子の「この空を飛べたら」、曲としての良さもさておき1回聞いただけで「ああ、これ中島みゆきだな」ってわかるメロディと歌詞がめっちゃ好きよ。
— KT (@npcap) August 28, 2021
「この空を飛べたら」加藤登紀子さんの歌だと欧州の晩秋街並みがイメージされ。中島みゆきさんはストレートに北海道の原野が浮かんでくるのだが。
— あーけろん (@day6agatha) December 5, 2020
カバーしたアーティスト
研ナオコ
1978年のカバーアルバム『NAOKO VS MIYUKI/研ナオコ、中島みゆきを歌う』に収録。
岩崎宏美
1978年のライブアルバム『ラブ・コンサート・パート2〜ふたりのための愛の詩集〜』に収録。
矢幅歩
2010年のカバーアルバム『Overture~Ayumu sings 80’s Women Songs~』に収録。
藤あや子
2011年のカバーアルバム『WOMAN』に収録。
小野リサ
2014年のカバーアルバム『Japao 3』に収録。
門倉有希
2019年のカバーアルバム『カバーズベスト』に収録。
本人映像
『中島みゆきライヴ! Live at Sony Pictures Studios in L.A.』
ロサンゼルスのソニーピクチャーズ・スタジオで収録されたライブDVD/Blu-ray。
アルバム『いまのきもち』に収録された曲をベースに『銀の龍の背に乗って』『地上の星』などの名曲をライブバージョンで楽しめる。
『この空を飛べたら』をフルで聴く方法
単品購入
収録アルバム
『おかえりなさい』
1979年リリースのオリジナルアルバム。
中島みゆき初のセルフカバー集。
- 研ナオコに提供した『あばよ』
- 桜田淳子に提供した『しあわせ芝居』
- 小柳ルミ子に提供した『雨…』
- 日吉ミミに提供した『世迷い言』
- ちあきなおみに提供した『ルージュ』
を含む全10曲
【収録曲】
『あばよ』『髪』『サヨナラを伝えて』『しあわせ芝居』『雨…』『この空を飛べたら』『世迷い言』『ルージュ』『追いかけてヨコハマ』『強がりはよせヨ』
『いまのきもち』
2004年リリースのオリジナルアルバム。
1988年以前の中島みゆきの楽曲からセレクトし、瀬尾一三のアレンジによりセルフリメイク。
瀬尾一三によるアレンジでリメイクされた『この空を飛べたら』を収録。
【収録曲】
『あぶな坂』『わかれうた』『怜子』『信じ難いもの』『この空を飛べたら』『あわせ鏡』『歌姫』『傾斜』『横恋慕』『この世に二人だけ』『はじめまして』『どこにいても』『土用波』
⇒レコチョクで購入(試聴あり)
『中島みゆきライヴ! Live at Sony Pictures Studios in L.A.』
ロサンゼルスのソニーピクチャーズ・スタジオで収録されたライブ音源。
ライブバージョンの『この空を飛べたら』を聴くことができる。
【収録曲】
『この空を飛べたら』『地上の星』『土用波』『銀の龍の背に乗って』『この世に二人だけ』『夜行』『歌姫』
中島みゆきのシングル曲を今すぐ聴きたい!(無料お試し期間実施中!)
中島みゆきのシングル曲はお手持ちのスマホ・パソコン・タブレット端末で今すぐ聴くことができる。
「Amazon Music Unlimited」なら、月額980円(プライム会員は月額780円)で、中島みゆきのシングル曲(カップリング含む)が聴き放題!!
(※1975年版『時代』、映画主題歌バージョン『瞬きもせず』は含まない)
もちろん中島みゆき以外のアーティスト曲も聴くことができる。
その数、1億曲以上!!
加藤登紀子、研ナオコ、岩崎宏美、矢幅歩、藤あや子、小野リサ、門倉有希の『この空を飛べたら』も聴くことができる!
新規登録の場合、無料お試し期間があるので安心!