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宮崎駿も聴いていた中島みゆきのアルバム『10 WINGS』の全曲解説&みんなの感想

手羽先

1995年10月20日に発売された23作目のオリジナルアルバム
『10 WINGS』
の曲解説とみんなの感想をみていこう。

中島みゆき『10 WINGS』の特徴

 

『10 WINGS』(レコチョク試聴あり)

1989年に中島みゆきがスタートさせた言葉の実験劇場『夜会』

1994年の『夜会Vol.6 シャングリラ』までは、既存の曲をシチュエーションやストーリーに融合させて、言葉の可能性を模索するスタイルだった。

だが、その中にも、夜会オリジナルの曲をいくつか織り交ぜてきた。

このアルバムは、1989~1994年の『夜会』のために書き下ろされた曲を収録した全10曲だ。

「10 WINGS」の意味

中島みゆきは、このアルバムのことを「10手羽」と呼んでいる。

もちろんWINGSには手羽先という意味もあるが、物語の中で閉じ込められてしまった夜会オリジナル曲に自由に羽ばたいて欲しいという思いから、「翼」という意味の「WINGS」をタイトルに用いたと、インタビューで語っている。

また、ラジオ番組「中島みゆき お時間拝借」の中では、後に、舞台袖を英語で「WING」と呼ぶ発見をしたと語っている。

『10 WINGS』をリリースした意図

1995年の「月刊カドカワ」12月号のインタビューで、中島みゆきは、このアルバムをリリースした意図についてい言及している。

『夜会』の中で生まれたオリジナル・ソングを収めたものですけど、あの場面をもう一度的なことじゃなくて、曲を単体のものとして仕上げてますね。
 『夜会』の中に閉じ込めておくわけじゃなくて、耳で聴くからいい、みたいなね」

『10 WINGS』をリリースしたタイミング

このアルバムをリリースした年以降の『夜会』は全曲『夜会』のために書き下ろした新曲となっている。

1995年の「月刊カドカワ」12月号のインタビューで中島みゆきは、『10 WINGS』について、

「こういう内容のアルバムがこの時期にできたのは、今年やらないで一年延ばすと七回目の『夜会』からも曲を選ぶことになるし、そうなるとヴォリュームがありすぎる」

と、タイミングを狙って出されたアルバムであることを語っている。

宮崎駿も聴いていた『10 WINGS』

「ラジオ瀬尾さん」への投稿者の話によると、アニメ映画「もののけ姫」のドキュメンタリーDVDの中で、宮崎駿が中島みゆきの曲を聴きながら作画している光景が映像で流れていたという。

宮崎駿が聴いていたのは、『10 WINGS』に収録されている『子守歌』『生きていくおまえ』

ちなみにその『10 WINGS』の編曲を手掛けた瀬尾一三は、年に1回は必ず「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」をDVDで観るほどのジブリ好き。

瀬尾もまたそのドキュメンタリー映像をたまたまテレビで見ていて、「この曲で仕事はかどるのかなあ」と案じたという。

また、中島みゆきはどこかの音楽雑誌のインタビューで、

「「もののけ姫」は宮崎さんがもののけを描いたといっても、もののけを外から眺めて描いたというより、あの人の中にもののけがいると思うんですよ」

とコメントしている。

宮崎駿、瀬尾一三、中島みゆき、この3人が互いの作品に刺激を受けながら創作の糧にしてることを想像させるエピソードである。

『10 WINGS』のみんなの感想

曲解説

『二隻の舟』

『二隻の舟』(レコチョク試聴あり)

『夜会』のテーマ曲として書き下ろされた曲。

抽象的な歌詞はいろんな対比に用いられ、可能性を見せていける曲だと本人も語っているように、毎回、様々なシチュエーションで歌われている。

この曲は、1992年にリリースされたアルバム『EAST ASIA』に収録された曲だが、今回アレンジを変えて、サウンド&歌唱ともにガラッと印象を変えている。

ちなみに伴奏のピアノはX JAPANYOSHIKI所有のクリスタル・ピアノが使用されている。

こちらのバージョンの『二隻の舟』は、1996年に公開された岩下志麻吉永小百合主演の映画「霧の子午線」の主題歌に起用されている。

歌詞解釈

「おまえ」と「わたし」を二隻の舟に例えた曲。

海の厳しさに互いがバラバラになってもひとつで繋がっている強さを感じさせる。

「わたしたちは 二隻の舟 ひとつずつの そしてひとつの」

二律背反的な曲である。

二隻の舟
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『思い出させてあげる』

『思い出させてあげる』(レコチョク試聴あり)

1994年の『夜会Vol.6 シャングリラ』の中で歌われた曲。

主人公のメイが母親を陥れた女への復讐へ気持ちを切り替えていくシーンで歌われ、

「思い出させてあげよう忘れていたあの日のこと」

と恨み節炸裂なのだが、中盤あたりで急に穏やかなメロディと歌声へと転調する。

「思い出の中で人はいつまでも変わらない
 もしも急に会えたとしても誰とは信じられないでしょう」

という意味深な歌詞は、物語の伏線としても働いている。

思い出させる
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『泣かないでアマテラス』

『泣かないでアマテラス』(レコチョク試聴あり)

1992年『夜会Vol.4 金環蝕』のために書き下ろされた曲。

鈴をつけた足で大地を踏み鳴らすように踊りながら歌うシーンは感動を呼んだ。

この回は、天岩戸神話がモチーフになっている。

スサノヲノミコトの暴力に心を痛めて岩戸の中に閉じこもってしまったアマテラスを、アマノウズメという神が、舞を踊り、引き戻そうとする。

「泣かないで 泣かないで 泣いて終わらないで
 ほほえんで ほほえんで ほほえんで
 アマテラス!」

アメノウズメの優しさが垣間みえるようなそんな曲だ。

なお、この曲は、1996年公開の岩井俊二監督映画「スワロウテイル」の劇中でも流されている。

ウズメノミコト
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『Maybe』

『Maybe』(レコチョク試聴あり)

1990年の『夜会1990』のために書き下ろされた曲。

失恋の苦しさを紛らすために仕事に走るОLの役で歌っている。

この曲は鈴木保奈美が出演した「ブレンビー」のCMソングに起用され、1992年にシングル曲としてリリースされたものだが、今回、アレンジをガラリと変えて収録されている。

アップテンポのリズムとソウルフルな歌声は、したたかに生きる女性の姿を演出している。

歌詞解釈

オフィス街をたくましく生きる女性を描いた歌。

「私をいつも守ってくれるのはパウダールームの自己暗示」

と処世術をわきまえているが、それとは裏腹に、心の中にはもう1つの寂しい自分を抱え込んでいる。

「Maybe 夢見れば Maybe 人生は
 Maybe つらい思いが多くなるけれど
 Maybe 夢見ずに Maybe いられない
 Maybe もしかしたら」

歩く女性
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『ふたりは』

『ふたりは』(レコチョク試聴あり)

1990年の『夜会1990』で歌われた曲。

娼婦とゴロツキ、そして口さがない街の人たちと三者が登場するこの曲は、1990年のアルバム『夜を往け』にいったんは収録された曲であるが、今回、編曲を瀬尾一三からDavid Campbellに変え、新たな世界を構築した。

『夜会1990』やアルバム『夜を往け』では、すべてのパートを中島みゆきが1人で歌っているが、今回、世良公則を迎え入れ、娼婦のパートを中島みゆき、ゴロツキのパートを世良公則と棲み分けてデュエットしている。

なお、街の人々のパートは森ノ木児童合唱団が担当し、

「ごらんよ あれがつまり遊び女って奴さ」
「耳を貸すんじゃない呪いをかけられるよ」

というきわどい街の人のセリフを子どもの歌声で聴くことができる。

歌詞解釈

社会から冷たい目を向けられる娼婦とゴロツキがボロボロに傷ついた後にようやく出会う。

2人の男女の恋を歌っているが、それを社会との対立構造で描いている点では異色。

『Diamond Cage』

『Diamond Cage』(レコチョク試聴あり)

1992年『夜会Vol.4 金環蝕』の中で巫女さんの格好した中島みゆきが玉串を振りながらこの曲を歌っている。

「Diamond Cage」という歌詞のとこは若干メロディが異なる。

また、歌詞についても一部変更がある。

「悲しみも怒りも知らずに」

「さあ旅立て WOMAN
 嘆きの底から
 さあ旅立て WOMAN
 笑えてこそ笑顔さ」

と舞台で歌われていた歌詞はCDの方には未収録。

歌詞解釈

悲しい思いをしたくないために、ナイフより頑丈な檻で自分を囲って孤立しようとする。
その一方で、

「なのに何故WOMAN 愛し始めたら
 なのに何故WOMAN 恐いもの知らずなの
 なのに何故WOMAN ダイヤの檻さえも
 なのに何故WOMAN 卵の殻みたいね」

とその檻を壊す術も知っている。

『I love him』

『I love him』(レコチョク試聴あり)

1991年『夜会Vol.3 KAN(邯鄲)TAN』の中で歌われた曲。

タクシーの中でひと眠りしている間に、幼少から老婆へ至るまでの一生ぶんの夢を見る。
報われない恋を待ち続け年老いていく人生を夢の中で生きた後、女は大事なコトに気づくのだ。

「I love him I love him 返される愛は無くても」

という歌詞こそ、女が行き着いた答えなのである。

『夜会Vol.3 KAN(邯鄲)TAN』と違いCDの方はドラムレスで演奏されていて、ウィスパーボイスで歌唱されている。

歌詞解釈

愛してもらうことを待ちわびる日々。

待ってるだけなら愛をもらいそこねてもマイナスはない。

そんな事なかれ主義な「私」だが、そんな生き方に疑問が生じ始める、

「でも何か忘れたことがある
 でも誰も愛したことがない
 それで生きたことになるの?」

そして、やがて真実に到達するのだ、

「I love him I love him 返される愛は無くても」

『子守歌』

『子守歌』(レコチョク試聴あり)

1994年『夜会Vol.6 シャングリラ』の中で歌われた曲。

舞台で歌われたアレンジとは印象がガラリと変わっていて、エスニック色が強い歌唱法&サウンドになっている。

中東の砂漠を旅しているような気分になれる一曲だ。

『生きてゆくおまえ』

『生きてゆくおまえ』(レコチョク試聴あり)

1994年『夜会Vol.6 シャングリラ』の中で歌われた曲。

この舞台で中島みゆきは、主人公のメイとその母親の2役を演じている。

その母親の視点で歌われたのがこの『生きてゆくおまえ』だ。

ストーリーの種明し的な曲ではあるが、独立した曲として聴いたとしても、1つの短篇を読み終えたような物語性を帯びている。

アレンジャーのDavid Campbellが紡ぐサウンドは、物語の舞台にもなった中国の広い大地を思わせるスケール感を生み出している。

それもそのはず、50人のオーケストラが動員され、コロンビア映画の撮影所にあるサウンド・トラックを録るスタジオで大掛かりなレコーディングが行われたのだから。

草原
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『人待ち歌』

『人待ち歌』(レコチョク試聴あり)

1993年『夜会Vol.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』の中で歌われた曲。

「待つ」をテーマにしたこの舞台で、中島みゆきは「待つ」と「待たない」の違いを発見した。

花びらを数えながら「来る、来ない」という心もとない歌声から、突然転調、ドラムと共に力強い歌声に代わる。

「荒野を超えて 銀河を超えて
 戦さを超えて 必ず逢おう」

「個」からグンと上空から俯瞰したようなスケール感に様変わりしている。

ひいらぎ
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