1978年8月21日に発売された6作目シングルのカップリング曲
『ほうせんか』
をみていこう。
『ほうせんか』
作詞・作曲 中島みゆき
編曲 若草恵
収録アルバム
『Singles』
1987年8月21日に発売されたシングルコレクションアルバム。
1975年にリリースされたデビュー曲『アザミ嬢のララバイ』から1986年『やまねこ』までのシングル曲を収録したアルバム。
『時代』『悪女』『わかれうた』『ホームにて』など初期の中島みゆきのヒット曲いっぱいの豪華3枚組。
このアルバムに収録されている『ほうせんか』は1978年8月21日に発売されたシングル『おもいで河』のカップリング曲である。
誰のことを歌っているのか?
『ほうせんか』はSTV(札幌テレビ)ディレクターの竹田健二への追悼曲である。
竹田健二と中島みゆきの関係
竹田健二は、中島みゆきがデビュー前に世話になった人だが、些細なことでケンカとなったまま竹田は急逝してしまう。
死因は急性心不全、36歳という若さだった。
ケンカした仲ではあるが、2016年8月28日に放送された『ON THE RADIO』(FM NACK5)で松山千春が語るところによると、中島みゆきは竹田健二の葬儀に駆けつけてきたという。
竹田健二とはどんな人間なのか?
竹田健二は、歌手の松山千春を世に送り出した人物。
千春と竹田は、1975年4月に北海道の帯広で行われた「全国フォーク音楽祭」で出会った。
この大会に出場した当時アマチュアの千春は、そこで高校時代に作った『旅立ち』という曲を歌った。
歌が終り、1人の審査員が「ギターが悪いな」と感想を述べた。
それに千春は憤慨し、「歌はどうだったんですか!」と食ってかかった。
その審査員というのが、この竹田健二だったのだ。
千春にとって竹田の第一印象は最悪だった。
当然不合格だと諦めていた千春だったが、予想に反して、合格を勝ち取った。
なぜ?
千春はそう思ったに違いない。
審査員の竹田からはギターの感想しかなかったのに……。
だが竹田は、千春の才能を買っていたのだ。
その証拠に、その後、竹田は千春へラジオへの出演を打診している。
ラジオ番組の中の15分の枠のコーナーで毎週2曲の新曲を発表するというものだった。
それは、周囲の反対を説得して竹田が通した企画だった。
それだけではない。
その後、千春をレコードデビューさせようと声をあげたのも竹田だった。
当時、無名の千春に、しかも田舎の放送局がそんなリスクは取れないと、周囲の誰もが反対した。
だが、竹田は自分の退職金を前借りしてでも、それを千春のデビューにかかる費用にあてようとしていたのだ。
そして、念願かなって1977年1月にリリースした最初の曲が、千春と竹田が最初に出会った時の歌、『旅立ち』だ。
同年8月に道内でコンサートツアーをやることが決まったタイミングで、竹田は千春に高価なギターを買い与えている。
「値段が高いものほど音がいいんだ」
と、これからプロとしてやっていく千春への投資のつもりだったのだろう。
帯広大会で千春が弾いていたギターは5000円。
「ギターが悪いな」という竹田のコトバの前には、「歌がいいのに」が省略されていたのだ。
千春は竹田に買ってもらったギターと竹田手作りの台本でコンサートに臨む。
TBS系トーク番組「A-Studio」にゲスト出演した際に千春はこの時のことを語っている。
バンドもつかない弾き語りが心細いだろうと思った竹田は、ステージに薔薇の花を1本置いておくように指示したという。
ツアーは順調だった。
だが、函館公演を控えた8月26日のことだった。
竹田はあっけなく倒れ、36歳という若さで生涯を終えた。
急性心不全だった。
その日の公演のアンコールで、千春は泣きながら『旅立ち』を歌ったという。
松山千春のその後の活躍はここに述べるまでもないが、千春はコンサートのステージには未だに1輪の薔薇をテーブルの上に飾っている。
それを竹田と思って語り掛けるように歌っているのだ。
歌詞解釈|松山千春を意識した歌詞?
『ほうせんか』は竹田健二の追悼曲であることは公にされていることである。
そして、竹田健二を語る上で松山千春は欠くことのできない存在であることは前述した通り。
そして、松山千春というのは中島みゆきの盟友であることにも触れておきたい。
中島みゆきは、松山千春とさだまさしと連れ立って焼肉を食べに行く仲で、彼らの頭髪を案じてワカメスープを飲むことを勧め、さらには2人のコンサートにはワカメを送るというほど気の置けない仲なのだ。
その親密ぶりを考えると、中島みゆきがこの曲を書く上で松山千春が多少なりとも意識されたことは自然と想像がつく。
そして、それは歌詞にも反映されているようにも思える。
ここからは憶測なのでうわごとと思って読んでいただきたいのだが、『ほうせんか』に登場する「あの人」が別々の2人を指しているように思えて仕方ない。
竹田健二ともう1人は松山千春だ。
1番の歌詞に出てくる、
「後姿のあの人に 優しすぎたわと ぽつり」
の「あの人」は、去って行く竹田の背中に語り掛けているようだが、2番に出てくる
「後姿のあの人に 幸せになれなんて 祈れない」
というのは、明らかに取り残された側の人間を指している。
歌詞はこう続く、
「いつか さすらいに耐えかねて 私をたずねて来てよ」
去っていく「あの人」、残された「あの人」、そして「私」という点を繋ぐと、竹田健二、松山千春、中島みゆきというトライアングルが自ずと浮き上がってくる。
竹田健二が亡くなった1978年3月23日に、中島みゆきは「松山千春のオールナイトニッポン」にゲスト出演している。
竹田が生前最後に千春と話した内容が「オールナイトニッポンに出てみないか?」だった。
それを考えると、この番組の前後に中島みゆきと松山千春の間で竹田健二の話題がきっと出たに違いない。
この番組出演の5か月後に『ほうせんか』がリリースされている。
カバーしたアーティスト
真璃子
1986年にシングル『夢飛行』で第28回日本レコード大賞新人賞、第17回日本歌謡大賞放送音楽新人賞を受賞した真璃子。
1991年に『ほうせんか』のカバー曲を15作目のシングルとしてリリースしている。
エスニック調のアレンジで歌われている。
『ほうせんか』のみんなの感想
中島 みゆきさんの、ほうせんかと言う歌が好き。歌詞、特に2番とか読むと失恋の歌にも見えるが、私にとっては追悼歌。先立たれた者は生きなくては。それが供養にもなる。「後ろ姿のあの人に優しすぎたわとポツリ」明るく軽いメロディに乗せて。表に見えていることが全てじゃないと教えてくれる。
— ソコツのてるてる坊主😐 (@mwvforrestmeow) December 10, 2020
アンビバレントでふと思い出したんだが
俗な話だが、中島みゆきという歌手がいて(知ってるか)
昔々若かったころ、複雑な感情を抱いていた
いくつかの曲をおぼえているが
「後姿のあの人に 幸せになれなんて祈れない」
これがいちばん刺さったな#ほうせんか— お茶くん (@Shunjukun) October 28, 2020
アザミをみると「アザミ嬢のララバイ」を、ホウセンカがをみると「ほうせんか」を歌い出すくらい中島みゆきさんの曲が身体に染みついているので、トレンドに上がったらドキリとしますが、なにもなくてよかったです。#中島みゆき
— marble (@yuzubaru) July 21, 2020
中島みゆきの「ほうせんか」が身に染みる。あの世へと去っていく人にしがみついて成仏なんてさせたくなくなる。もう一度戻ってきてと本気で願ってしまう。
生前志村さんはみゆきファンであることを公言していたので、この思いわかってくれると思う。https://t.co/enc1GowQ5d
— SAY WAY (@hyo_tantugi) April 12, 2020
ラジオから中島みゆき『ほうせんか』が流れてきた。アッサリと歌ってるのにめちゃめちゃ歌詞が深~い。やはり天才だ!
— なか (@nakashin2013) December 29, 2013
『ほうせんか』はこんな時に聴こう
亡くなった人を偲ぶときに『ほうせんか』を聴こう。
『ほうせんか』はサブスク(定額制)でも聴ける
2020年1月8日よりついにサブスクリプション(定額制)で中島みゆきの曲を聴けるようになった。
『Amazon Music Unlimited』に登録すれば、月額980円(プライム会員は月額780円)で中島みゆきのシングル曲(カップリング含む)が聴き放題。
(※1975年版『時代』、映画主題歌バージョン『瞬きもせず』は含まない)
もちろん中島みゆき以外のアーティスト曲も聴くことができる。
その数、6500万曲以上。
30日間の無料お試し期間があるので、ぜひ一度試していただきたい。
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