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中島みゆきのアルバム『いまのきもち』の曲解説&みんなの感想

気持ち

2004年11月17日に発売された32作目のオリジナルアルバム
『いまのきもち』
をみていこう。

中島みゆき『いまのきもち』の特徴

 

『いまのきもち』(レコチョク試聴あり)

1976年から1988年までの楽曲をピックアップして瀬尾一三によるアレンジでセルフリメイクした。

このアルバムを出すことになった経緯

もともと2004年「カムジン」12月号のインタビュー記事によると、自分が1回出した曲を歌い直して出すことは言い訳がましいので、このような企画のアルバムは考えていなかったという。

それが最近のコンサートで昔の歌を歌うときに、昔の曲のままコピーして歌うよりも、その時の気持ちをそのまま出していくのが自分らしいと思うようになった。

新作はすで用意してあり、それを基に次のアルバムを制作してもよかったのだが、かつての曲への気がかりがあったようだ。

「次の新作出ました、聴いてください、前の曲はもういいです、という感じでやるのは、自分の曲を自分で粗末にするみたいで、この子たちがかわいそうっていうのもあるし」

タイトルについて

「いまのきもち」というのはこのアルバムに限らず中島みゆきの歌手としての姿勢である。

同じ曲であってもコンサートや夜会で聴く表情が異なるのは、その時の「いま」の気持ちを大事にしているからだという。

「その曲を発表したときのいまのきもちを尊重しようと思ったら、それを単にまねるのはかえって、その時のきもちに対して失礼ですよね」

中島みゆきは、曲に対して常に「現在形」の気持ちで、その曲が生まれた過去と向き合っているのだ。

曲を選んだ基準

曲は1976年から1988年までの、つまりアレンジャーの瀬尾一三とタッグを組む以前のものから選ばれている。

これは瀬尾一三から、自分のアレンジした曲を変えるにはまだ気持ちが割り切れていないからと、釘を刺されたためである。

それでも、打ち合わせの段階では何十曲と候補があったそうな。

バラエティに富むようにと取り合わせが考えられ、また、音域が広くなった今だからでこそイメージ通りに歌える曲というのもこの候補から選ばれた。

シングルコレクションみたいにはしたくないという気持ちもあったようで、アルバムからの曲の割合が多い。

瀬尾一三泣かせのアルバム

通常のオリジナルアルバムでは、サウンドを作るための手掛かりとしてデモテープが作られる。

今回は、すでにリリースされている昔の曲を瀬尾一三が聴き、それを基にして音が作られている。

つまり、昔の歌声がデモテープ代わりにされた。

瀬尾一三が「今の中島みゆきならこう歌うだろう」と見当をつけて作った音であったが、なかなかハマらなかったりして、現場でちょこちょこと修正が加えられたのである。

『地上の星』を意識した

『地上の星』が大ヒットして色んなところでこの曲を耳にするようになった中島みゆきは、自分の昔を知らない人もこの曲を聴いているのだと思うようになった。

このこともまた、今回のようなセルフリメイクのアルバムを作る1つのきっかけとなった。

「中島みゆきって『プロジェクトX』の人でしょっていう方が、昔出していた曲をいっぺん聴いてみたいという場合にはお手軽かもしれないです、こんなんですってことで」

ジャケット撮影は命がけ

中島みゆきは紫外線アレルギーなので、『いまのきもち』の屋外でのジャケット撮影は覚悟をもって臨んだとラジオ番組で語っている。

1991年「月刊カドカワ」11月号の中で、紫外線にあたるとアレルギーの水泡で膨れ上がり発熱するという自身の体質について語っている。

新しいのがいいとは限らない

このアルバムに収められた曲たちはクオリティを良くするために歌いなおしたというわけではない。

「カムジン」のインタビューで、中島みゆきはこう語る。

「最初に出した歌い方やあの音が想い出と一緒になってるから、それをさわられたくない人もいると思うんですけどね。
 まあ、そういう方は、前のを回収するわけではありませんので、それを聴いていただくということでね」

『いまのきもち』のみんなの感想

曲解説

『あぶな坂』

『あぶな坂』(レコチョク試聴あり)

1976年の1stアルバム『私の声が聞こえますか』の1曲目に収録されていた曲。

その声質の変化も聴き比べると面白いかもしれない。

歌詞解釈

女が橋を壊してしまったがために人々はあぶな坂を通らなければならなくなった。

その坂を転げ落ちていく人たちを眺め、怪我した彼らを介抱したり、橋を壊してしまったがために村八分を受けたりと、しょっぱい世界が描かれている。

「今日も坂は だれかの痛みで
 紅く染まっている
 紅い花に魅かれて だれかが
 今日も ころげ落ちる」

『わかれうた』

『わかれうた』(レコチョク試聴あり)

1977年にリリースされ大ヒットした『わかれうた』

メキシコの民族音楽を彷彿とさせるようなサウンドに乗せてゆったりと歌われている。

ノスタルジックな1本道を、馬車に揺られて旅しているような気持ちになれる。

歌詞解釈

途に倒れて去っていく男の名を叫び続ける。

冒頭からパンチの効いた歌詞である。

別れに好かれるとわかれうたを口ずさみたくなり、それが癖になっていくのだ。

「別れはいつもついて来る
 幸せの後ろをついて来る
 それが私のクセなのか
 いつも目覚めれば独り」

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『怜子』

『怜子』(レコチョク試聴あり)

1978年のアルバム『愛していると云ってくれ』に収録されていた曲。

オリジナルと比べたらだいぶゆったりとしたリズムで歌われている。

歌詞解釈

知人(友人?)の男女が愛を育んでいく様子を祝福する一方で、その微笑ましいはずの姿がなぜだか自分の胸には痛い。

片想いをジッと胸に秘めているいじらしさは、この歌を聴いている我々にも痛すぎる。

「ひとの不幸を 祈るようにだけは
 なりたくないと願ってきたが
 今夜 おまえの幸せぶりが
 風に追われる 私の胸に痛すぎる」

見つめる
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『信じ難いもの』

『信じ難いもの』(レコチョク試聴あり)

1979年のアルバム『親愛なる者へ』に収録されていた曲。

ライトタッチなオリジナルと違いサウンドに重厚感があり、テンポ感もゆったりめである。

歌詞解釈

人は、寂しくなると、嘘まみれの愛の言葉も聞き入れてしまう耳を持ってしまうらしい。

信じ難いものを分かりやすくリストアップしてくれている歌だ。

愛の言葉、誘い言葉etc.

「十四や十五の 娘でもあるまいに
 くり返す嘘が 何故みぬけないの
 約束はいつも 成りゆきと知りながら
 何故あいつだけを べつだと言えるの」

『この空を飛べたら』

『この空を飛べたら』(レコチョク試聴あり)

1979年のアルバム『おかえりなさい』に収録されていた曲。

もともとは加藤登紀子のために書き下ろされた提供曲。

瀬尾一三のサウンドで装い新たになっても、オリジナルの印象はそのままで、この曲の歌詞やメロディが持つ世界観の強さを感じる。

このニューバージョンだが、スタジオで撮影されたライブ映像がDVD『中島みゆきライヴ! Live at Sony Pictures Studios in L.A.』に収録されている。

歌詞解釈

恋しい人を思うときについ空を眺めてしまう人間の習性から、もしかしたら人間は鳥だったのかもしれないと思えてくる。

空を眺めている人の背中が見えてくるような歌だ。

「暗い土の上に 叩きつけられても
 こりもせずに空を見ている
 凍るような声で 別れを言われても
 こりもせずに信じてる 信じてる」

夕空
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『あわせ鏡』

『あわせ鏡』(レコチョク試聴あり)

1981年のアルバム『臨月』に収録されていた曲。

オリジナルの方は松任谷由実の夫である松任谷正隆がアレンジを手掛けている。

こちらのニューバージョンは、オリジナルのあのけだるい感じのノリは踏襲しつつも、ジャズバーで聴いてるような艶っぽさが加わっている。

歌詞解釈

鏡に映る自分の姿に、理想と現実のギャップを突きつけられる。

そのギャップを埋めるためにつくり笑いが必要になってくるのだ。

「鏡よ鏡 あたいは誰になれる
 鏡よ鏡 壊れてしまう前に
 つくり笑いとつくり言葉であたいドレスを飾るのよ
 袖のほつれた シャツは嫌なの あたい似合うから」

『歌姫』

『歌姫』(レコチョク試聴あり)

1982年のアルバム『寒水魚』に収録されていた曲。

『寒水魚』は、中島みゆきのオリジナルアルバムの中で最もセールスを記録したアルバムで、その中でも『歌姫』は存在感のある曲で、かつてのベストアルバムにエントリーされたこともあった。

このニューバージョンだが、スタジオで撮影されたライブ映像がDVD『中島みゆきライヴ! Live at Sony Pictures Studios in L.A.』に収録されている。

歌詞解釈

船に置いてかれた水夫や、蜜を探して錆びた玩具に舞いおりる蝶など、1つ1つの描写が言いようもない切なさとなって胸に迫ってくる。

やり場のない気持ちを歌姫に預けて、歌い流してもらうことで、報われぬ思いを成仏させようとしている。

「淋しいなんて 口に出したら
 誰もみんな うとましくて 逃げだしてゆく
 淋しくなんか ないと笑えば
 淋しい荷物 肩の上では なお重くなる」

『傾斜』

『傾斜』(レコチョク試聴あり)

1982年のアルバム『寒水魚』に収録されていた曲。

この曲の歌詞が、高校国語の教科書に掲載されたこともあり、若者にとっては、この頃大ヒットした『悪女』よりも馴染みのある曲なのかもしれない。

『夜会VOL.3 KAN(邯鄲)TAN』では、老婆の役で歌われた印象深い曲である。

歌詞解釈

前半、歳をとっていくことの弊害を歌っていてやるせない気持ちになってしまうが、サビに入ると曲調とともに一転し、今度は歳をとっていくことがいかに素晴らしいかを教えてくれる。

これを自虐や強がりととるのかは、聞き手次第だとは思うが。

「としをとるのはステキなことです そうじゃないですか
 忘れっぽいのはステキなことです そうじゃないですか
 悲しい記憶の数ばかり
 飽和の量より増えたなら
 忘れるよりほかないじゃありませんか」

老人
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『横恋慕』

『横恋慕』(レコチョク試聴あり)

1982年に発売されたシングル曲のリメイク。

「これっきりでよすわ」という若い娘を思わせるような独特の言葉遣いだが、やはりそこは、このアルバムのコンセプト通り、「いまのきもち」の解釈で歌われていて、歳相応というか。

笑福亭鶴瓶は自身のラジオ番組でこの曲をかけて、「歳をとられたせいか丸くなった?」と感想を述べているが、確かに、円熟味を帯びた『横恋慕』に仕上がっている。

歌詞解釈

女は、片想いに踏ん切りをつけるために男のもとへ電話をかける。

だが、かけた先は男が恋人と暮らす愛の巣。

運悪く、その恋人が電話を取ってしまう。

おそらく電話の近くにいるであろう男の耳に届くように「好きです」と言ってしまえるのは、若さゆえだからだろうか。

シチュエーションがありありと想像できる歌である。

「ねてるふりで 話は聞こえてるはずよ
 ためしに彼女
 耳から受話器を 遠ざけてみてよ
 夜明けの前のバスで あなたの住む町へ
 着くわと告げれば
 おどろく あなたの背中 見える」

『この世に二人だけ』

『この世に二人だけ』(レコチョク試聴あり)

1983年のアルバム『予感』に収録されていた曲。

ゴールデンボンバー鬼龍院翔が失恋ソングに推していた曲である。

容赦なく現実突きつけてくる曲で、聴くには覚悟が必要だが、マイルドな歌い方が多少耳に入りやすく加工してくれている。

このニューバージョンだが、スタジオで撮影されたライブ映像がDVD『中島みゆきライヴ! Live at Sony Pictures Studios in L.A.』に収録されている。

歌詞解釈

ある日、本屋で、好きな男の妻が描いた絵が載った本を偶然みつける。

結婚という障壁があるから男に手が届かないのか?

いや、たとえ世界に2人残されたとしても男はきっと自分を選んでくれないだろう。

妄想の中でも恋は儚く砕け散るのである。

「二人だけ この世に残し
 死に絶えてしまえばいいと
 心ならずも願ってしまうけど
 それでもあなたは 私を選ばない」

『はじめまして』

『はじめまして』(レコチョク試聴あり)

1984年のアルバム『はじめまして』に収録されていた曲。

音楽の方向性を模索していたいわゆる「御乱心の時代」に発表された曲だが、1990年代以降の中島みゆきの作風の兆しを感じさせる。

歌詞解釈

「はじめまして」という言葉は、ふつうは、いま目の前にいる相手にかける挨拶であるが、それを明日へ投げかけている。

軽快なサウンドと相まって、この先の出会いへの期待が感じられる。

「はじめまして 明日
 はじめまして 明日
 あんたと一度 つきあわせてよ」

『どこにいても』

『どこにいても』(レコチョク試聴あり)

1986年のシングル『見返り美人』のB面曲。

ゴールデンボンバー鬼龍院翔が失恋ソングに推していた曲。

アンニュイな感じはオリジナルを引き継いでいる。

歌詞解釈

恋をすると、どこにいてもその人の姿をつい探してしまう。

偶然っていうものを期待しがちだが、そういう時に限って会えないものだ。

そして、その偶然すらない場所というのが、皮肉にも自分の部屋だったりする。

身につまされるから、中島みゆきはやめられない。

「どこにいても あなたが急に通りかかる偶然を
 胸のどこかで 気にかけているの
 あなたがまさか 通るはずない
 こんな時間 こんな場所 それはわかっているのに」

『土用波』

『土用波』(レコチョク試聴あり)

1988年のアルバム『中島みゆき』に収録されていた曲。

土用波とは晩夏にあたる「夏の土用」の時期に発生する大波のことだが、メロディやサウンドにも大きなうねりを感じる。

海を多く歌ってきた中島みゆきらしい締めくくりの1曲である。

このニューバージョンだが、スタジオで撮影されたライブ映像がDVD『中島みゆきライヴ! Live at Sony Pictures Studios in L.A.』に収録されている。

歌詞解釈

つての苦い恋の思い出を波に根こそぎさらっていって欲しい。

それだけのパワーを持っているのは土用波しかない。

「昔の歌を聴きたくはない
 あの日が二度と戻らないかぎり
 なつかしい名前口ずさんでも
 砂を崩して 土用波がゆく」

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