2011年10月26日に発売された42枚目のシングル、
『荒野より』
をみていこう。
代表曲『空と君のあいだに』と意外な共通点があったり、中島みゆきが普段どういった段取りで曲を作っているのかがみえてきたぞ。
中島みゆき『荒野より』
作詞・作曲 中島みゆき
編曲 瀬尾一三
『荒野より』の歌詞の意味
歌詞に登場する「僕」とは一体だれなのだろうか?「君」とは一体だれなのだろうか?
「どんなに距離があっても」お互いに「笑っているだろう」「走っているだろう」というのは、ずっと会えないでいる遠距離恋愛を歌っているのだろうか?
この歌詞の意味に迫ってみよう。
『荒野より』は『南極大陸』の主題歌
『荒野より』は、2011年にTBS系で放送されたドラマ『南極大陸』の主題歌として、中島みゆきが提供した曲だ。
『南極大陸』は昭和30年代、戦後最大のプロジェクトとして前人未到の南極大陸に向かう越冬隊員たちを描いた物語だ。
犬はダメよと釘を刺された中島みゆき
2011年10月22日のラジオ番組『福山雅治のオールナイトニッポンサタデースペシャル 魂のラジオ』にゲスト出演した中島みゆきは、『荒野より』が生まれた経緯について語っている。
中島みゆき曰く、プロデューサーが主題歌をオファする際、中島みゆきはかなり念押しされたらしい。
「これは人間が主人公のドラマですからね?
犬じゃなくて人間ですからね?」
ドラマ『南極大陸』は、南極で越冬隊員らと行動を共にする樺太犬も登場する。
そう、有名なタロとジロである。
だからといって、なぜプロデューサーはこんな妙な念押しをするのだろうか。
プロデューサーは知っていた。
中島みゆきが犬に弱いことを。
映画『奇跡の山 さよなら、名犬平治』では犬が出てくるというので主題歌『誕生』を喜んで提供しているし、
『空と君のあいだに』ではドラマ『家なき子』の犬の目線で詞を書いているし、
CMではやたら犬との共演が多いし、
『夜会VOL.11 ウィンター・ガーデン』では、犬に扮して歌っているし。
子どもの頃からずっと犬を飼い愛でている中島みゆきにとって、犬はすっかり生活の一部に組み込まれている。
犬と聞けば、それを楽曲に盛り込みたくなる彼女の習性を、プロデューサーは知っていたのだ。
だから、「犬じゃなくて人間ですからね?」と釘を刺したのだ。
だが、この時、すでに中島みゆきの脳内では、タロとジロが駆け回っていたという。
結局、プロデューサーの念押しもかいなく、中島みゆきは犬視点で曲を作り上げてしまった。
それが、『荒野より』。
中島みゆきは、『荒野より』について、
「犬の気持ちになって越冬隊員のことを思い歌詞を書いた」
と語っている。
つまり、歌詞に出てくる「僕」は犬のことで、「君」とは越冬隊員のことなのだ。
「距離」というのは、南極の荒野にいる「僕」と日本にいる「君」の間にある気の遠くなるような距離を指しているのだ。
モロに犬目線の歌になってしまった『荒野より』。
中島みゆき側は、プロデューサーに、
「すべての生き物に繋がる歌です」
と、苦し紛れの言い訳を並びたてる。
に対し、プロデューサーは、
「おかしいな、なんだかこの歌詞、犬の気持ちになってくんだけどなぁ」
と首を捻っていたそう。
そんなプロデューサーだが、公には
「この曲がドラマの中で流れるのが楽しみ」
と、主題歌に期待を寄せたコメントをしている。
1956年、南極観測隊隊員がタロ・ジロを含む22頭の樺太犬と南極へ発った。
1958年、第2次越冬隊との交代する予定が悪天候のために中止。
関係者全員が南極から脱出することになるが、樺太犬を救出する余裕はなく、そのまま基地に残し、帰国した。


木村拓哉は『荒野より』をどのように思っていたか?
ドラマ『南極大陸』の主演を務めた木村拓哉だが、彼は、この『荒野より』をどう感じているのだろうか。
木村拓哉が最初にこの曲を聴いたのは、リリースされるよりも前のことである。
中居正広が司会を務めるTBS系深夜生放送音楽番組『カミスン!』に出演するために局入りしていた時だ。
楽屋で聴きたくなかった木村拓哉は、空き部屋を借りて、そこでラジカセを大音量にして聴いたという。
そして、1人泣いたという。
2011年9月9日のラジオ番組『木村拓哉のWhat’s UP SMAP!』では、まだリリース前の『荒野より』を一足先にiPhoneに入れて聴いていることを自慢げに語っている。
中島みゆきは『南極大陸』をどう思っていたか?
中島みゆきは『南極大陸』の一視聴者でもあった。
いったいこのドラマへどんな感想を抱いていたのか。
ラジオ番組『木村拓哉のWhat’s UP SMAP!』に、中島みゆきは声のコメントを送っている。
「木村拓哉様」と始まり、番組内で『荒野より』を何度もかけてくれたことへの感謝をまず述べる中島みゆき。
ドラマ『南極大陸』を観ているらしく、その感想も述べている。
「生傷絶えないだろうなぁ」と体張った役者への労いを交えつつ、毎回、涙しているといったこと。
「犬」というワードに興奮して、犬の気持ちで曲を仕上げたという経緯。
そして、ドラマの中の木村拓哉までが犬に見えてしまっているとも明かしている。
中島みゆきにとって木村拓哉はラブラドールレトリーバー1歳だそうな。
そして、ドラマの最終回に向けて酒盛りの準備をするつもりだと述べ、声のコメントを終えている。
不意打ちでこのコメントを流された木村拓哉は、
「ウソだろ!?」
「アニメの声優さんじゃないよな?」
と、かなり半信半疑の様子だった。
ともあれ、犬の目線で『荒野より』を書き、木村拓哉にすら犬の姿を重ねるなんて、中島みゆきの犬愛は計り知れない。
『荒野より』はずいぶん昔に作られていた
2011年10月22日のラジオ番組『福山雅治のオールナイトニッポンサタデースペシャル 魂のラジオ』にゲスト出演した中島みゆきは、『荒野より』が実は14~5年も前の曲であると明かしている。
中島みゆきにとって、これは特殊なケースではない。
彼女は、曲を作るのがかなり遅いらしく、日頃から曲をストックしているのだそう。
2010年10月13日の『坂崎幸之助と吉田拓郎のオールナイトニッポンGOLD』にゲスト出演した際も、同じことを語っている。
思えば、まだデビューしたての頃の中島みゆきは、『世界歌謡祭』でグランプリを受賞した際、記者に持ち歌の数を訊かれ、「130曲」と答えている。
この大会で披露した『時代』も、デビューよりずいぶん前に作ったものを引っぱり出して発表しているというから、曲をストックする姿勢は昔から続いているものらしい。
福山との対談では、ストックされたメロディや詞の断片が、主題歌オファなどのきっかけで、虫食い的に埋まっていき、1つの楽曲を成すと語っている。
『荒野より』もこのパターンである。
『荒野より』をカバーしたアーティスト
久我陽子
2008年に中島みゆきから『闘りゃんせ』の楽曲提供を受けている久我陽子。
2015年には中島みゆきの持ち歌である『ひとり上手』をカバーし、シングル発売している。
そのカップリング曲に入っているのが、この『荒野より』だ。
久我陽子の歌う『荒野より』は、オリジナルとは違った独特の歌い方。
男も女も超越したようなその歌声は、やはり犬の目線を意識しているのか。
『荒野より』が収められたアルバム
『荒野より』
2011年11月16日に発売されたシングルと同名アルバム『荒野より』。
『荒野より』は1曲目に収録されていて、シングル版と同じアレンジ。
『荒野より』のPV
『荒野より』のPVはDVDやBlu-rayとしては発売されていない(2020年5月時点)が、YouTubeの『中島みゆき公式チャンネル』で視聴することができる。
1人の写真家の青年のモノローグから始まる。
撮影している最中に電話がかかってきて、
「父さん死んじゃった」
という母(?)からの衝撃的な事実を告げられ、デェ~ンとイントロが入る。
父親との思い出を回顧する物語が『荒野より』の曲と共に展開されていく。
合間合間に、涼しげな着物姿で手紙を書いている中島みゆきのシーンが登場している。
『荒野より』のみんなの感想
なかなか涙が出なかったのに,中島みゆきの「荒野より」を聞いて自然に涙が出た(´∩ω∩`)
— リュウヤ (@bearsfanm30) May 27, 2020
中島みゆきさんの「荒野より」を聴いていいなぁこんな風に思える人がいたらなぁってなったけどその相手が未だに見つからない
— ねる (@0XAm0Z3mNVwzAue) May 25, 2020
中島みゆきの「荒野より」を最近聴きまくってるんだけどほんと好きなんだよ。苦しいときに聴きたいよね。あと山とか砂漠超えする時とか
— 緋林檎🍎オリュンポス完了 (@hI9osDVAHiOtybi) May 20, 2020
歌詞の解釈って人によって違っていいと思うんだけど、中島みゆきさんの「荒野より」って色んな解釈ができるなぁと。公式のPVでは多分、亡くなった父→息子へ。主題歌になったドラマを考えれば南極大陸の犬→探検隊の人っていう捉え方もできる。他にも、仕方なく分かれた恋人へという解釈もできると思う
— 萌香 (@7s7h3u) February 15, 2020
父が亡くなってしばらくの間
ゆずの『逢いたい』を唄うと泣いてましたそしてそのあとは、中島みゆきの『荒野より』を唄うと泣いてたなぁ…とふと今 聴いてて思い出しました。今は泣かないよー(。・ω・。)ゞ— 似非優等生 (@liki_eri) January 20, 2020
『荒野より』はこういう人に歌おう&贈ろう
『荒野より』は離れて暮らす大事な人に歌おう&贈ろう。
『荒野より』はサブスク(定額制)でも聴ける
2020年1月8日よりついにサブスクリプション(定額制)で中島みゆきの曲を聴けるようになった。
『Amazon Music Unlimited』に登録すれば、月額980円(プライム会員は月額780円)で中島みゆきのシングル曲(カップリング含む)が聴き放題。
(※1975年版『時代』、映画主題歌バージョン『瞬きもせず』は含まない)
もちろん中島みゆき以外のアーティスト曲も聴くことができる。
その数、6500万曲以上。
30日間の無料お試し期間があるので、ぜひ一度試していただきたい。
『Amazon Music Unlimited』の公式サイトはコチラ。
