ラジオ

『わかれうた』を歌ってた頃の中島みゆきの対談|1978年「FM25時 きまぐれ飛行船」(FM東京)より

ココア

1978年の「FM25時 きまぐれ飛行船」(FM東京)に中島みゆきがゲスト出演している。
その模様をまとめてみた。

『元気ですか』の秘話

みゆき「こんばんわ~よろしく~」

進行役は小説家の片岡義男とジャズシンガーの安田南

オープニング、まず流れた曲はアルバム『愛していると云ってくれ』より『元気ですか』

『元気ですか』(レコチョク試聴あり)

朗読形式の異色なこの曲。

レコーディングでの秘話を語ってくれた。

みゆき「これね、いっぺんだけデモテープ撮ったのね最初に。
それは、詩を書いてから読んだのが一番最初だったのね、声に出すのが。
それでLPレコーディング用のデモテープを作って、それからその後で本番のレコーディング用に読んだのね。
でも、それ全部ダメだったの」

南「ダメだったってのは?」

みゆき「ワザとらしくなっちゃって」

片岡「デモの方がよかったワケだ」

南「あ、これはデモ?」

結局、本番に撮った音は全部カットになり、最終的にアルバムに収録されたのは皮肉にも一番最初に声を出して読んだ方のデモテープだったのだ。

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なぜ、中島みゆきは失恋歌ばかりなのか?

南「男の人と上手くいかなくなっちゃうっていう歌がわりと多いですか?」

みゆき「『ハッピーだわ~』『あなたと私、世界は2人のために』ってのはないねぇ。
あらかた私、虫取り網持って追っかけてる方ばっかりでね、なかなか捕まんないんですよ。
鴨が。
いつも鍋とネギは用意してんですけど、鴨が捕まらなくってねぇ(笑)
いつも逃げられちゃうもんですから。
いつもネギ鍋ばっかり食ってるもんですから」

南にとって、歌の世界観と中島みゆきの実体が大きく食い違うようだ。

南「でも、彼女(中島みゆき)みたいな魅力的な女の子が私信じられないワケ。
歌の世界はぜったい嘘だって風に思ってるのね(笑)
ぜったいどんどん(男が)捕まっていくと思うワケ」

みゆき「いや、みんないるのよ相手なら。
『あ、鴨、あ、鴨』っていっぱいいるじゃない?
その辺バッサバサ飛んでんのね群れなして。
で、捕まえようと思ったら必ず先に捕まえてるのがいるのね」

南「連れ合いの?」

みゆき「つがいなのねぇ。
つがい捕まえたって面白くもなんともないのねぇ(笑)」

『ミルク32』『わかれうた』の秘話

つづいて流れた曲は『ミルク32』『わかれうた』

『わかれうた』(レコチョク試聴あり)

『愛していると云ってくれ』に収録されている『ミルク32』は、『元気ですか』同様にこちらもデモテープの方が採用されたという。

そして、このアルバムに収録されている中島みゆきの代表曲といえば、やはり『わかれうた』だろう。

南「『わかれうた』って圧倒的にヒットしたでしょ?」

みゆき「ヒットしたのかヒットしてないのかあんまり私自身は。
ラジオかけても耳にしなかったし、街を歩いてても聞かなかったし。
ホントかしら?って思ったんだけどね」

中島みゆきにとって、初めてオリコンチャートの10位以内に入り、また1位を獲得したヒットシングルだが、本人はさほどの実感はないようだ。

みゆき「業界誌みたいなのに順位が出るでしょ?
私、あれ、旅に行っててしばらく見てなかったんだけど、最初に見たときは4位とか来てるときだったのよね。
その時に私ね、『いやあ意地悪いことするもんだなあ』と思ってね、きっと誰かが4位のところに『わかれうた』って書いたテープをひっつけておどかそうとしてんだと思ってね、私そこを一生懸命はがそうとしたのよ(笑)
きっと下に別の曲が書いてあるに違いないと思ってね」

そうとう疑り深い中島みゆきである。

南「私、でもね『わかれうた』聞いたことあるんだわ。
いわゆる買ってレコード聴くってんじゃなくて、街歩いててとか、喫茶店入ったとかそういう形でね」

南の肌感覚では『わかれうた』はまぎれもなく流行歌だ。

みゆき「ピンクレディーの歌とかね、ああいうのが売れてるっていうのは分かる気がするのね。
『流行ってるもんなあ』って気がすんの」

だが、それとは対照的に、自分の曲は、流行歌と呼べるような性格を帯びていないと語る。

みゆき「果たしてこのぐーたらぐーたらタ~ラタラ歌ってる『わかれうた』がね、すごいのぺ~ってした歌でしょ?
ああいうのが果たして流行ってるか流行ってないかってのは分かんないわね。
あんまり影響力ないんじゃないかって。
ピンクレディーが売れたとなれば世の中ピンクレディーわ~っと一色になったような気が私もすんのね。
でも決して『わかれうた』で世の中一色になったとは思えないしね(笑)

どっかよっぽどの趣味の人が何万枚も1人で買ったんじゃないかって」

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曲ごとに歌声が違うのはなぜ?

南がアルバム『愛していると云ってくれ』の中で気に入ってる曲は、『ミルク32』

『ミルク32』(レコチョク試聴あり)

この曲の歌声が、南の心を惹きつけたらしい。

曲ごとに歌声が違うのは意識してやっているのだろうか?

みゆき「技術的なアレはないんでね」

南「でも意識して技術的にはやらないですよ、あんまり」

みゆき「ないよね、もともとそういうのね。
例えば3回撮ろうとするときに、それをダブらせるから3回とも同じ感じで歌ってくださいって言われても困るのよね」

南「これ(『ミルク32』)は好き、個人的に。
これ買うわ」

みゆき「いやあよかったよかった。
帰りにうどん食って帰れる(笑)」

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片岡義男と安田南の中島みゆきの楽しみ方

片岡義男は、フォーク集の楽譜を探し、最近は中島みゆきの曲をピアノで弾いたり、口ずさんだり密かに楽しんでいるようだ。

一方、安田南の方は、『わかれうた』と最初に出会ったのは楽譜からだった。

「週刊平凡」のような雑誌の後ろらへんに『わかれうた』の譜面を見つけ、それをハミングで歌ってみたのが最初だった。

それから後に、本家の『わかれうた』を耳にして「なるほどお」と感銘を受けたという。

歌はナマモノ

『わかれうた』が大ヒットしてからまだ1年も経たないというのに、すでにこの曲は世間から忘れられ始めていると中島みゆきは語る。

曲が出来あがってから、リリースされヒットするまでには時間がだいぶ空いている。

そういう意味ですでに過去の曲となってしまっているというのだ。

みゆき「ステージで歌うときってのは、必ずしもレコード通りとはないのね、もう。
レコード通り歌うだろうなって思って来てもらうと、あたしは今その通りに歌ってるとは限らないワケね。
ぜんぜん違う感じの『わかれうた』になっちゃったりするのね」

つづいての曲は、『時代』『アザミ嬢のララバイ』

『時代』(レコチョク試聴あり)

『アザミ嬢のララバイ』(レコチョク試聴あり)

みゆき「むかしの曲ですねぇフフフ」

この放送当時からわずか3年ほど前の曲なのだが、中島みゆきにとってはすでに昔なのだ。

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中島みゆきの実物とイメージの差

片岡「逞しいね」

片岡が言っているのは中島みゆきの体の線のことではない。

歌を聴いたイメージを言っている。

片岡は、歌を聴いて思い描いていた中島みゆきの体はもっと太いものだと、そんな先入観があった。

だが、目の当たりにした実際の中島みゆきは違った。

これには南も同感。

南「ジャケットに映ってる感じのイメージね。
幻想的な美少女って感じがすんの私は」

みゆき「極力ぼかしてもらってるから写真は(笑)」

南「私がよく子どもの頃、父親に、『僕のイメージしてたのとぜんぜん違う娘になった』ってよく言われたんだけど(笑)。
ウチの父親がイメージしてたのは、どうやらあなた(中島みゆき)みたいなのよ、どうも」

みゆき「いま見栄張っていいカッコしてるから(笑)
1時間も話せばボロが出てくる」

南「華奢でね、ガラス細工風なんだけども、精神的にもすっとこどっこい風でさ、意外とすごい傷つきやすくてね、だから一生懸命傷つく前に、ものすごい防波堤を築いてね、おもしろおかしくアホみたいなことワザと言ってたりするんじゃないかって」

南なりに中島みゆきを分析する。

中島みゆきの祖先

話題は中島みゆきの故郷である北海道へと移る。

実は南は中島みゆきと同じ札幌出身者なのだそう。

南「最近は北海道出身者の人多くなってきた?」

中島みゆきは心当たりのある北海道出身の有名人を挙げていく。

関根惠子(高橋惠子)。
木之内みどり。
坂口良子。
大橋純子。
北島三郎。
こまどり姉妹。

けっこう芸能通である。

このラインナップに中島みゆきの名が加わったことは、南には同郷の身として誇りだという。

南「北海道の人ってわりとセコセコしてないと思わない?」

みゆき「あんまり歴史がないじゃない?
100年くらいでしょ?
下手なことやるとご近所がひそひそってのは、あんまりないみたいな気がするね」

歴史のある土地だと、何十代も受け継がれてきた土地を守るために村八分というものが自ずと生じてくるが、歴史の浅い北海道ではそれがないという。

南「おたく(中島みゆき)の先祖は屯田兵とか?」

みゆき「ウチはあれですよ、本州あたりから食い扶持を減らすためにとか次男三男が(北海道へ)流れていったでしょ、その末裔ですよ、ウチは」

中島みゆきの作曲エピソード

南「あなたが曲を書いてて違う人が歌ってるってのはみんな知ってると思うんだけど、それをかけてみたいと思います」

次に流れた曲は、研ナオコ『あばよ』研ナオコ『かもめはかもめ』

研ナオコ『あばよ』(レコチョク試聴あり)

研ナオコ『かもめはかもめ』(レコチョク試聴あり)

『あばよ』は中島みゆきが初めて他のアーティストに作った曲だ。

そして、加藤登紀子『この空を飛べたら』桜田淳子『追いかけてヨコハマ』

加藤登紀子『この空を飛べたら』(レコチョク試聴あり)

桜田淳子『追いかけてヨコハマ』(レコチョク試聴あり)

片岡は、中島みゆきがこのような曲を生み出すときの思考回路が気になるようだ。

片岡「例えば今までにかかった歌の中で、この歌はこういう風にしてこんなきっかけでこんな順序で作ったんだっていうのある?」

みゆき「ないですねぇ。
右から左へ忘れてますね(笑)」

片岡「無理に歌を作ったとかない?」

みゆき「作らなければならないときもあったけど、結局できなかったから(笑)」

片岡は小説家という畑は違えど同じクリエイティブな仕事をしている身としてこれに共感する。

南「LPのタイトルなんかは?」

みゆき「自分でつけてる」

南「歌の題名も自分でしょ?」

みゆき「うん」

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中島みゆきの行く店

南「『店の名はライフ』ってのは本当にある店?」

みゆき「うん、あるの」

アルバム『あ・り・が・と・う』に収録されている『店の名はライフ』は、中島みゆきがデビュー前によく通っていた北海道の店がモデルになっている。

『店の名はライフ』(レコチョク試聴あり)

お店関連で南は中島みゆきの著書『魔女の辞典』に電話番号といっしょに書かれてある札幌のスナック「あんただぁれ」を紹介する。

『魔女の辞典』には、このように書かれてある。

「すべての自称芸能人を自信喪失させて引退に導くために開設されたプロを凌ぐアマチュアダンサーズによる初心者不向き舞踊教室札幌分校お酒付き。
電話番号は011-×××-××××」

調べたところ、松山千春和田アキ子も通う有名なお店らしい(40周年記念のパーティーが2012年に行われているので、現在も営業している?)

南「これはよく行く店?」

みゆき「私ほとんどスナックとか行かないんだけどね、あんだれ(「あんただぁれ」の略称)とかは知ってる友達とかそこにいるから、たまに行きますけどね」

南「わりとみゆきさんって、行く店とか決まってそうな感じじゃない?」

片岡「そうね。
いつか僕、雑誌で写真見たことあるけど、お酒飲めるお店でどっかり『さあ今夜は飲むぞ』って風に写真に写ってたけど」

みゆき「どこだろ?
だいたい取材で行ってる場所で写ってるんじゃないですかね」

南「酒場で撮るってのは合うんだと思う。
知らないお店でも「どっかり」と写るんじゃない?(笑)」

雑誌で見る骨太な印象は、やはり目の前にいる中島みゆきとは違うように片岡には感じるようだ。

片岡「実際は美少女だもんな」

みゆき「うわあ」

南「うん。
美少女な面とね、シニック(皮肉屋)な面と、それにとっても優しくてさ、傷つきやすくってさ、カワイイ小鳥みたいなさ」

みゆき「そうよ(笑)」

南「そのくせ憎たらしいこと言う。
傷つけられる前に一手二手とやるとこあるでしょ?(笑)」

片岡「うん、かわいらしいよ」

べた褒めされた中島みゆきは、浮かれすぎて、

みゆき「もっと褒めてぇ」

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曲を作るのは遅い

片岡「不思議なキャラクターだよね」

みゆき「そうかしら?
わりとオーソドックスだと思うんだけどね、ちょっとトロいけど」

南「トロくないよ」

片岡「頭いいよ」

南「トロいと本当に思ってんなら、魅力になるトロさというのはあるかもしれない。
それを本人は知ってって言ってるのね(笑)」

みゆき「いやあ!(笑)」

南「新しいレコードとか夏とか出すんじゃない?」

みゆき「夏は出さない。
4月出したら当分ない。
私ほんと曲作んの遅いし、なんだらかんだら時間かかるトロい人だからね」

南「でも早いからいいってことないじゃない?」

みゆき「早くてよければそれに越したことないんだけど、悪くて遅いんだからアハハ!」

片岡「若い女の子のシンガーソングライターのLPって買いたくなるよ。
ジャケットは美しいしさ、帯の宣伝文句が甘くてさ」

みゆき「ウチの場合は決してジャケットの帯には美しいコトバは書いてないんですよね」

『あ・り・が・と・う』『みんな去ってしまった』のジャケットについて

話は、中島みゆきのアルバムジャケットに及ぶ。

南「長い髪の毛してさ、白いガーゼのお洋服着てさ、籐椅子みたいなのに足の爪切ってるみたいな(笑)」

南が言っているのは、1977年の3rdアルバム『あ・り・が・と・う』のジャケット写真のことであろう。

どういう状況でこの写真は撮られたのだろうか?

みゆき「あれ、近くに犬がいたのよ。
犬がいてね、靴を取りに来るの。
『靴持ってくなっちゅうの』って下向いたらバシャ(と撮られたの)」

そして、2ndアルバム『みんな去ってしまった』のジャケットについては、

みゆき「写真撮ってたの池のほとりで。
『じゃ、そろそろ帰ろうか』っていって歩き出したら松の根っこにつまづいて転びかけたの。
その写真」

2ndアルバムから中島みゆきを撮り続けてきたのはタムジンこと田村仁である。

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